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狐の娘  作者: トーコ
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プロローグ

「日本霊異記」


狐を妻として子を生ましむる縁 第二

昔、欽明天皇の頃、三野(美濃)国、大野郡の人が妻となるべき女を求めて馬を進めていた。

その時、広野の中で夫となるべき男を求めている美しい女に出会い、これを妻とした。

女は一人の男の子を生んだ。

十二月十五日に生まれたその家の犬の子は、いつもこの婦人に敵意をみせ、歯をむいて吠えかかった。

婦人が用事で碓屋に入ったとき、この犬の子は婦人にかみつこうとして追いかけて吠えかかった。

婦人は驚き恐れて本性を現し、野干(狐)となって垣の上に登っていた。

家長はこれを見て、『汝との間に子があるから吾は汝を忘れない。常に来て相寝よ。』と言った。

故に、夫の言葉に従いやって来ては寝た。それ故、キツネとする。

また、生まれた子の名をキツネと名付け、その子の姓を狐直と負わせた。三野の国、狐直の根本がこれである。



立命館アートリサーチセンター 「日本霊異記」の項より引用

〈http://www.arc.ritsumei.ac.jp/artwiki/index.php/%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%9C%8A%E7%95%B0%E8%A8%98%E3%80%8D〉(アクセス2011.2.9)

 どくん。

 さっきから心臓が激しく脈打っている。口から吐き出してしまいそうだ。

 遠くから地鳴りのような低い音が聞こえてくる。耳を澄ますと、それは大勢な人々の怒号が混ざった音にも聞こえるし、飢えた獣の群れの唸り声のようにも聞こえた。

 はるか前方、暗闇の中で赤い光がチラつくのが見える。そして、その光はうねりながら地鳴りのような音と共にどんどん大きくなっていく。

 きりは、逃げなきゃと思うのに足がすくんで動かない。焦りばかりが募り、指先は冷え、のどはぎゅっとしぼられたようになって、声が出せなかった。

 はやく。はやく。逃げなきゃ。みんなに伝えなきゃ。じゃないと手遅れになる……。

 手遅れ?なにが?

 はっとしてそう思った時、キリはいつの間にか目前にまで迫った、赤い光に全身を飲み込まれた。


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