いつかはきっと。だけれど今はまだ⋯
茹だるような暑さを感じながら空を見上げる。
青く広がるそれを恨めしそうに睨みつけた。
かといって何とかなるわけでもなく、視線を落として力なく地面を見つめる。
蝉の鳴き声を聞きながら通学路を歩く。
汗で白いシャツが肌色に染まる頃、ようやく校門が見えてきた。
ふいに聴こえる、自分を呼ぶ心地よい声。
振り返ると、照りつける太陽以上に眩しい笑顔があった。
小さく手をあげて挨拶を交わし、他愛もない会話をしながら昇降口を目指す。
屋内の涼しさを感じながら靴を履き替え、手を振り合ってそれぞれの教室へ向かった。
窓から照りつける日光が部屋を焼く。
唯一の救いは、時折吹き抜ける熱風だけだ。
眠気を誘う魔法でも使っているのだろうか。
今日もまた、教師は平坦な声で話す。
まるで右から左へと聞いた内容が抜けていくような錯覚に陥る。
一刻も早く授業が終わることを願いながら、窓の外へ視線を向けた。
外からは聞き慣れた通る声。
彼女は眩しい笑顔で跳ねるようにハンドボールをしている。
彼女の姿に釘付けになり、眠気を誘う声は遠のいていった。
心地よい風が通り、陽の光を遮る中庭に二人。
彼女は彩りの良いお弁当を広げている。
方や僕はというと、購買で買ってきた茶色いパン。
彼女はそれを一瞥すると、箸で卵焼きをつまみ、僕の顔の前へ持ってくる。
思わず頬を緩めながら、大きく口を開けた。
彼女はイタズラが成功したような顔をしながら、それを自分の口へ運んだ。
ほんの少し口をへの字にして彼女を見る。
彼女は声をあげて笑いながらも、どこかばつが悪そうな顔をしていた。
あらためて箸で卵焼きをつまみ、彼女は僕の口へ放り込んだ。
それはほんのり甘い卵焼きだった。
ようやく授業が終わり、足取り軽く昇降口へと駆けていく。
彼女は靴箱に背中を預けながらスマホを弄っている。
おもむろに近づいていくと、彼女は顔をあげた。
いつもの笑顔だ。
肩を叩かれながら靴を履き替え、扉をくぐる。
優しい太陽の光を浴びながら、肩を並べて他愛もない会話を交わし歩いていく。
気付けば彼女の家の前にいた。
彼女はそっと手を上げ、僕もそれにならう。
彼女が扉の奥へ消えていくのを見届け、僕はゆっくりと歩き出した。
いつかはきっと。
だけれど今はまだ――




