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第二十五話 「感謝の気持ち」を強要する引退上司を、労働の対価と贈与の定義でフリーズさせる男
すみません、その寄せ書き、書けません。
薄情だ? ええ、そうかもしれませんね。
ですが、私は彼に対して「感謝」という感情を抱いていないので、嘘を書くわけにはいかないのです。
社会人としてのマナー?
なるほど。 思ってもいない美辞麗句を並べて紙を汚すことが、
あなたの定義する「マナー」なのですか。
私にとっては、それこそが本人に対する不誠実な行為に思えますが。
お世話になっただろう?
お言葉ですが、彼とは業務上のルーチンでし関わりはなく、個人的な「恩」が発生する余地はありません。
みんな書いてる?
ええ、見ればわかります。
AIでも生成できそうな無難な言葉の羅列ですね。
あ、そんなに興奮すると血圧が上がりますよ。
最後の日くらい、穏やかに過ごされたらどうですか?
では、私は定時ですので。
なお、寄せ書きには「お疲れ様でした(一分単位の残業代は未払いです)」とだけ書いた模様。




