レアアース問題、別解?
・全てを理解するためには、まずレアアースの市場規模を知らねばならない
ざっくりとですが、多い推定で約40億ドル規模――日本円にして約6000億円といいます。
比較の為に上げさせてもらうと車産業が3.5~4兆ドル、半導体が8000億ドル、IP産業が4000億ドルと――
重要度の割に、極端なほど小さい産業です
しかし、この小ささこそが、全ての要因でもあります。
・汚い資源
汚い資源――環境や労働者への被害を無視した分、相場よりも格安な資源だからといって――
それだけで市場の席巻は不可能です
なぜなら普通は、単独での全供給が叶わないから。
いくら汚い石油が安いからといって、それだけで世界の需要に応えきれません。
なので綺麗な石油と同時に市場へ供給されますし、独占も不可能となります。
・レアアースは需要量が極端に少ない
もちろん製品によってバラつきはありますが、一製品あたり重量比にして0.1%前後、特別に多い製品でも1%ぐらいしかありません。
これは価格へも正比例に近く、仮に10倍の調達価格になろうとも、1%ぐらいの値上げで済むか、製品によっては誤差にもなりません。
そして――
一国の生産量で、世界供給が賄える理由でもあります
・いかにして中国は、他国の生産会社を潰したのか?
これは汚いレアアースであること――環境や労働者保護のコストを踏み倒し、その価格差で勝利したのだといわれてますが――
それだけでは間違えた理解となります
もちろん原価差を背景にはしましたが、それよりプレダトリー・プライシングでの成功が大きいです。
つまり、日本語でいうところの略奪的価格設定――他業者が潰れるまで赤字覚悟で安売りをし続けました。
ようするに他国の採掘施設やプラントでは、逆ザヤとなるまで値下げです。
もちろん、まだ立証はされてませんが多くの研究で、結構な赤字だったと推測されてます。
・国家による補助金での産業保護は、WTOのSCM協定で禁止スよね
確かに国家が補助金で支える、それも略奪的価格設定をなんて、グレーを通り越して真っ黒です。
しかし、そこで中国は――
大赤字でもレアアース関連業者が倒産しない
という摩訶不思議な決算方法を編み出しました。
おそらく融資した国策銀行が、借金の催促をしないとかで成立でしょうが――
西側が全く想定しておらず、それでいて立証も不可能だった
のです。
そして西側の民間企業vs中国という戦いの結果、ほぼ中国だけが独占の歪なレアアース市場となりました。
・しかし、これは脱中国の契機にも
調子に乗った中国は、レアアースで富を得るだけでなく、それを――
政治的に便利な棒として振り回しだしました
おおよそ2010年のことです。
しかし、それで世界は思い知らされました。
「中国は、市場経済のルールに従う気はないんだな」と
それまでは懐柔して西側へ取り込む方針だったのが、トランプ大統領の一期から明確に変わりました。
これは民主党大統領のバイデン政権でも継承されましたから――
実のところアメリカの長期戦略だったりします
・そして二度目のレアアース規制
正直、私などは――
「さすがに、これはどうにもならん。あと数年ほどで変わったのに」
と思っていました(今回、勉強した切っ掛けでもあります)
しかし――
G7は予想の遥か上の対策を!
……もうアングロサクソン怖すぎ。政治が強すぎて勝てる気しません。
トランプが問題にもしてなかったのだって、いまなら分かります。
きっと中国が『レアアース棒』を再び振り回すのを、虎視眈々と待っていたんです。
・ここからはソースが薄い予測の話
おそらくG7は『汚いレアアース』を使用した製品にペナルティ課金をします。
まず第一義として、これなら実質価格が――
『綺麗なレアアース』 ≦ 『汚いレアアース』+ペナルティ
となり、価格勝負を回避可能に。
また環境問題や人権問題が建前となり――
脱中国に疑問的なリベラル層も取り込めます
彼らにとって環境と人権は、命より重いですからね。
もう大声で反対するのは、いわゆる親中派だけとなります。
さらに『汚いレアアース』使用製品にペナルティということは――
中国の主要輸出品目の全てがペナルティ対象となります
具体的にはモーター、ソーラ、蓄電池を使うもの全てです。
しかし、これは生産国差別ではなく、生産方法への非難ですから――
国際法上も、設計次第で十分に正当化可能、まったく問題がありません
・これの回避方法はない
なぜなら補助金と違い、やったやらないの水掛け論が通りません。
反論したとしても――
じゃあ、採掘現場や精製工場の視察させてくれるよね?
で終わりです。
そして西側にしてみれば、実は『綺麗なレアアース』だったとしても、なんの問題もありません。
それなら西側のレアアース産業は、中国産と同じ土俵で戦えるからです。
・そして小さな産業であることも裏返る
レアアース全体が約40億ドル規模と申し上げましたが、これは最終的な流通価格の話。
生産コストは、この半分くらいといわれてますし――
環境や労働者に配慮しても、5倍増程度で済むといいます。
つまり、すべてを『綺麗なレアアース』で賄おうとし――
さらにG7+αの国々、ここでは10国として頭割りしたら――
40 × 1/2 × 5 × 1/10 = 10
一国あたり10億ドルで済む話となります。
人質にとられた産業の安全保障料としたら微々たるものですし、各メーカーへ転嫁しても、レアアース代が2.5倍となるだけ。
つまり――
中国に独占できた理由が、そのまま覆しやすい理由となるのです
・しかし、中国は死ぬ
いまですら輸出は採算ぎりぎりと噂されているのに、ここへ『汚いレアアース』ペナルティを課せられたら――
下手をしなくても逆ザヤです!
輸出の薄い儲けで辛うじて自転車操業しているのに、これからは漕げば漕ぐほど後ろへ!
もう中国の若者でなくても、誰もが地べたへ寝転がって何もしなくなるでしょう。
・だけど、もう謝っても遅い
2010年の一件で懲りなかったどころか、非難されにくくなるよう工夫までしてしまいました。
だからこそG7も、いきなり対話を打ち切って行動へ移すことに。
前例から考えるに、普通なら中国を交えての対話フェイズがあってしかるべき。
しかし、それが飛ばされたあたり、もう西側はキレかけている証拠でしょう。
・中国の取るべき道
G7主導で中国産レアアースの規制が始まる前に、在庫のレアアースを売りつくすというか、世界への供給を止めない。
まず、これは少しでも――
レアアースにかけた投資を回収する為
なんといっても1980年あたりに開始し、2000年あたりまで略奪的価格設定を続け、やっとシェアを独占です。
まだ投下資金の回収が終わってないまであります。
そして――
この後のムーブは、西側を怒らしていると厳しい
から。
……ヤケになって止める可能性も?
そしたら亡国の危機といわざるを得ません、中国の。
・とにかく『汚いレアアース』ペナルティが致命的
まずレアアースを掘ったところで、使える用途がなくなります。
そもそも量が要る資源でもなく、自国産を使ったらペナルティ――西側への輸出には使えないんですから。
では、西側へ輸出用に、西側産の『綺麗なレアアース』を融通してもらう?
……それはそれで面白いと思いますが、まあ通らないでしょう。
それに主要輸出品へ一年でも『汚いレアアース』ペナルティを課せられたら――
比喩でなく外需が死にます
つまり、即座に『汚いレアアース』ペナルティを回避せねばなりません。
・止めてしまえばいい
G7から通達あった時点で、レアアースの採掘&精製を止めてしまえばいいんです。
これだけが唯一の即座or短期にペナルティを撤廃な手でしょう。
相手の主張を受け入れ、問題行動を止める。再開するとしても、今度はルールを順守。
さすがに西側も、これは蹴れないはずです。
しかし、その直前にレアアースを売り渋って、世界中の工場を止めてたら?
……おそらくG7も、簡単には許してくれないでしょう。
〇まとめ
・かなりの大ピンチだよ、中国が
・しかし、レアアースが止まる可能性はゼロじゃないよ
・なので西側も、まあまあ困る話だよ
・でも、わりと早くに『綺麗なレアアース』が流通しだすよ
・だけど需要量を満たすのには、中国産なしだと1~2年かかるよ
・でも、中国側に交渉の余地は、1年も残されてないよ
・踏まえると足りなくなるのは最悪、長くて1年。備蓄も考えたら数か月だよ




