バスの中の穏やかな一時
約1週間ぶりの更新です。
バスは順調に目的地である【ノースフィア】へと向かって走っていた。
ニューレストからは高速道路を使っても三時間はかかる道のりだが、車内は穏やかな雰囲気に包まれている。
優斗はリリアを膝の上に乗せ、窓の外に流れる景色を眺めていた。
広大なレストラント連邦国の豊かな自然が、優斗の目に飛び込んでくる。
一面に広がる緑の平原に点在する小さな集落、そして遠くに見える山々。
日の国の窮屈な風景とは全く違う、開放感あふれる景色は、優斗にとって全てが新しかった。
「にーさま、見てくださいなのです! お花がいっぱいなのです!」
リリアが、優斗の腕の中で指を差した。
現在走っているエリアの道の脇には、色とりどりの小さな花々が咲き誇っている。
優斗は、リリアの指差す方向を目で追いながら、その小さな手を優しく包み込んだ。
「本当だ。きれいな花がいっぱい咲いてるな」
「えへへ。にーさまの手はあったかいのです。お花みたいに優しいのです」
リリアは、優斗の身体にに自分の頭を擦り付けた。
その無邪気な仕草に、優斗の口元には自然と笑みがこぼれる。
優斗は、リリアの柔らかな髪を撫でた。
「リリアも、お花みたいに可愛いよ」
「えへへ♪ にーさまもかっこいいのです♪」
優斗の言葉に、リリアは嬉しそうに身をよじった。
二人の間に流れる甘い空気は、バスの座席一つ分だけでは収まらず、周囲にいる生徒たちにもじんわりと広がっていく。
彩也香とアリスは、優斗とリリアのいちゃつきぶりに温かい眼差しを向けていた。
「いやぁ、兄さんはすっかりリリアちゃんにデレデレだね」
彩也香が、くすくす笑いながらアリスに囁いた。
「ええ。優斗くんが、あんな風に心から安らいでいる姿を見られるのは、本当に嬉しいことだわ」
アリスも彩也香に同意しるように微笑みながら言った。
そして、優斗の心の変化に対して安心した雰囲気も漂わせた。
佑とクレア、サリアとリオーネ、そして美里も、優斗たちの様子を見て、ほんわかとした空気を共有していた。
「タスク兄様、ユートくんとリリアちゃん、見てるだけで癒されますね」
サリアが、佑の腕を軽く叩きながら興奮気味に言った。
「本当にそうね。リリアちゃん、あんなにユートくんに懐いてて可愛い」
クレアも穏やかに頷いた。
「リリアちゃん、飛び級なんだよねぇ。 可愛いのに頭がいいって……」
リオーネも、二人のやり取りに目を細めながらそう呟いていた。
「優斗も、リリアちゃんに甘えられてずいぶん表情が柔らかくなったよな。日の国にいた頃とは別人だ」
「そうですね。 弟もルミナちゃんとサラちゃんのおかげで落ち着いてますし」
佑が、しみじみと呟き、美里も優希を見ながらそう呟いた。
お互い、日の国での理不尽を経験したり見たりしているので、優斗や優希の心の変化に安堵していた。
広大なレストラント大陸を縦断するバスは、時折魔道技術を利用した清潔なトイレへと生徒たちが代わる代わる向かう姿が見られた。
長時間の移動でも、ここレストラント連邦国ではそうした配慮があるため、誰もが快適に過ごせる。
そうして三時間が経過し、バスはゆっくりとスピードを落とし始めた。
窓の外の景色が、少しずつ牧場らしい風景へと変わっていく。
「もうすぐノースフィア牧場公園に着きます。 皆さま、降りる準備をしてください」
目的地に近づき始めた際に、バスガイドの女性もアナウンスで生徒たちに降りる準備を促し始める。
やがて、バスは目的地のノースフィアの牧場公園の駐車場へと到着した。
バスのドアが開くと、爽やかな風と牧草の香りが車内へと流れ込んできた。
生徒たちは、一斉に立ち上がり新しい場所への期待に胸を躍らせて、順番にバスを降りていった。
優斗は、リリアと手を繋いだままバスを降りた。
目の前には広大な緑の牧場が広がり、遠くには牛や羊の姿が見える。
澄み切った空と広がる大地。
この平和な光景が、優斗の心をさらに満たしていくのを感じた。
「にーさま、牧場なのです! 牛さんがいるのです!」
リリアが、興奮してぴょんぴょん跳ねた。
その笑顔は太陽の光を浴びて、より一層輝いて見えた。
「ああ、すっごくのどかな牧場だよな」
優斗が思わずリリアの頭を撫でながら、そう呟くほどに。
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