校外学習当日の朝
更新が遅れてすみません……。
そして、校外学習当日。
エーデルリーベ学院の校庭には、観光バスが何台も連なっている。
朝の光が降り注ぐ中、生徒たちの活気に満ちた声が響き渡っていた。
高等部1年生の優斗と佑と優希がいるクラスが乗るバスは特に賑やかだった。
優斗は、バスの座席に身を落ち着かせた。
彼の隣には、早くもはしゃいでいるリリアが座っている。
「にーさま! もうすぐ出発なのです! 楽しみなのです!」
リリアは、優斗の腕に抱きつきながら、窓の外を指さした。
銀色のミディアムロングの髪が、リリアの感情に合わせるように揺れ動く。
優斗は、そんなリリアの頭を優しく撫でた。
「ああ、楽しみだな。 リリアが一緒にいると本当に安心するよ」
「えへへー♪ にーさまのほっぺにちゅーなのです♪」
優斗の言葉に、リリアは嬉しそうに目を細め、優斗の頬にちゅっとキスをした。
その無邪気なスキンシップに、優斗の頬はほんのり赤くなる。
二人の間に流れる穏やかな空気が、周囲にまで伝播していくようだった。
彼らの後ろの席には、彩也香とアリスが座っていた。
彩也香は、優斗とリリアのやり取りを見てにこやかに微笑んでいる。
「兄さん、リリアちゃんと本当に仲良しだね。見てて癒されるよ」
アリスもまた優しい姉のように微笑んだ。
「本当にそうだわ。リリアが優斗くんに向ける純粋な愛情表現は、見ているこちらまで心が温かくなるわね」
一方、通路を挟んだ右側の最前列の席には、佑が座っていた。
彼の隣には、元気いっぱいのクレアが、窓の外を眺めながら興奮気味に話している。
「タスク兄様、もうすぐ出発ですね。 私も楽しみですよ」
クレアは、佑の身体にもたれるようにしながらそう言った。
佑もそんなクレアの穏やかさに癒されているようだった。
「そうだな、クレア。 俺も楽しみだよ」
クレアの後ろの席には、サリアとリオーネが座っていた。
サリアは、佑とクレアの会話を優しく見守っている。
「タスクお兄ちゃん、クレアに付き合ってあげるなんて優しいね」
リオーネは、そんなサリアの言葉を聞いてクスッと笑った。
「クレアもタスクに対して真っすぐな愛情を向けてるね。 リリアちゃんといい勝負だよ」
そう言いながら見守るリオーネの後ろには、美里もおり、その隣にはサラが座っていた。
そして、美里達の反対側の席には、優希とルミナがいる。
サラとルミナは、中等部3年生だが優希を支えているという事で、特例で優斗のクラスのバスに乗れるのだ。
「緊張してるのかい?」
「う、うん……」
「辛かったら私に頼るといい。 何があっても私がキミを守るから」
ルミナのクールながら優しさが籠った言葉に、優希も安心する。
サラと美里は、その二人を見守っているようだった。
バスの車内は、優斗とリリア、優希とルミナ、佑とクレアの穏やかな交流に、和やかな雰囲気に包まれていた。
日の国から来たばかりの頃の優斗と佑と優希の緊張した面持ちは、そこにはもうない。
周囲の生徒たちも、優斗とリリアのいちゃつきぶりにクスッと笑ったり、温かい眼差しを向けたりと、皆がその光景に癒されているようだった。
「にーさま、眠いのですか?」
リリアが、優斗の肩に頭を乗せてうつむき加減で囁いた。
優斗は、リリアの柔らかな髪を撫でながら微笑んだ。
「いや、大丈夫だよ。リリアがいてくれるから、全然平気だ」
「よかったのです。 あ、バスが動くのです」
リリアの言うように、バスはゆっくりと動き出した。
(そういや、このバスって後ろにトイレがあるんだな……)
不意に優斗が後ろを見ると、この観光バスには一番後ろに魔道技術を利用した清潔なトイレが3つも設置されているのに気付いた。
おそらく長距離の移動や、予期せぬ渋滞対策も兼ねているのだろう。
(こういうのは、日の国では考えられなかったな……。 流石はレストラントってところか)
優斗が心の中で呟いたように、日の国では考えられないようなきめ細やかな配慮が、ここレストラント連邦国では当たり前のように存在していた。
バスの窓の外には、ニューレストの街並みが広がる。
彼らの校外学習が、これから素晴らしい一日となることを予感させる、爽やかな朝だった。
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