日記、感情の起伏
あかりの日記を読み終わってすぐ、強烈な吐き気に襲われた。
こころが綺麗なのはあたしじゃない。あかりの方なのに。
あかりはそれでも、あたしにやさしくしてくれた。
あかりのこころの振れ幅がリアルに伝わってきて怖かった。
もし、あたしがおなじ立場だったらどうだろう?
きっと今よりすごくわがままだったにちがいない。
だって、悲しすぎるから。
ともやのことだって、あかりがあきらめる必要なんてなかったのに。
結局ともやは、お通夜にもお葬式にも出てこなかった。
たくさんメールを送って、しつこく留守番電話にメッセージを残したけど、それ以降、連絡できなくなってしまった。
たぶん、ブロックされたか、アドレスを変えたかしたのだろう。
そこであたしはふと思った。
あかりの死を、ともやのせいにしていたのではないだろうか。
あかりが死んだのは、ともやのせいにしてしまえば、自分のこころが休まるからではないか。
なんとあさましい思考をしているのだ、あたしは。情けなくて、また涙が出てきた。
ねぇ、あかり。
生きていて楽しかった?
しあわせだった時があった?
痛みの中から、自分のことを好きになれることってあったのかな?
あたしはもっと、わがままが言えるようにがんばるよ。そうしないと、自分を好きになれないような気がするから。
これからは、あかりの分まで一生懸命生きるから。
お葬式からしばらくして、あかりのお母さんからたくさんの本をいただいた。あかりが生前、たのしく読んでいた本だった。ほとんどが海外とかのファンタジーで、あかりらしいなって、ほんのりとそう思えた。
その表紙を一冊ずつ指でなぞる。
あかりがどんな思いでファンタジーに没頭していたのか。
おそらくは、非日常を味わうためだとして、それでも彼女は本に触れて、生きる勇気をもらえたのかもしれない。
あたしも、あかりに負けずに本を読もう。
まだまだ読めない字もたくさんあるけど、妹のあかりに読み聞かせるのもわるくないよね?
だからもらった本は、あたしと妹のあかりの二人分の役に立つことになった。
これでいい。
そしてあたしは、本を読むのと並行して、たくさん勉強するようになった。
看護師になるためだ。そのための勉強ならわるくないよね?
ねぇ、あかり。あたし、頑張るからね。きっとまたどこか遠い未来であなたに会うために、あなたとまた親友になるために、あたし頑張るね。
そしてどこかですっとぼけて逃げ回っているともやを見つけたら、思いっきりデコピンしてやるんだ。
つづく