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やさしい時間、かなしい時間

「ねえ、もっとたくさん笑わせる方法を考えてみようよ!!」


 彼女――あかりはいつもにこにこしていた。


 常に誰かに笑っていて欲しくて、そのことばかり考えている。


 あかりの方が、ずっとずっと痛くてかなしくてつらいはずなのに。


 それなのにどうしてあなたはいつも、あたしにまでやさしくしてくれるのだろう?


 たとえば、おこりんぼうのお婆ちゃんを見つけたら笑わせる方法を考えるし、泣いている赤ちゃんを見つけたら、放っておけない。


 だから、だからね。


 あたしにとって、あなたは少し、まぶしすぎるんだ。


 あたしは、あかりをわすれない。


 はじめてできた親友。


 あんなにこころが綺麗な人には会ったことがなかった。


 まぶしすぎて、綺麗すぎて、そばにいるのがつらくても、それでも支えていたかった。


 自分がどれだけふざけた存在なのかをみすかされたくなかったから。


 だから、全部を知ったタイミングがおそすぎた。


 あかりちゃんが入院したって聞いた時に、もっとたくさんお見舞いに行くべきだったのに。


 あたしは、親友なのに。


 それでもあかりは、最後まであたしを親友だと言ってくれたんだ。


 ねぇ、あかり。あかりちゃん。


 あなたはいったい、どんな気持ちで日記を書いたの?


 あなたがはじめて好きになった男の子――ともやのことを、もっとたくさん聞きたかったよ。


 あなたの声で。


 そして思うんだ。


 どうしてもっと真剣に、あなたを支えていられなかったのかなって。


 どんなに頑張っても、あなたを見送ることがかなしくて仕方ないんだ。


 さようならは、正面から言わなくちゃ伝わらない。


 あたしは、自分がすごく嫌いになるけれど。


 それでもあかりちゃんは日記で言うの。


 誰かを嫌うな。


 なによりも、自分を嫌うなって。


 そんなにまっすぐなあなたが今もまぶしいよ。


 失ってから手を伸ばしても遅いのに。ともやみたいに。


 あたしは、自分を好きになるために、たくさんの時間が必要になった。


     つづく

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