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田中武彦65歳の青春

作者: Momo Yoshimi

米米 

下記のストーリーはインターネットに流布している話を中心にまとめられたフィクションである。各々の内容は事実であるとは限らない。




田中武彦は、65歳で年金受給が始まった。一戸建てに住んでいる独身の男である。今まで結婚したことはない。背は168センチメートルで、ガッチリした体型である。太ってはいないが細くもない。少し太ればポッチャリ体型になってしまう。顔は見るからにお付き合いは勘弁してくれと女性に言われるほどではないが、女性に好まれるタイプではまったくない。なにしろ彼女いない歴65年である。東証一部上場の一流企業に勤めていたし、年収も40歳の時800万はあった。どこから見ても結婚不可能と烙印を押されるほどでもなかった。


一番の問題は母親だった。しっかりものの母親は、息子の嫁には、このような人と結ばれてほしいと揺るぎない信念のある人であった。礼儀正しく、世間とのお付き合いにも長けている美人でなければいけないと思っている母であった。母親の思いは現実とかけ離れている。ほとんどの人が現代社会において、まず上記の条件には当てはまらない。自分が福山雅治のような男であれば可能性はあるかもしれない。しかし、田中武彦は福山雅治に絣もしない男である。同じくらいの男女数の会社に勤めているにも関わらず、プチ恋愛の気配にも至らなかった。


母は父親が消防署勤めでもあり、年金が充実していたし、健康そのものであった。長生きした。もし武彦が高齢になって、縁談話が持ち上がったとしても、母親の存在で、成就できる話も進まなかったに違いなかった。贅沢をしなければ、あと何十年か長生きして、人生を全うするのだろうと思っていた。




世の中に大変革が突然やって来た。

首都が東京から静岡になった。新天皇が京都から現れて富士山麓にて即位した。神聖政治が開始された。明治維新直前に伊藤博文と岩倉具視が画策して、正統の天皇を殺害して、長州藩にいた南朝系の天皇を据えた。ロスチャイルド家による日本支配計画が始まったとのことだった。その支配が終わって新しい時代になったのである。

まさに大変革だった。政治家は居なくなり、官僚も百人衆と呼ばれる新天皇に使える100名だけになった。2000年以上続いた律令制がなくなったのである。縄文時代の制度が復活した。地方自治体が新天皇を掲げて、新天皇が国民の上部に位置することになった。

日本の80%の会社が倒産してしまった。80%の会社をある宗教団体が支配していたとのことである。罰則金を取られて倒産させられたのである。今までさんざん悪さをされてきた国民の時代が終わった。日本人にはベーシックインカム24万円が毎月支給されるので、生活するのに困らない。<消費税以外の所得税などすべて廃止になってしまった。> 60歳以上の武彦には、今まで不法にロスチャイルドに搾取されてきた所得税など税金や支払ったローンが利子付きで戻ってきた。総額3億円が支給された。老人にこんなに支給されたらインフレで大変なことになると思っていたら、物価が現状で変わらないように制度設計されているので、心配はなかった。そのとおりになったのである。お金に困らない社会になったのである。




田中武彦は、貧困の心配がなくなった。十分食べていける。

健康の心配もない。メドベッドが出現したからだ。メドベッドに5分ほど横になると遺伝子情報をもとに体が活性化されて、不具合の臓器や血管が治った。実質30歳の体になるとの評判である。歯がない人も歯が整う。メドベッドは人々を健康そのものにした。<腕や足が欠損している人も元に戻っている。> 寿命も200歳になるという。人生100年というが、メドベッドで200歳くらいまで生きることが出来るようになったらしい。




田中武彦は、寿司やステーキなど美味しい食事を遠慮なく食べるようになった。貧困の心配もなく、健康の心配もなくなった。それに寿命も100年くらい伸びそうである。そうなってくると配偶者がいない自分は、そのままなんの心配もなく死んでいくだけなのか。このまま死んでしまうのは、たまらなく寂しかった。家に帰っても「お帰りなさい」と言ってくれる人もいない。このまま今のまま100年近くさらに生きられることになったのに、同じような毎日を送っていくしかないのか?

脳も体も元気が出てきたので、なにかボランティアを始めてみようか勉強を始めようと思った。とりあえず、今まで教わった歴史が全く違うことが分かったので、勉強してみることにした。

でも、この寂しさを埋めることはできる気がしなかった。





武彦は、自宅にある母が使っていた全身が映る鏡で自分を見てみた。一言で言うなら、女性はこんな男に抱かれたくないだろうという感想だった。抱かれる抱かれない以前に、同じ屋根の下に住むのも拒絶されるだろうと自己分析した。今焦って結婚相談所に登録して活動しても現状では無惨にお断りされるだけだと考えた。背も大きくないし、細身でもないし、美男子ではない。お金の問題は世間の男と同様に問題はなくなったが、男としての評価は今も昔もそれほど変わっていない。女性にモテナイ男と認識していた。

男の婚活ものをYoutubeで見て研究して、どう云う男がもてるかの書籍を何冊か購入して、熟読してみた。武彦は、こんな自分でも成婚できる計画を立ててみようとした。少しでもよく見える男になるにはどうしたらよいかシンプルな計画を立てた。そのために体を筋肉質にして、散歩する。勉強をして顔つきを間延びしないように努力することにしてみた。細かい戦略は相談所のコンサルタントの指示どおりに動くことにした。


いきなり登山はキツイと思ったので、散歩に加えて、自宅近くの山でハイキングに週3回はいくことにした。空いている部屋があるので、筋トレマシンを購入して筋肉を鍛えるようにした。<筋肉を鍛えると万能ホルモンがでて、若返るそうである。> そして、歴史を勉強しながら、古語も学習し古文書も読めるように勉強し始めた。運動したり、ダイエットしたり、勉強することにより、顔つきがよくなるように努力してみた。

鏡を見てみると顔つきも体格も締まってきたような気がした。






いよいよ結婚相談所に入会した。入会拒否されるかもしれないと不安を抱えていたが、とりあえず入会できた。

「写真撮影時には爽やかな服装にしてください。」コンサルタントから言われた。

「(そのままの自分を出したほうがいいのではないですかと思いつつ)承知しました。」と武彦は答えた。

「写真は弊社と契約の写真館で撮影してください。約30%アップする顔の写真にしますので。」

「そのままじゃないと会った時にそこまでひどいとは思わなかったと言われませんか?」

「大丈夫です。2倍上乗せしたら、ダメだけど、約30%なら許容範囲です。お互い様ですよ。お見合いまでいかなかったらしょうがありませんから。」

「プロフィールは自分の希望ではないのですから。自分のアピールの場ですから。子供は男女一人ずつが希望とかはボツです。相手に警戒されないように。お見合い申請して、まず会ってあってもらえるかが第一ですからね。あってもそのくらいは上乗せするだろうなと思われる範囲で。」


釈然としないところもあるが、コンサルタントの助言に従うと決めていたので、心の混乱はなかった。とにかくプロに従おう。




プロフィールには、美しい景色や美味しい食事に共感出来る人としていた。

顔は目が2つ、耳が2つ、鼻がひとつ、口が一つあればよかったので、容姿の希望は武彦にはまったくなかった。ただ、口元が引き締まっている人でないと面と向かってお話する時に、気になって仕方ないので、それは心の中で不可にした。年齢はもはや200歳が寿命となったので、(メドベットのおかげで体は30歳代にはなれるので)100歳の女性でもよかった。子供も特に欲しいとは思わなかったので、その件に関しては無記入にした。

大変革前までは結婚は年収と年齢が重要で、ネックになっていたが、そのことが解消されたので、どのように生きていきたいのかということが重要になっている時代となっている。




30%マシのプロフィール写真もできたので、ネットに情報をアップロードしてみた。お見合いの申し込みをしてみようとパソコンに向かってみた。すると驚いたことに3件のお見合い申し込みがあった。50代の女性3名だった。女性慣れしていない武彦は、出来るだけ会ってみようとしていた。その中で引っかかってくれる人なら誰でもいいと思っていた。




お見合いが決まり、本日は午前と午後に一名ずつ会うことにした。翌日は一名にした。コンサルタントの指示に従い新しい背広、ネクタイ、そしてワイシャツを着込んで、武彦のお見合い大作戦が始まった。喫茶店でコーヒーを飲んで予約してあるレストランに行く予定にした。

「その場を盛り上げようとしないで自分が楽しめるようにすること。それに、あれこれ質問しないことですよ。あなたが面談するのではないのですからね。」コンサルタントからは念を押されたが、ネットや書籍で得た知識で頭でっかちになっている武彦には、確認だけだった。実践で試すだけだった。申し込まれてのお見合いなので、駄目で元々と思って臨んだ。相手ファーストにするように気をつけた。

半日一回のお見合いにしたが、一日一回にしてもよかったと武彦は思った。気疲れしてしまう。

今回の3回もお見合いできてありがたかった。ただ疲れて一度として楽しめなかったとしたら、一度退会して、自分を見つめ直して、自分磨きを始めて見ようとしていた。だからか、自分自身に正直になれた。相手への礼儀を念頭に置いて、プロジェクトが開始された。




食べログで選んだお店が良かったのか、美味しいですねと言い合いながら、美味しい食事を楽しめた。最初の顔合わせなので、特に突っ込んだ話はなかった。数十年前の婚活と違い年齢にとらわれないから、ゆっくりと進めるからかもしれない。武彦は、お金がかなり入ってきたので、抵抗なく奢ってあげられた。美味しいものは心を豊かにしてくれる。武彦は、これまで生きてこられてよかったと身にしみて感じた。女性と食事をともに出来るということがこんなにも嬉しいことだなんて。お金の続く限り、(お見合いしてくれる人がいれば)女性と食事を楽しめるだけでもいいじゃないか?そんな気持ちを味わえた2日間だった。


なんと3名の内、もう一度会いたいと言ってくれた人は2名もいた。武彦は喜んで、いい日本酒を地酒屋で購入して、ローストチキンを肴に一人でお祝いした。運良く、笑うと歯茎が見える女性がひとり居たが、辞退してくれた。


コンサルタントからは、他にも申し込みなさいますかと聞かれているが、まだふたりもお会いできる人がいるので、新たな申込みはしなかった。武彦は、ふたりとも口一つ、目は2つ、鼻は一つで、身なりもきちんとしていた。話し方も女性らしく可愛らしく感じた。自分にはもったいない人たちだと思っていた。


美樹さんは、男慣れしている印象があった。なんで武彦なんかと仮交際で会うことができているのだろうと思っていたが、武彦は、インターネットで評価の良い高額の料理を選んでいたので、食事目当てに武彦に会っているのだろうと3回目にお会いした時に感じた。武彦に

料理を奢ってもらえるのが目当てだと目星をつけた。それはそれでよいと武彦は思っていた。美人ではないが美人っぽい人と食事ができるなんて夢のようだったからだ。


紀子さんは、大人しくてすごく謙虚な印象の人だった。異性慣れしていない会話が心地よかった。歴史にも興味を持っているので、古い神社と古墳を見に行く約束をした。


美樹さんとは、フレンチを食べに行った後、お断りの連絡があった。こんなつまらない男とはもういいと思ったに違いない。喋り方とか美樹さんから多くを学ばせてもらった。紀子さんとの仮交際で、大変助けになった。感謝しか無かった。仮交際の断りの連絡後、コンサルタントにこんな男に何度も会っていただきありがとうございましたと伝えてくださいとさわやかにお伝えした。





紀子さんと武彦は、神社にお参りして、古墳や博物館を見た後、フレンチや日本料理を食べて、楽しい週末を一緒に過ごすことができた。


紀子さんのご両親も、武彦の両親もすでに他界していた。二人とも戸建てに一人で住んでいる<紀子さんはロシアンブルーという猫を飼っている。>

武彦は、結婚できなくてもいいから、こんな感じでお付き合いできたらありがたいですと自分の素直な気持ちを伝えた。結婚相談所で真剣交際中なのに、こんなこと言うのも変だなと思ったが、自分の偽りのない気持ちだった。

紀子さんが「私とは結婚はしたくないということですか?」と逆質問された。

武彦は「私なんかでもいいのですか?」とまたもや質問で返してしまった。

紀子さんは頷いてくれた。

武彦はこんなにうまく行っていいのかと頬をつねった。夢ではなかった。こんなに短期間で結婚相談所を幸せに退会できるとは。

コンサルタントからは、女性慣れしていない武彦さんが気に入ったとお聞きした。




2人の新婚生活は、2つの家で、行き来しながら、始まった。もし紀子さんが妊娠したら、武彦の家に住みながら、猫に会いに紀子さんの家に行くことにした。猫が嫉妬すると赤ちゃんを傷つけると以前母から聞いていたからだった。



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