8 悟
「なあ、弘斗、今日俺の地元来ねえ?」
「ん?なんで?」
「いや、弘斗欲しいバイクがあるって言ってただろ?」
「ああ、バイトして買おうかなって思ってる。」
「近所に俺がバイク買った店があるんだけどよ、お前が欲しがってたヤツをオークションで落としたって言ってたから、見に行かねーかと思ってよ。」
「マジで?あ、けど、まだ金ねーんだけど。」
「気に入って本当に買う気だったら、手付だけ払って取り置き出来るみたいだぞ?」
「マジか!どうしよっかな…。行ってみよっかな。」
「おう、だったら放課後付き合うぜ?」
「悪い、頼めるか?」
「俺から言ったんだから当たり前だろ?」
「ありがとな!」
弘斗の幼馴染二人との事があってから三ヶ月ほど過ぎた。
弘斗は表面上、もういつも通りになってる。
けど、なんか笑ってても目の奥が笑ってないっつーか、本当に笑ってるようには見えないんだよな。
そりゃそうか。
十年以上の付き合いの幼馴染とあんな別れ方すりゃな。
俺には友達っつー友達なんていなかったから、弘斗の気持ちはわかってやれねえけど。
俺は小さい頃から目つきが悪く乱暴だったから、友達なんていなかった。
中学の頃もケンカばっかりで、仲のいいヤツなんていなかった。
そんな俺に同じクラスになった弘斗は、俺を怖がることもなく平然と話しかけてきた。
俺が塩対応しても、諦める事は無かった。
何で俺に構うのかって聞いたら、「ただ悟と友達になりたいから」って返ってきた。
変わった奴だとしか思っていなかった。
けど、いつの間にかダチになってた。
弘斗のおかげでクラスの連中とも話すようになった。
感謝してるんだ、本当に。
俺の初めての本当のダチだからな。
「せんぱーーーいっ!!!」
「おうっ?またお前かよ?」
最近弘斗に付きまとうようになった女だ。
名前はなんて言ったかな?忘れた。
「はいっ!私です!お昼一緒に食べましょう!」
「あのなー、いい加減しつこいぞ?」
「だって、もう後悔したくないんです!」
「いや、だからって」
「好きな人を諦めるの、結構ツラいんですよ?」
「そんな軽々しく好きだとか言うなよ。」
「だって、言わなきゃ伝わらないんですよ?」
「そうかもだけど……。」
「弘斗先輩がその気になるまでアタックするって決めたんです!」
「うーん…。」
「弘斗先輩!とにかくお昼にしましょう!」
「一緒に食うのは確定なのかよ…。」
「はい!確定です!」
「いや、俺もいるんだが…。」
一応割り込んでみる。
「えー?お邪魔虫はどっか行ってくださいよー。」
「あ?誰がお邪魔虫だ?この野郎!」
「だってー、ホントの事じゃないですかー。」
「ふふっ、お前悟に向かってよくそんなこと言えるな?」
あれ?
「別に弘斗先輩と一緒に居られるなら、山下先輩なんて怖くないですよー。」
「あははははは!悟?言われてるぞ?」
弘斗、今…。
「いい度胸してるじゃねえか、お?」
「きゃー、弘斗先輩!助けて!怖い人がイジメるんです!」
「だが断る。自分の力で何とかしろよ?」
弘斗、気付いてるか?
お前、今、ちゃんと笑えてるぞ?
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