7 雪奈
ヒロくんにカズくんとの事がバレてから、私の周りは変わってしまった。
いつもの待ち合わせ場所に行ってもヒロくんはいない。
学校で話しかけようと近付くと、ヒロくんの周りにいる友達がやんわりと遮ってくる。
カズくんも同じみたいだ。
私の友達もどこかよそよそしくなった。
表立って何か言われるようなことはなかったけど、確実に今回の事は話が周っていると思う。
クラスの仲のいい子たちを遊びに誘っても何かしら理由を付けて断ってくる。
孤独だ。
カズくんも友達から避けられてるみたい。
ヒロくんは友達が多かったから…。
ヒロくんが何かしているとは思えないけど、周りが自然とそうなっているようだった。
私はどうしてもヒロくんと話したくて、夜にヒロくんの家に行ってみた。
おばさんが玄関まで出てきた。
「あ!あの!どうしてもヒロくんと話がしたいんです!」
「…雪奈ちゃん、悪いんだけど、それは出来ないの。」
「私!私本当にヒロくんの事が好きで」
「雪奈ちゃんの気持ちは雪奈ちゃんにしかわからないわ。それが本当の事だったとしても、弘斗が傷ついたのは変わらないの。」
「そ、それは、本当に悪いと思ってます!」
「それでね?私は弘斗の母親なの。あの子を傷つける人を会わせる訳にはいかないの。弘斗は謝って欲しくもないって言ってるの。」
「そんな…………。」
「おばさんから言えるのは、雪奈ちゃんはまだ若いんだから、この失敗を無駄にしないでこれから頑張って欲しい。今まで弘斗と仲良くしてくれてありがとうね?」
「あっ!待って下さい!…………やだ、やだよ…………。」
もう……ダメなんだ……。
それからカズくんと私は孤独感を忘れるようにお互いを求め合った。
私の家は両親の帰りが遅いとはいえ、今回お父さんもお母さんも今までにないくらい私を叱った。
誠実に私の両親に報告してくれたヒロくんを裏切ってなんてことをしたんだ、と。
だから、カズくんの家に入り浸る様になっていった。
「雪奈、雪奈!」
今日もカズくんと寂しさを埋めるための行為に夢中になる。
「好きだ!雪奈!」
カズくんは私にいつも好意を伝えてくれる。
好きだって言ってくれる。
でも……。
ああ、なんで今更気付いちゃったんだろう。
どうして、カズくんとだけ付き合う決心をしないで、ヒロくんとも付き合いたいなんて言ったのか。
「どうした?雪奈?体調でも悪いのか?」
「ううん、大丈夫だよ、カズくん。」
カズくんに告白された時、確かに嬉しかった。
嬉しかった……けど……。
ヒロくんに告白されたときは嬉し過ぎてはしゃいだ。
気持ちが舞い上がった。
地に足がついていないようなふわふわした感覚。
「雪奈!ずっと一緒だ!好きだ!雪奈!」
ヒロくんにキスされたときは幸せ過ぎて頭が真っ白になった。
どうしようもなくヒロくんが愛おしく感じた。
カズくんとエッチしても感じたことが無かった感覚。
気付かなきゃよかったのに。
「…………うん、私も好きだよ?カズくん。」
私が本当に好きだったのは……。
気付かなかったらこんなに苦しまなくて済んだのに。