3 不安
俺と雪奈が付き合い始めて一ヶ月、今日も一緒に弁当を食べている。
「はー、毎日毎日良く飽きないねー。」
話しかけてきたのは、同じクラスの山下悟。
コイツは何故かウマが合って、友達はまあまあいるが、一番仲がいいと言っていいと思う。
「飽きねーよ、羨ましいだろ?」
「バカ言ってんなよ、俺だって彼女居るわ。」
「けど、違う学校だろ?」
「そうだけど、それぐらいで丁度いいんだよ!」
「そうか?」
「そうだよ、そんな四六時中一緒に居たら疲れるだろーが。」
「疲れないよ?ね?ヒロくん!」
「ああ、まあ雪奈とは付き合いが長いからな。」
「そこは彼女なんだからって言ってよ!」
「あ、そうか。そう、彼女だからな!」
「…俺は何を見せられてるんだ…。ああもう、勝手にしろよバカップルが!」
「バカップルだって!ヒロくん!」
「いや、誉め言葉じゃないぞ?多分。」
「付き合いきれねーよ、俺は学食行ってくる!」
「あー、行っちゃったね?ヒロくん。」
「まあ、アイツの立場に立ったら居づらいかもな。」
「どうして?ヒロくんの友達だったら一緒に食べてもいいのに。」
「俺がアイツの立場だったら、邪魔したくねーって思うかな。」
「気にしなくてもいいのにねー。」
俺と雪奈は恋人としての関係を順調に続けていた。
それからまた数週間後のある日、悟から声を掛けられた。
「今から彼女と一緒に帰るのか?」
「ああ、そうだけど?」
「あー、今日夜時間あるか?」
「夜?何時くらい?」
「いや、弘斗に合わせる。バイクで家まで行くから。」
「何かあったのか?」
「まあ、その時に話すよ。それで?時間は?」
「ああ、7時位なら多分大丈夫。雪奈から電話はあるかもだけど。」
「まあ、いいや。じゃ7時位に家に行くわ。」
「大丈夫か?結構距離あるだろ?」
「ああ、大丈夫。もしダメそうなら連絡くれよ?」
「ああ、わかった。」
何だろう、なんかマジっぽかったけど…。
彼女と喧嘩でもしたんかな?
「お待たせ、ヒロくん!」
「おう、じゃ帰るか。」
「ねえ、ちょっと寄りたいところがあるんだけど、付き合ってくれる?」
「寄りたいところ?」
「うん。クラスの子が言ってたんだけどね?美味しいケーキを出す喫茶店があるんだって!何人か行っててみんなが絶賛してるの!」
「へえ、別にいいよ。あんまり遅くならないんだったら。」
「ケーキ食べてお茶するだけだよ?今日何か予定あるの?」
「いや、悟っているだろ?俺の友達の。」
「うん。」
「何か今日俺の家に来るって言うからさ。」
「そうなんだ、仲いいんだね。」
「ああ、何か相談事かな?」
「遊びに来るんじゃないの?」
「いや、わからんけど。」
「ふーん、じゃ遅くならないように早く行こうよ!」
そう言って喫茶店に向かった。
家に帰り、夕食を摂りしばらくすると家のインターホンが鳴った。
「よう、お疲れ。遠かっただろ?」
「いや、バイクの運転は好きだから苦にならねーよ。」
「そっか。まあ、上がれよ。」
「サンキュ。」
「じゃあ、飲み物持ってくから部屋で待っててくれよ。」
「りょーかい。」
何か表情が硬いな。やっぱ相談事かな?
飲み物をもって二階に上がる。
「ほい、コーヒーでいいか?」
「ああ、ありがとな。」
「で?話って?相談事か?」
「あー、いや、相談ってか…その、な。」
「どうしたんだよ?言いにくい事か?」
「……ああ。今でも正直話そうかどうか迷ってる。」
「何だよ?気になるじゃねーか。」
「……あのな?無理かもしれねーけど、落ち着いて聞けよ?」
「…ああ。」
「俺の住んでるところが結構離れてるのは知ってるよな?」
「ああ、電車で一時間近くかかるんだよな?」
「うん、で、この前の日曜日、彼女とデートしてたんだわ。」
「ああ。」
「俺の家の最寄り駅近くをブラブラしてたんだが……。」
「うん。」
「……弘斗の彼女を見たんだ。」
「え?」
日曜日っていうと、雪奈は確か女友達と出かけるって言ってたな。
「ああ、女友達と出かけるって言ってたから、それ見たんだろ?」
「……いや、一緒に居たのは女じゃなかった。」
「…………は?」
「…須藤と一緒だった。」
「…え?一臣と?」
「ああ。」
何で日曜日に一臣と雪奈が?
あ!もしかして俺の誕生日が来月だから、内緒でプレゼント選びとかしてたのか?
「あ、もしかしたら俺の誕生日が近いから」
「ラブホから腕組んで出てきたところを見た。」
は???????????????