表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

悪役令嬢、なりふり構わず生存ルートを模索する

 5日目。


 やれることはすべてやったわ。

 片っ端からデートに誘い、目の回るような忙しさだったけど……


「5日で5人とデートに行ったわ。

 未来は変わった?」 


「変わってない……ただ、婚約してる公爵令嬢が片っ端からデートに行くのは人の道を外れていやしないか?」


「人の道を気にして死ぬより、生存第一よ!」


「それはご立派なお考え方で」


「何よ」


 くくく、と笑うアスランの笑顔に不思議と嫌味は感じなかった。


「歯に衣着せぬアンタの物言いは嫌いじゃないってこと」


「何だか馬鹿にされてる気がするんだけど、まあいいわ。

 でも、好感度あがらなかったのね……デートに問題があるのかな?」


「服がダサいとか?」


 あら、私だってたまにはカチンとくるのよ。


「私は確かにドレスのことなんかわからないけど、私のメイドたちはみんな優秀よ、馬鹿にしないでよね!

 私のために早起きして一所懸命服を選んでくれるのよ」


「はは、確かにそうだ。

 アンタの服を笑うってことは、世話係を笑うってことだ」


 アスランは立ち上がり、頭を下げた。


 うわ……綺麗な姿勢の見事な礼だ。


 この人、実は高貴な人なの?

 

 だとしたら、なんでモブなんだろ。


「……すまなかった、公爵令嬢エリザベス。

 できれば、許してくれると嬉しい」


「あ、うん。

 今日のドレスだって薄淡い青色でとっても可愛いでしょ?

 ほらほらフリルもすごいのよ」


「人前でドレスを見せびらかすなよ、王子に勘違いされて死ぬのはごめんだぞ

 断頭台にあがるのは、アンタ一人で充分だろ」


「ちょ、ちょっと断頭台に上がるって決まったわけじゃないわよ、なんとかして見せるんだから」


 とは、言ったものの、私には断罪から逃れるすべなど持っていなかった。


 そもそも、断罪される理由は私がここに来る前から完成しているのだ。


 ちょっとやそっとでなんとかなるなんて思ってなかったけど。


「いやー、でも5人とデートしてちっともいい感じにならないのはどうしてだろ」


 さすがに私も疲れたのよね。

 人生で、一週間に5人とデートしたことなんてなかったもの。


「なあ、授業が終わったらオレがデートの練習をしてやろう。

 アンタに何の問題があるか、オレが直接確かめてやる」


「ねえ、アスラン。

 すっごく偉そうなところが気になるけど、いいわ。

 一緒に行ってあげる」


「そうだな、街で買い物はどうだ?

 今頃は、魔法で木々がライトアップされて綺麗なんだ。

 オレ好きなんだよね、光魔法」


 さっきまで冷めた目をしてたアスランだけど、急に目が輝きだした。

 アスラン、ただ単に綺麗なイルミネーションが見たいだけなんじゃないの?

 

 あ、でも私も、光魔法のイルミネーションとても気になるわね。

 せっかく異世界に来たんだし、楽しい思い出があってもいいかな?

 もし、断罪の運命から逃げられないなら、一日くらい思いっきり遊びたいし。


「いいわね、聖夜のパーティー用の衣装も買いたいし」


「そうだな、立派な死装束買わないとな」


 あの、ニヤニヤしながら言わないでよ。

 こっちは必死なんだからね。


「アンタね……誰かに見られたら一緒に断頭台にあがらなきゃいけないようなことしてあげましょうか?」


「はは、やめてくれ。

 オレは死にたくない」


「私だって死にたくないわよ!」


 6日目。


 教室に入ってくる私を見つけると、アスランが手を振ってきた。

 

 なんだか、笑顔がまぶしい。


 アスランって、一人で教室にいることが多くてどんな人かわからなかったけど、実はよくしゃべる。

 浅黒い顔はとても整っているくせに、普段はつっけんどんな態度を取るから、周りから距離を開けられてたみたい。


 ほら、笑顔で私に手を振ってくるから、周りがきょとんとしたような顔してるわよ。


「昨日さ、光魔法すごかっただろ?」


「そうね、綺麗だったわ」


 別にアスランが作ったわけじゃないのに、自慢してくるアスランはちょっと子どもっぽいところがある。

 挨拶する前に本題に入る感じ、私と光魔法の話をしたくてたまらなかったのかと思うと、ちょっとかわいく思えてきた。


「ねえ、私のデート……の練習、どこが悪かった?」


「服もオシャレだし、楽しく話が出来た。

 問題ないと思うけどな」


「そう……今日のドレスも淡い桃色で可愛いと思うんだけど、どう?」


「アンタんちのメイドさんはすごいよ、とっても可愛くみえるぞ」


「そういう時は可愛く見える、じゃなくて、可愛いよって言えばいいのよ。

 気が利かないわね」


「ははは、さすがに教室で王子の婚約者に可愛いって言う勇気はないよ」


 あ。

 もしかしたら、ホントは可愛いって言いたかったのに気を使ってくれたのかな。

 そうだとしたら……少し嬉しいかも。


「なあ、5人とは昨日みたいな感じでデートしたのか?

 あの感じでデートしたんだったら誰かしら落とせると思うけど」


 今までのデートと、アスランとのデートの練習を思い出してみる。

 ……あれ、もしかしたら私、前まではデートで笑えてなかったのかも。


「もしかしたら、笑えてなかったかも。

 今日は楽しかったからかな、明日までの命だから、精一杯今日を楽しもうと思ったの。

 デートして楽しかったって思ったの、今日だけだよ」


 アスランは神妙な顔をして腕を組んだ。


「アンタが死なない未来がどうすればやってくるのか、考えてみるよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ