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悪役令嬢は断頭台を回避したい

 1日目。

 エイルーク王国、王立魔導学院アスガルド。


 日ごろは魔術の鍛錬に努めている生徒たちも、今の時期はちょっとそわそわしているようだ。


 アスガルドのクリスマスパーティーは盛大な規模で行われる。


 特に今年卒業となる最上級生は、ダンスパーティーの話で持ち切りだ。


 想い人とともに踊ることが出来れば、その人と一生幸せな結婚生活を送ることが出来るらしい。


 そう、ヒロインは聖夜、王子様とダンスを踊り、皆に祝福されながら永遠の愛を誓いながら口づけを交わすのでしょう。


 そう、ヒロインならね。


 廊下を通る私に気づき、体をこわばらせている少女、子爵令嬢「リディア」。

 視線を下げて私の機嫌を損ねないよう、ビクビクしている彼女こそが、この世界のヒロインなのだろう。


 そして――


「何をやっている!」


 王子様は颯爽とやって来て、小動物のように丸まった「リディア」を愛おしそうに抱き、私を鋭い視線で見つめるのだ。


「ライアン王子。

 いいえ、私は何もやっていませんわ」


 私は震える口元を隠すように扇を手にし、ライアン王子へ身の潔白を主張する。

 

 けれど、王子はまったく私の言葉に耳を貸すことなく、リディアを愛でながら私への非難の言葉を口にするのだ。


「まったく、いつものことながら最低だな、キミは。

 私と少しでも話をしたものを敵視し、徹底的に追い詰める……

 エリザベス、キミは本当に蛇のような女だよ。

 君と婚約している私は、きっと将来キミに丸呑みされてしまうのだろうね」


 どうして、王子は私を傷つけることばかり言うのだろう。


 今だって、私は本当に何もしていないのに。


「……失礼します」


 悔しさに震える顔を扇で隠し、王子に背を向け歩き出した。。


「私、ライアン王子が飲み込まれたら助けます!」


 ああ、私を見た時には怖がる振りをしていたのね。

 私は体が震えているけど、あの子はちっとも震えてない。


「ははは、その時は頼むよ。

 聖夜にはちゃんと女を断頭台に送って見せるから……」


 周りの目も気にせず、ライアン王子とリディアは廊下での逢瀬を楽しんでいた。

 そして、あえて聞こえるように私に断頭台と言っているのだろう。


 足早にその場を去っている途中の私にすら聞こえるような大声で話さないで欲しいんだけど?


 『ライアン王子、あなたは私の婚約者でしょうが!』そう言えたらいいのだけど。


 そもそも政略結婚だから、ライアン王子は私のことを好きじゃない。

 

 それを知ってる私は、だからこそ強く出れないんだ。

 

 私は侯爵令嬢エリザベス、人呼んで氷血令嬢。


 リディアを徹底的にいじめ抜き、学園中の教師すら手中に収め、そのカリスマで取り巻きたちと集団いじめを決行してきた、筋金入りの悪役令嬢だったらしい。


『急に前世の記憶が戻ったので、これからは生まれ変わったいい子です』

 よろしくね!

 ってわけにもいかないみたいね。


 さて、どうしようかな。

 氷血令嬢エリザベスはこのままだと断頭台一直線。


 メリークリスマス、ザシュッって……


 正直私、あれだけは嫌よ……


 リディアは今のところ、王子が気に入ってるみたいだから……

 そうね、他のルートを目指せばいいのね! 


 私、多くは望まない。

 生存よ、生存ルートを探り当てるのよ。

 

 ということで、私は占いがよく当たるという留学生「アスラン」のもとにやって来た。

 同じクラスのアスランだけど、いわゆるモブなので私は一度も話をしたことがなかった。


「侯爵令息ディーンとの運命を占って欲しいんだけど」


 これが怪訝けげんな顔というやつね。

 びっくりしてるわ。

 あれ、このモブの留学生、言語は通じるわよね?

 もっとゆっくり話した方がいいのかな?


「アナタ二ワタシ、ウラナイシテホシイ」


「おい……オレは別に聞き取れなくてびっくりした顔をしてるわけじゃない。

 アンタ王子と婚約してるだろうが。

 教室で堂々と浮気の相談するなよ。

 オレは王子に殺されたくないぞ」


「それはそうなんだけど……もうすぐ婚約破棄されるのよ」


 あれ、また怪訝な顔ね。


「そりゃ大変だけど……本当だったとしたら、小声で話しなよ。

 周りがびっくりしてるぞ」


 確かににわかに注目の的になってしまったけど、そんな小さなことに構っていられないわ。


「どうすれば断罪ルートから逃げれるの?

 占ってよ。

 せっかくこの世界に入れたのに、すぐ死ぬなんて嫌」


「ルート?

 わけわかんねえことばっかり言ってるな……」


「いいから占ってよ」


「はいはい」


 手慣れた手つきでアスランはカードを切る。

 あれ、でも……カードをめくる時ですら、カードを見ていない。

 見なくてもわかるほど、タロットカードに慣れてるってこと?


 えっと、左から死神、死神、死神、死神、死神……


「すごいわ、死神のファイブカードね。

 ポーカーだと強いわね」


「ポーカー?

 アンタはたまによくわからん言葉を使うな」


「あれ?

 こっちにはないのかな?

 気にしないで続けて」


 こっちの世界に何が存在して、何が存在しないのか、微妙なラインがわからないのよね。


「アンタの前には5つの道、そのすべてでアンタは死ぬ。

 聖夜に断頭台ギロチンが呼んでるぜ」


「さすが悪役令嬢ね、絶望しかないわね」


 食い入るようにカードに見入っている私を、アスランは面白いものでも見るように苦笑した。


「妙に他人事だな。

 ちなみにあと一週間、12月24日までの命だ」


「どうすれば助かるのよ?」


「氷血令嬢エリザベス、この未来はアンタが招いた因果だ。

 ただ……たったひとつの行動から、世界は変わる。

 もし、アンタが助かりたいなら一週間あがいてみたらどうだ?」


「そうね、ヒーローとの好感度を高めてフラグを立てろってことね?

 わかったわ、目指せ生存ルート!」


 とりあえず、リディアが王子ルートを進んでる間に、誰でもいいから落として味方につけるわよ!


「ヒーロー?

 好感度?

 フラグ?

 生存ルート?

 アンタの言ってることさっぱりわからねえけど……」

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