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第8話 騎士団の日常訓練


「はあっ、ぁ……、はっ……ぁ」


 精魂共に削り果たして草の上に寝転がり、大空を見上げる。


 未だに脇腹の痛みは止まらないし、呼吸は乱れに乱れまくっているが、肌を撫でる風が気持ち良くて少しは元気になった気がする。


「大丈夫ですか、レイド殿下?」

「おま、これ……っ、ぜぇ、いつもっぅぇ、こんなに走ってるのか?」

「そうですね、今日は少ないくらいです」

「うぇぇぇ……!」


 絶望的な言葉に思わず嘔吐いてしまった。


 俺は今、第一騎士団の訓練の日課、初歩の初歩の20キロ山道疾走ランニングを終えた所だ。


 周囲には死んでるみたいに寝転がっている奴や実際に端の方で吐いてる奴もいた。


 あー、あれ見たら……ウオロロロロロ!!!








「さあ、次は素振りだ!!」


 第一騎士団の為だけに作られた演習場で、俺は騎士達と一緒に等間隔に並んで、剣を振っていた。


 この素振り用の剣はしかも普通の鉱石よりも比重が重たいデアメタルで作られているらしい。大体、デアメタルの比重は鉄の三倍だ。もう手が痛くて痛くて、腱鞘炎になってしまいそうだ。


 ちなみに他の騎士にも俺と同じ様にヒィヒィ言いながら剣を振っている奴もいる。


 流石に隊長クラスになると汗は流しているが、悲鳴はひとつも上げていなかった。


「っ、ァァ、腕がァ……!」


 一回剣を振るだけで、腕が変な音を立てる。筋繊維が千切れる音だ。くそっ、


 結局、その日はいつもより少なめの一万八千回までやり遂げた。


 その後も筋力トレーニング(300キロの重石を持ち上げる)や柔軟体操(自分の頭が自分の尻ら辺に行くまで無理矢理曲げられる)を行い、その日はそれで解散となった。


 騎士達の話を聞いているとあれでもだいぶ楽な部類の様だが、それでもみんな血反吐を吐くくらい疲れていた。


 実際俺も身体中が悲鳴をあげていて、自室に戻った頃には風呂にも入れないくらいボロボロでベッドに寝転がった。


「クソっ、身体が動かねえ……」

「レイド様!? だ、大丈夫ですか!?」


 他のメイドからレイドが帰って来たと聞いたウィンリーが、急いで来た。


 しかし、そのレイドが今までに無いほど疲弊していたのだ。


 気の弱いウィンリーは狼狽してしまう。


「大丈夫じゃない」

「ええっ!? そ、それじゃあすぐに司祭を呼んで……!」

「馬鹿待て、いらん」


 訓練をした後に回復魔法などを掛けてもらうと、せっかく苛めた筋肉がすっかり元通りになってしまう。


 今日の訓練を無駄にしない為には、この痛みに耐えて、筋肉を修復しなければいけない。


「わ、私に何か出来る事はありますか?」

「それじゃあ、飯、なるべく消化しやすいやつと、肉を沢山、頼む」

「分かりました! お任せください!」


 それから1時間ほどして、ウィンリーは俺の要望通りに沢山の料理を運んでくれた。


 しかし、残念ながら俺の腕は筋肉痛で一ミクロンも動かない。


「ウィンリー、食べさせてくれ」

「ええ!?」


 だってしょうがないじゃないか。


 俺の腕が動かないし、別にウィンリーに食べさせてもらいたいってわけじゃないからな!!


「あ、あーん」

「あーん」

「っ、ど、どうですか?」

「うん。めっちゃ美味しいよ」


 手料理だからって理由もあるが、あーんして食べさせて貰えるとさらに美味しかった。


 食べ終わると身体も怠くなって来たので、《洗浄クリーン》の魔法で身体を洗浄する。しかしこの魔法はあくまで表面の汚れを落とすだけであって、風呂に入った後のさっぱり感が無いので、やはり本当に風呂に入った方が気持ち良い。明日の朝にでも風呂に入ろう。


「ウィンリー、一緒に寝ないか?」

「ひえっ!? で、でも、レイド様はお疲れなのに……」


 やたらと狼狽えているが、なるほど。今日も致すと思ったのか。


「むっつりめ」

「〜〜ッ!」


 ウィンリーは顔を赤らめて、声にならない悲鳴を上げた。全く可愛い奴め。


「残念だが、本当に残念だが、今回はしないよ。と言うか、余裕が無い。添い寝してくれ。それで大分楽になるからさ」

「は、はい」


 ウィンリーはゆっくりとメイド服を脱ぐ。


 一緒に寝る時は裸で、と教えたのはつい先日の話だ。


 メイド服の下に隠された抜群のスタイルが顕になる。


 何度も言う様だが、ヘトヘトで致す状態にないのが本当に残念である。


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