曼珠沙華を飲み干して
真っ赤な床でしゃがみこみ、笑みを溢す。掌から零れ落ちた曼珠沙華。いくつもの花弁を散らし溶けていく。
飲んだ毒が火照った心を洗い流すように、ゆっくり、静かに。この身体を巡っている。
「もっと、もっと頂戴」
ぐちゃりと花を握り潰し口に頬張る。高鳴る鼓動がこの静寂を邪魔し、響いては私を責める。
「足りない、こんなんじゃ満たされないじゃない!」
本当は分かってる。この穴は何をしても埋まらないと。それでも、寂しいから、知らないフリをして埋めようと捥くの。苦くて甘い毒は心を蝕んでいく。
「君の所為だ。君が、私に近づくから。ドロドロに溶かしたくなるじゃない。こんなにも綺麗だから、汚したくなるじゃない。君が、君が……」
私に優しくしたから。
もう戻れない。こんなにも、美味しい毒を飲んでしまったから。
「大丈夫、最後まで楽しむからね」
一つ残らず、骨までも。
ワタシは曼珠沙華を喰らい尽くす。