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7・ ゴメンね 素顔じゃなくて

 ジュール様の衣装改造計画がスタートしてからしばらくして、セバスさんが素晴らしいニュースを持ってきてくれました。

「え、お客様がいらっしゃるの? でも、私もご一緒して構わないのかしら」

「お越しになられるのは、旦那様の古いご友人のアラン・ガレスタ様でございます。旦那様が、アラン様には奥様をご紹介しておく、とおっしゃいまして」

 ははあ、なるほど。古くからの友人という事は、親友ということなのでしょう。積極的には公表していなくても、結婚証明書にサインしてしまった以上はどこからか結婚の事実は知られてしまうものです。

 それを親友であるジュール様以外の他人から聞かされるのは、あまり良い気はしませんものね。俺とお前の仲なのに、水臭いだろうって気まずくなるのが想像できます。

 まぁ、ワンチャンお前のお飾り妻見せろよ、俺というものがありながら! 的な萌えシュチュパターンもあるかしら。うふふ。


「騎士団の第三師団長を務めておられる、気持ちの良いご気性のお方でございますよ。顔合わせのあとは旦那様と二人で狩りに行かれると聞いておりますから、奥様のご負担は少なくて済みます。どうぞ同席下さい」

 何ということでしょう、事前情報だけで早速美味しい人物が現れましたね。

 騎士団で師団長をされているのでしたら、マッチョ確定ですね。ああ、想像しただけで楽しい。

「わかりました、当日の旦那様のお召し物の色だけ教えて下さい」

「かしこまりました。その様なお顔をされたのはここに来られてから初めてでございますね、奥様。ご友人に紹介しようとお考えになったのです、旦那様もきちんと奥様の事をお認めになっておいでなのです」

 使用人として喜ばしい、といった表情をしてセバスさんは穏やかに笑いました。

 あ、また勘違いしてる……。ねぇ、旦那様の妻としての役割を果たせて嬉しい、みたいな解釈したでしょセバスさん。

 これじゃうっかり笑う事もできないじゃないですか。

 どう返そうかと迷っているうちに、無言を肯定と受け取ったセバスさんは、当日が楽しみでございますね、と言い残して出て行きました。

 いや、楽しみですよもちろん。でもそれ解釈違いですから!!!



 そんなこんなで後日アラン様がいらっしゃいました。

「お初にお目に掛かります、ガレスタ卿。ヒュリック家の末席をいただく事になりました、フロリアと申します。どうぞ、記憶の片隅にでもお留め置き下さいませ」

 私はそう言って、両手でスカートの裾を少し上げて一礼しました。

 本来ここは、ジュール様の妻ですと言うべきなのでしょう。ですが私は自分を旦那様の妻だと売り込む気はありません。見知っていただく必要もありません。記憶の片隅に追いやってそのまま忘れていただければ良いのです。

「これは……控えめな方だ、フロリア夫人。そのお姿同様可憐でいらっしゃる。ジュールとは古くからの悪友です、どうぞよろしく」

 見上げる程の体躯をお持ちのアラン様は、そう言って快活な笑顔を浮かべながら、手を差し出されました。

 さすがは騎士というだけあって、鍛えられた厚みのある身体は服の上からでもわかります。出された掌も大きくて、胸がときめきますね。

 私はその大きな手に、自分のそれを重ねました。アラン様の手に重ねると、まるで子供の手のように見えてしまいます。

 恭しく腰を折り、そっと手の甲に唇が触れるか触れないか程度に軽く顎をのせられます。そして壊れ物を扱うように、そっと手を放して下さいました。

 さすがは若くして騎士団の一翼を担うお方ですね。手馴れている上に紳士ッ。

 何よりワイルド系のイケメン。髪は黒い短髪で、瞳が綺麗な緑色をしていらっしゃいます。やや陽に焼けた精悍なお顔は私の理想通り。

 ああ、神様ありがとうございます。このカップリング、推せる!


「旦那様、それでは私はここで……。ガレスタ卿、ごゆっくりお寛ぎ下さいませ。失礼致します」

「ああ、分かった」

 アラン様に軽く会釈して、私は逸る気持ちを抑えながら自室へと帰りました。

 早くッ、早く侍女リズに変身しなくては! ヲタ活ミラクルパワー、メイクアップ!

 残念ながらまだアリーナ席のチケットは手に入っていません。

 ライブビューイングか良い所でスタンド席ぐらいの距離感ですが、推しカプを愛でるせっかくのチャンスです。

 こんなこともあろうかと、劇場もない地方都市に嫁いで来たというのに、婚礼道具にオペラグラスを入れておきました。

 侍女に変わってヲタ活よ! ……マズイ、やっぱり犯罪かなコレ。


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