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31・ 花ざかりの庭園で

「意見、ですか?」

「そう。あなたの率直な意見を聞かせてもらいたいんだ」

 午後、いつものように二人揃ってお茶を飲んでいると、ラタン材の長椅子の端に座ったジュール様が穏やかに笑ってそうおっしゃいました。

 対して私はその反対側の端の席に座っています。きっちり詰めれば間に大人二人くらいは座れそうなその距離が、旦那様と私のいまの程よい距離感です。


 いつもなら私の部屋で一緒に楽しんでいるアフタヌーンティですが、今日は邸の庭の木陰に席が設けられています。

 季節は夏へ移り変わりましたが、前世日本と違って雨期が過ぎたこの時期は湿度が低く、屋外の木陰にいると風が吹き抜けて気持ちが良いのです。

 よく手入れのされた小さな庭園の芝の上にラグを敷いて、脚のないラタン材の長椅子とクッションが置かれています。このままお昼寝をすれば、さぞ気持ちが良いでしょう。

 ここに本物の美系従者とか通りすがってくれないかな……。


「私が許すと言っている。だからここで休んでいけ」とかなんとか言って主人特権発動するスパダリがかわいい使用人を腕の中にガッチリ囲い込む。

 ジタバタしながら結局逆らえず一緒にお昼寝するハメになって、後で仕事に戻ったら上司である執事にチクりと釘を刺されるまでがお約束。

 ご主人様に甘やかされる童顔の使用人の図。成人してるから合法ですよってのがポイントですよ。うん、悪くない。

 ああ、今はそんな妄想をしている場合ではありませんでしたね。


「ヒュリック領の財務の健全化と言っても、今お伺いした限りではさほど問題があるようには思えませんでしたけれど」

 私が旦那様から意見を求められたのは、領地運営の事についてでした。先日旦那様に仕事を手伝わせてほしいとお願いした結果なのでしょうね。

 はっきり言って商家の娘と言っても、金勘定については素人同然です。実子と言えども女である私が経営面に口を挟む事などありえませんし。

 前世も事務員だったとはいえ、ただの総務でしたしね。まぁ、総務と言えば聞こえの良い何でも屋さんでしたけどね。中小企業の事務員なんてそんなもんです。


「そう、特に可もなく不可もなく、なのだ。普通であればこれでも困窮しない程度に財務が回って行く程度の収益はある。問題は……」

 そう言って旦那様は気まずそうに口を噤まれました。

 なるほど、お義母様の浪費が原因と言うわけですね。

「過剰に儲ける必要はなくとも、領内に新しく産業を興す事は必要かもしれませんね。一つの産業に頼り切っていては、いざそちらが立ち行かなくなれば今以上に財務は苦しくなります。片方がだめでももう片方がある、という状態にしておけば、いざという時にはそれで持ちこたえる事が出来る場合もありますから」

 そう、前世のようにダブルインカムは重要なのです。リスクマネジメントですね! 

 え? ちょっと違いますか?


「そうか……そうだな。だとすれば、どんなものが良いのだろうね。正直私はその辺の事は本当に疎くてね」

 まぁ、由緒正しい伯爵家のお生まれですから当然の事でしょう。

 ジュール様がさっきおっしゃったように、余程の事がなければ財務の事など考えなくても、それなりに暮らせる程度の収入があるのが当たり前なんです。でなければ上位貴族が特権階級なはずがない。

 それを考えると、お義母様どれだけ浪費したのよって怖くなりますね。


「私も今すぐには思い浮かびません。すぐにどうこうできる問題でもございませんし、何か良い案がないか私も考えてみます」

「ああ、ありがとう。そうしてくれると助かるよ」

 そう言って旦那様は柔らかく笑われました。はぁ~イケメンパラダイス。

 この笑顔を守る事が出来るのなら、どんな事も頑張れると思います。

 転生、万歳!

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