江戸時代のボディビルダー
「二人とも、投げ銭は知ってるよな?」
「もちろん」
「大道芸の人とかにお金入れるやつだよね!」
「そうだ。その文化はな、江戸時代にもあったんだぜ。旅をする女性が、柄杓を持っていると、そこに食べ物やなんかを入れてくれたんだ」
「だったら俺たちにも投げ銭をくれる可能性があるってことだな」
「でも何すれば貰えるかな?」
「それは簡単。俺達には、この時代にはほとんどの人が持っていない、筋肉芸術があるじゃないか」
非常に馬鹿らしい話ではあるが、実際、筋肉には人を惹きつける力がある。と私は信じている。
だから私は言った。
「それなら、前の稼ぎ方と変わらないな」
私たちは大会での賞金はもちろんのこと、筋肉タレントとして、芸能界でもそれなりに稼いでいたのだ。
また、これは私だけの話だが、筋肉系商品開発会社「株式会社MUSCLE筋肉」と合同でビルパン(ボディビルダーが大会などではくパンツ)を作ったこともある。
ある年では、じゃがりことの年間売上が同じだったなんて都市伝説があるぐらい売上が伸びたらしい。
「まぁとりあえずやってみるか!」
「そうだね!」
そして、その作戦は案外上手く行き、タンパク質を取れるぐらいのお金は手に入るようになった。
怖いことに、私たちは基本的にタンパク質があれば何不自由ないことが分かった。
「HMBが無い」だの「BCAAが無い」だの「EAAが無い」だの「ひいおじいちゃんに会ったこと無い」だの色々言っていた唯人だったが、みんな同じ状況なんだから我慢しようと一言言ったらすぐに収まった。
ちなみに私はひいおじいちゃんに会ったことがある。
そして私達は、道で脱いで、筋トレをして、お金を貰って、タンパク質貪る生活を数日間行った。
※※※※※
「ありがとうございます!」
「いやー、今日も結構貰えるね」
「そうだな」
「ねぇ二人とも、そろそろ自重トレ(自分の体重を使ったトレーニング)飽きてきたんじゃない?」
「まぁ大体は人を使っていたが、俺も同感だ」
「そうだね。」
誰も言ってはいなかったが、トレーニング器具がないというのは、とても重大なことなのだ。
私たちはトレーニーにとってこれはパウロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ホアン・ネポムセーノ・マリーア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアーノ・デ・ラ・サンディシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソが、塗り絵をしているようなものだ。
「じゃあどうしようか?」
バッゴーン!!!!!!!
「すまぬ、当たってしまった」
男はいかにもな感じの武士の服装を着ていた。顔も同様にいかにもだった。
そう、顔が私の目の前にあったのだ。
私の身長は宇宙ボディビル協会イン地球の公式だと二メートル二十センチだ。
顔が目の前にあったのだ。
「お主らはいいからだをしておるな」
「あ、ありがとうございます」
「どんな鍛錬を積んでおるのだ?」
「え、あの、筋トレを」
「筋トレ?なんだそれは」
「筋トレとはな、、、、筋繊維一つ一つと会話し、高め合い、大きくしていく物語だ。一生の友達であり、相棒である筋肉との戯れだ。そして、私たちが生きる意味だ!!!!!」
過去一私の顔に影ができたであろう、そんな表情だった。
私の真っ直ぐな眼差しを真っ直ぐな眼差しで返してきた大男は、今まで以上に勇ましくなった声で言う。
「私は筋トレとは何かを問うたのだ。だがしかし、お主の眼差し、それは愛のある人間がひとつのものに愛を捧げることでしかならない真っ直ぐなものだった私は大村 元始。お主たちを宇宙一のボディビルダーにしてやろう」
「えっ、、?!?」
「情報量が多すぎて何が何だか分からない」
私たちが疑問に思った点は様々だったが、聞きたいことはひとつだった。
「な、なぜボディビルダーをしっているのですか?」
声は揃っていた。
「何を言っているのだ。ボディビルは今や、宇宙規模で広がっていっているモーストポピュラースポーツでは無いか。知らぬものなどいるはずも無いだろう」