前編(ぜんぺん)
ボクは雪が好きだ。
雪がつもって真っ白になった道をお母さんといっしょに歩く。
いつも遊んでいる公園も、今日はきれいに真っ白だ。
歩いていくと、お店屋さんがたくさん並んでいる場所にでる。
そこはいつもと違っていた。
大きな雪だるまや、大きくて真っ白な……雪で出来たクリスマスツリー。
他にも雪で出来た小人さんやサンタさんもいた。
─ きのうは何もなかったのに……!
「ねぇ、あれは何?」
ワクワクしながら言ったボクに、お母さんは秘密の話をするように教えてくれた。
「あれはね、雪の魔法使いが作ったのよ」
耳元でこっそりと、ナイショ話をするようにお母さんは言った。
やっぱり!と思った。
こんなにきれいなものを作れるのは魔法使いしかいないから。
雪で出来たツリーも、小人さんやサンタさん、動物達も雪で作ったとは思えないくらいきれいだった。
─ 雪の魔法使い……どんな人なんだろう?
ボクは、雪の魔法使いに会ってみたくなった。
次の日、お母さんに遊びに行くと言って家を飛び出した。
本当は、雪の魔法使いを探しに行くのだけれど。
─ どこにいるかな?
家の側の空き地には……いない。
公園には……いない。
学校にも……いない。
お店がいっぱいある商店街には……ここにもいない。
─ どこにいるんだろう?
見つけられずにしょんぼりしたまま家に帰っていると、家の側の空き地に、きれいな雪のウサギがたくさんいるのを見つけた。
─ 家を出た時にはなかったのに……!
雪のウサギは、どれもつるつるしていて、まん丸で、とてもかわいかった。
ボクは、もっと雪の魔法使いに会いたくなった。