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乙女ゲームの悪役令嬢だった筈の彼女は今、別ゲームの主人公ポジションにいます。

続・乙女ゲームの悪役令嬢だった筈の彼女は今、別ゲームの主人公ポジションにいます。

作者: 佐原朝希

若干ご都合展開ですが、サラッと読み流して頂けるとありがたいです。

※新キャラへのアイラの態度と、前作に出てきたルッツへの態度(対応?)が違うのは、ルッツとの方が気さくに話せる為、と思って頂けたらと思います。

※10/19 内容を少々修正しました。

※10/20 前作と今作を一話目、二話目として【連載版】を書き始めました。宜しかったら、そちらもお付き合い頂けたら嬉しいです。



 もうすぐ夏の季節へと変わろうとしている、とある晴れの日。


 朝、動物達の世話を終えてから。私は小さいながらも少しずつ作り始めた畑の土を耕していた。

 

 勿論、畑を作るにあたっては、おじさんに場所や広さの許可は得ている。


 場所は小屋からも見える日当たりの良い場所で、広さは一種類の作物を前世で言うところの六畳一間位で植えられる広さで、それぞれ四ヶ所ある。結構な広さだ。


 そうそう! おじさんは私が畑の事を相談した際、農作業用に、と。おじさんの家の倉庫に仕舞って置いてあった、古いくわやジョウロ、草刈り用のカマ(作物によっては収穫にも使える物だった!)、収穫物やアイテムを入れる事が出来る、肩掛けの不思議な布カバン(今のところは三十個まで、作物・食材・料理・木材・鉱石等、色んな物を入れる事が出来る物だ)を『全部古い物で悪いが、まだまだ使える筈だ。よかったら使ってみてくれ』と、譲ってくれたのだ。これ、本当とっても有難い。


 私はこれらを受け取った時、密かに『はわわわわ!! こ、これって、ゲームで見たやつ!! 街の鍛冶屋さんで徐々に良い物に改造レベルアップして貰えるやつー!!(ちなみに、カバンは雑貨屋さんで容量を増やして貰える。仕組みは解らないけど)だ!』と。テンションがギュンギュン上がっていた。うん、お金に余裕が出来たら改造して貰いに行こう! 楽しみ!


 とまあ、そんな事を思い出しつつ。ひとまず畑の作業も終えたので小屋の外に備え付けてある簡易シャワー(またまた前世で言うのなら。少しスペースを広げた電話ボックスみたいな感じの、素材はガラスでは無く板張りにしたシャワーブースってところ…かな?)で汗を流して、小屋に入ろうとしたところで――…


 「アイラちゃ〜ん! こんにちは! 手紙だよ〜!」


 …――牧場の入口から、こちらに笑顔で手を振りながら。深緑色をベースにした帽子に郵便マーク(制作者が日本人だから? まあ、解りやすいけど)の入ったそれと、黒地で丈夫そうな肩掛けカバンを身に着けた細身で背の高い青年が私宛だろう手紙を手にやって来た。


 「こんにちは! ルネさん。いつも配達ありがとうございます!」


 ルネさんは肩辺りまでの明るめの金茶色の髪に、ほんのり赤茶色を持つ、やや垂れ目がちの瞳と、その側にある泣きぼくろが素敵な美人なお兄さんだ。年齢は確か二十代前半。

 以前街で偶然見かけた時は、お休みの日だったようで、女の子やら、女の人にキャアキャア言われつつ囲まれていたんだよね。婿候補恐るべし――…。(そう。ルネさんは女主人公の場合、婿候補の一人だったりする。他に二人居るんだけど、そのうちの一人は実はルッツさんだったりする。後一人については今は――…ま、いっか!)


 「いえいえ〜、こちらこそいつもご利用ありがとうございまーす。はい、どうぞ。もしすぐ返事を出したい場合は返事も預かるよ。僕の配達作業、今日はもう終わりだから、少し位なら待って居られるし」


 家(まあ、まだ小屋だけどね…)から街の中の郵便局まで行くには結構な時間が掛かるので、ルネさんの時間に余裕がある時には、お言葉に甘えて少し待って貰い、手紙を預かって行って貰っている。(勿論送料は毎回きちんと払っているよ!)


 「ありがとうございます、ルネさん。今手紙を読んでしまいますね。あ、良かったら中にどうぞ!」

 「いやいや、一人暮らしの可愛らしい娘さんのお宅に上がり込む訳には行かないから、ここで待たせて貰うよ。のんびり草を食む羊くん達を見てると和むしね〜」

 「そうですか? ふふっ、それじゃ今、飲み物でもお出ししますね」

 「いやいや、お構いなく〜」


 と、いつものやり取り(ルネさん、紳士的だよね。まあ、考えてみたら、外だろうと中だろうと、私一人しか牧場ココに居ないんだけどね…ま、こんな小娘にワザワザ手を出さなくても、ルネさんなら相手には困っていないわね)をしてから。

 

 小屋の入り口前にある段差(敷居と呼んで良いのかな一応)の所に座るルネさんに、新鮮なミルクと昨日の夜作って置いたプリンを一つ、トレイに乗せて出して、私は手紙の封を開いた。



 





 「うっわ――…こわ…」


 手紙は実家からだった。簡単な手紙のやりとりはしているのだけど、今日届いた物は『不幸の手紙』か!? と言いたくなる内容だった。


 いつもなら“元気にしていますか?”的な言葉から始まり、家族の近況(特に変わりはないけど)、そして“また、お手紙書きますね”的な感じなのだけど、今回はその近況に――…


 “先日、家にどこかの下級貴族の令嬢と思わしき方が貴女を訪ねて来ました。私も留守にしていたから直接会う事はなかったのだけれど、対応した執事は彼女に当然名を尋ねたの。その方は、それには答えず名乗らなかったとの事で、どこの方は知らないままなのよ。ただ、特徴はしかと覚えていたようなので、お父様とも相談した結果、不審者として警備隊に通報しました。直ぐに見つかる事でしょう。

 

 けれども、その彼女。初めは淑やかに振る舞っていたようだけれど、次第に『あの女はニセモノの悪役だったし、そもそも令嬢じゃないし!――…アイラ! 居るんでしょ!! いい加減に出てきなさいよ!!』『アンタが引きこもってるせいでイベントが起きないじゃない!! どうしてくれんのよ、私はヒロインなのよ!!』等と大声で怒鳴り散らして居たのだそうよ、怖いわね。

 

 貴女がそちらに居る事を知っているのは私達家族と、そちらの方々(貴女の呼び名で言うならば“おじさん”と、そのお兄様ね)だけだから、貴女の居る場所が知られるとは思えないけれど、念の為、身の回りなどくれぐれも気を付けるようにね? こちらからも貴女に護衛を付けるかお父様と相談しているところです。それに“おじさん”にもお手紙させて頂いたから何かあればすぐに相談させて頂きなさいね”


 …――色々略してはいるけれど。そんな感じで母から書かれていた。


 ええぇー…内容から察するに、ヒロインとか悪役令嬢とか、それって乙女ゲームじゃないの? 私はやった事無かったけど。聞いた事位はあった。ええぇー…何それ、怖い。


 どう見てもヒロイン(とやら)は、マトモじゃ無さそう。ヤバいやつじゃない? 関わりたくない! とは言え現状で出来る事…警戒する以外には何があるだろうか? 考えておかないと。


 「…――と、とりあえず、今は母様達に返事を書こう」


 私は返事に“暫く油断せず気をつける”旨を急いで書いて、ルネさんに手紙を預けた。


 「ねえ、アイラちゃん。顔色があまり良くない気がするけれど、大丈夫〜?」


 ルネさんに手紙の代金を払い、彼が私の預けた手紙と代金をカバンに仕舞い終えたところをぼんやり見ていると。


 少しヒンヤリした手のひらが私の額にそっと押し当てられ、心配そうな表情を浮かべるルネさんに顔を覗き込まれ、赤みがかった奇麗な茶の瞳と視線が合う。わわわ、顔! 近い、近い!


 「ん〜、風邪かな〜?」

 「んなっ!? 何でもないです! ほんと、大丈夫ですからっ! 心配してくれてありがとうございます!」


 文字にするならば、シュバッ! 私はルネさんから勢いよく離れた。いや、もう美人さんに急にそんな事されたらね? ドキッとしちゃうからね!?


 「そう? じゃあ疲れが出ているのかもしれないね。んー、それじゃ夕方にまた来るよ。羊さんや牛さん達を動物小屋に入れて上げないといけないよね? 手伝うよ〜」

 「えっ、本当に大丈夫ですよ!」


 夕方なら仕事後だろう。わざわざ来て貰うなんて迷惑だろうし、私も本当に体調は大丈夫なのだ。ただ、自称『ヒロイン』とやらを怖いな〜と思っているだけなのだ。


 「遠慮しないで〜、それに毎日って話じゃないんだから、ね? ルッツ程には力は無いかもしれないけど、少しは役に立つよ? 僕にお兄さんぶらせてよ〜」

  

 くっ、美人なお兄さんの顔のアップと優しさに、ときめいている場合じゃないのにっ!!


 「あの…あ、ありがとう、ございます。それじゃあ、すみません。宜しくお願いします」


 次の瞬間。ルネさんにペコリと頭を下げている私が居ましたとさ――…。




 

  








 私は平和にのんびり、牧場生活を満喫したいだけなのだけれど――…(そりゃー、出来ればね? 恋愛とかもしたいですよ? リア充に憧れますよ? でもねー、誰かと争うなんて事にはならない穏やかなやつを、希望するよねー)


 …――どうか。これからも平和にのんびり。牧場生活を満喫できますように――…で、できるよね? いや! しますとも!!

 (だから。自称ヒロインさん、乙女ゲームとか勘弁して下さいよ!? 間違えてますよ!? ゲームジャンルが違ってますからー!!)



お読み下さりありがとうございました…!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] じりじり続きを催促したくなりますね(笑) このままヒロインと会わずに済んでもいい感じ(*´艸`) [気になる点] >そうそう! おじさんは私が畑の事を相談した際、農作業用に、と。  古い…
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