さみしがり宇宙
こんにちは。
あたしです。
唐突ですけど、
あたしって凄いんです。
なにがって?
心におもいっきり爪を立てられる事が、
どんなに気持ちいい事なのかを知ってるんです。
あたしが全てを許してしまっていて、
大好きで。
拒絶なんて感じる余地なんかあるはずもないあなたに
ギリリと勢いよくハートに爪を食い込ませられたなら
あたしはきっと、声をあげて死んじゃうんです。
恥ずかしいけど。
でもね、
あなたは優しいから、
あたしを殺したりなんかせずに
ゆっくり背中を支えてくれるもんだから
あたしは死ねずに心の一つ下に
ストンと落ちていく。
酷い位優しい人だよね。
ほんとにさ。
あたしが落ちたそこは
とても冷たいフラットな世界。
そんな世界にふらっと落ちていく。
冷たいのに暖かい。
物なんてなにも無くて、
真っ白でしか無くて遠近感もわかんない。
耳鳴りがしてるような気のせいの中で、
あたしはなぁ、
生にしがみつくんだよ。
自分も他も何もない世界に身震いしながら。
――やだよ、
あたしがなくなっちゃうよ!
ぶるぶると震える体に意識がいくと、
それは一つの震えという動作には思えなくなってきて。
一つ一つの「ぶ」「る」「ぶ」「る」が織り成す律動に思えてきちゃって。
それはとても規則正しくて、でも自分の意思では止められなくて。
規則にそぐえない赤点なあたしは
もうあたしなんかなくなっちゃってくんだなって恐ろしくて。
そんなあたしの姿を見てた、
酷い位優しいあなたは
どうにもしょうがないって顔しながら
あたしのハートを勢いよく
握りつぶしてくれるんだぁ。
――その瞬間、
あたしははじけて、物凄い勢いで
広がってった。
限り無く薄く無限に伸びて行くあたし。
瞬く間に、あたしは宇宙を丸ごと
覆い尽くした。
身震いは止まってた。
宇宙があたしでいっぱいになった。
――ん、
いや。
気づいてしまった。
あたしが、宇宙そのものだった。
なあんだ。そうかそうか。
あたしって宇宙だったんだな。
宇宙って不思議で難しいものだとは思ってたけど、
そりゃあそうだよ。
あたしだったんだからなぁ。
NASAの科学者さん、
ごめんなさい。ごめんなさい。
あたしなんかの為に人生賭けて研究なんてさせてしまって。
お父さんお母さん。
言ってよネ。
でも今までありがとう。
――ねぇ、
あたしの大好きなあたし。
拒絶など感じる余地も無いくらい大好きで、
本当に恐ろしいくらいやさしいあたしちゃん。
うん。
あたしにできることは、ただ一つ。
この宇宙中の命を見取ること。
一つ一つの生命全てに、
終わりが来るその時に
本当にすいませんでした、
お疲れ様、とねぎらうこと。
あたしから、身勝手なわがままで誕生してしまった生命全てに、
罪滅ぼしを一生かけてしていこう。
何億年何兆年かかるかなんてわからないけど、
あたしはどんなに辛くても必ず成し遂げるよ。
成し遂げるから、
全てが終わった時には、どうか褒めてもらえますように。