Null:よく分からない話
昔々あるところに1人の女の子と疫病神がいましたとさ。
そこは平和な国でした。
科学が文明として発達していて、法律によって守られていました。
しかし、それ故に人はあらゆることを考え続けていました。
そして多大な計算と論理的思考の積み重ねにより、さらに文明を開花させていきました。
国の外れに、ある有能な研究者がいました。彼には妻と2人の息子がいました。兄は父を助け、弟は母の面倒を見ていました。
研究者は愛しい妻の病が治らず、途方に暮れていました。
研究者は妻を失うことを恐れました。しかし無情にも時は過ぎ、妻は天命を全うしてしまいました。
研究者は慟哭します。
それ以来彼は研究に明け暮れました。
そして研究者はついに妻を蘇らせたのです。
しかしそれは見た目は人の形を保ってはいたものの、倫理的には人間とは言い難い者でした。
死体をリメイクした人工知能。
国は多額の資金を投じました。やがて研究所は管理室を増築し、メインコンピュータにシステムをダウンロードしました。
脳は電気信号を発して体を動かす。
そして各地に電波塔を置くことで稼働範囲を少しでも増やす。
さらに多量の薬剤を投与し、体細胞の再生能力を限界まで向上させる。
本来なら廃人になるほどの致死量でも、自我の無い人工知能なら使い放題。
研究者は人工知能に生前の妻の全てをインプットしました。すると彼女はまるで妻のように全てをこなします。
しかし機械にかわりはなく、システムで管理しても時に異常をきたしていました。
ある日泊まり込みのために自宅に帰った兄は弟の姿が見えないことに疑問を抱きました。
すぐに研究所の父のもとへ行きます。
するとそこには手術後の父と
後頭部を何針も縫われた弟がいました。
父は言います。
システムには予備が必要だ。
それに母さんはたくさん子供を欲しがっていたろう?
だから母体になってもらったんだ。
中央管理コンピュータのメインシステムに基盤に母さんのAIを使ったんだよ。これで母さんは死体の人工知能もクローン体も全てコントロールできる。
それにお前はIDでコンピュータに接続できるけど、由良には無いだろう?でもそれじゃ弟、妹たちをしつけるのが大変だからね。直接、予備の管理システムを埋め込んだんだよ。
これで今生きてる人間が皆死ねば、皆が幸せになれるね。
隣のコントロールルームが稼働する音がします。
兄は静かに言いました。
次元移動装置を稼働させたんだ。
父は笑います。
だって神が悪いんだよ。
父は静かに息絶えました。
兄は弟を隣の部屋に連れていきました。
ごめんな、由良。
この不始末は兄ちゃんがつけるから。
お前は別の世界で待っててくれ。
そして彼は意識のない弟を別の次元に送りました。
「んであんたは道路のど真ん中に落っこちたわけだ。」
『そう。そして僕を助けようとした君と轢かれて、しかも僕の脳ミソはチップが埋め込まれたまま君にドナーとして提供された。』
「皮肉だな。」
風がはためく鉄塔の頂で少女は笑います。
己のみ見える少年に向かって。
「待ってろって言われたのに探しに行くんだ?」
『まぁ、ね。別の次元にも落人は送られてるわけだし………兄さんが世界を救うなら、彼らを解放するのは僕かなって。』
「正確には肉体の所有者であるあたしだけどね。」
電話の音が響く。
『深淵の魔女さん?』
「うん、今度は神様探してこいってさ。名残惜しいけどこの世界ともおさらばだ。んじゃいこうかね、相棒?」
『うん、行こう。凉音。』
それは1人の少年のお話。
真実を知った友達から疫病神と呼ばれた少年は居場所を失い悪鬼と化した。
しかし少女はそれすらも笑い飛ばした。
─笑わせんじゃないわよ。疫病神?んなもん知るか!
─そんなに関わるのが怖いなら、なおさら関わったげる。ほれほれ、思いしれ!
─おあいにく様、あたしは無神論者なわけ。
─怖いなら、寂しいなら、願うなら、あたしの手をとりな。
─………は?じゃあなんで他人のこいつらを助けんのかって?決まってんじゃない、そんなの
─ご飯が不味くなるからに決まってんでしょ!
なんか無性に書きたくなっただけなので無理があるかも………。