表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/19

八話/彼女は、亜麻色の乙女



 「亜麻色の髪の乙女」


 鈴村は、ふっと笑うとそう言って、靴箱から、靴を出した。


 「・・・?」


 僕は、ハテナマークを頭に乗っけて、靴を出しながら、彼女を見た。

 僕の頭の中では、数年前に女性シンガーが唄っていた、「亜麻色の髪の乙女」が流れていた。


 「あの「亜麻色の髪の乙女」とは、違うからね。ドビュッシーの。」


 「外国人歌手?」


 「クラッシックだよ。私の鼻歌じゃ分かんないと思うけど、多分、聞いた事あると思うよ。」


 「ふーん・・・ピアノでも、やってるっけ?」


 「ううん。なーんにも。」


 彼女は、そう言って、早く帰ろう!と、手招きをした。

 彼女の髪の毛が、夕日に照らされる。

 天使の様な彼女の頬に、涙の跡と腫れぼったい目が、夕日に照らされる。

 胸が痛くなる・・・

 頭がズキズキとし始める・・・

 僕の弱い部分が、ズキズキと僕を責め立てていく。

 歩くごとに、痛みが増加していく。

 今日、彼女を助けたかったのに、助けなかった僕が、彼女と僕自身に罪悪感を感じているのだ。




 「頭、大丈夫?」


 「え?」


 顔を上げ、辺りを見渡すと、もうすぐ、鈴村と別れる道に近づいていた。


 「下を向いて、何か考えてんのか、痛いのか・・・みたいな様子だったから・・・。」


 「あ・・・そうなんだ。」


 「無意識で?やっぱ、頭打ったからだよ。早く家に帰って、冷やして、医者に行った方がいいよ。」


 「大丈夫だよ。」


 「本当に?」


 「うん。」


 「そっか。」


 鈴村と、別れる道が来た。


 「じゃあね。」


 「うん。」


 鈴村が、後ろを向いて歩いていった。


 「・・・ごめん。」


 僕は、小さい声で呟いた。

 頭が、ズキリとまた、痛む。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ