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五話/僕は、子供

 


 その日、僕の頭の中で、鈴村の笑顔が、幾度なくチラついて、あまり寝れなかった。

 あんな笑顔・・・初めてだ。

 きっと、うちのクラスの男子が見たら、惚れてしまうだろう。

 でも、きっと、鈴村のあの愛想の悪さじゃあ、あんな笑顔をクラスでしそうにない・・・

 そんな事を考えて、独占意識が芽生えている事すら、僕は気づいていなかった。

 まだ、僕は、何も知らない・・・。知ろうとは、していなかった。



 

 「なぁ、お前、誰かと付き合ってるのか?」


 「・・・はぁ?」

 

 友人の問いに、僕は、声をワントーン上げて、聞き返した。

 昼休みの、のんびりした午後の雰囲気が、少し吹き飛んでしまった。


 「・・・だからさぁ、彼女とかいんの?」


 「いや、いないに決まってんじゃん。てゆか、どうした訳?」


 「いや・・・その・・・とある女子に、聞かれたんだよ。」


 「・・・・・・は、はぁ。」


 「でもさぁ、お前がこの前、鈴村と絡んでるのを見たって奴がいてさ。お前、鈴村とこの頃、仲いい感じするし。」


 「・・・は!???な、何ソレ?」


 僕は不覚にも、少し焦った。


 「ほれ見ろ。鈴村さん、絡まれてっぞ。」


 ふと、教室の隅を見ると、鈴村が他のクラスの女子に、何かを言われていた。

 

 「あ。」


 「どした?」


 「いや、あの他のクラスの奴・・・この頃、よく来るよな。ここに。」


 「・・・お前、ホント、バカだな。・・・アイツ、お前目当てらしいぜ。」


 「・・・・・・はぁ?ありえないっしょ!てゆか、それと鈴村と何が、関係あんの?」


 友人は、大きなため息をついた。

 その後、世話が焼けるよ・・・と呟くと、俺に説明し始めた。


 「だからさ、お前狙いのあの女子が、お前と鈴村が仲良くしてんのを見て、よく思わないから、鈴村に絡んでる訳よ。」


 「仲良くしてるったって、クラスで喋った事なんて、皆無に等しいよ。帰りだって、たまたま、逢っただけだよ。」


 僕は、冷静にこう話した。

 

 「・・・そか。うん、あとで、アイツに話しとくわ。・・・でも、あの状況・・・どうするんの?助ける?」


 「いや・・・やめとく。」


 ここで、下手に誰か出て行っても、結局は、火に油を注ぐのと一緒だ・・・

 僕は、止めたい想いを振り払い、ベランダに出た。

 空が、やけに青かった。

 

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