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十九話/僕の、金網キッカー

※注意※十九話には、気分を害する様な表現が含まれています。グロかったり、痛々しい表現ではありませんが、少し生々しいので、ご注意ください。

 僕の心は、あのとき、完全に繋がっていた。

 あのときほど、満ち足りた気分の時はなかった。

 もう、僕の心は、二度と満たされないのだかだろうか。

 あの深海を抜け出せた僕は、あのとき、たしかにいたのだ。

 あの場に。そして、抜け出せたのだ。

 ・・・もしかしたら、僕は、深海の暗い深いブルー蹴っ飛ばしたつもりで、・・・本当は、深海に戻されたのかもしれない。



 あの、蒸し暑い夏の日以来、夏、秋、冬をのろまなレーサーの様に、だるだると駆け抜けた僕が、変わった事は、三つだけ。

 一つ目は、僕と鈴村帝という女の子が、目を合わすことさえも、喋ることさえも、しなくなったこと。

 二つ目は、僕と利央が付き合いだし、子供を越えてしまった事。

 三つ目は、卒業と同時に、鈴村帝の家へと続く道が、なくなってしまった事。

 ただ、それだけだ。


 戻ったのだ、元のなんでもない、日常に。

 夢だったのだ。ただの、馬鹿げた夢だったんだ。

 僕と鈴村帝は、ただのクラスメートに戻ってしまった。

 けれど、僕は、その事を、望んだ。

 彼女に、抱きついたり、心を開いてしまった事で、気まずくなってしまうのを恐れた。

 彼女が、利央に、嫌な事をされないかを、気にした。

 彼女が、辛い想いをしないか気にした。あとになって、後悔ばかりが、心の壁に塗りたぐられる。

 そして、幼く残酷な僕は、闇を吐いた。

 僕は、幼かった。仕方のないことだ。幼いのだから。


 夏に、付き合い始めた利央とは、一線を越えてしまった。ただ、僕は、鈴村との関係がなくなって以来、意識という物を手放しがちだった。

 だから、無意識のうち、進められるがままに、僕は、越えてしまったのだ。あのブランコの柵とは違う、何か、違う奇妙なものを。

 ただ、利央との事で残ったのは、僕と利央の汗と混ざった、気持ち悪い液体と、ただただ、消えてしまいたくなる寂しさの様な空虚感。

 あの一線を越えた日以来、僕は、吐き気が止まらない。


 そして、高校生になり、中学を卒業した僕は、利央から開放された。

 それでも、残るのは、君がくれたお腹の痣と、君の汗の香りと、この空虚な気持ち。

 血の様な真っ赤な、夕焼け空を見ると、今でも、思い出す。

 あの


 茶色の透き通る サラサラした 長い髪の毛


 今にも 倒れてしまいそうな 体


 瞬きをするごとに動く 長い睫


 病的な 真っ白な 肌


 透き通るような 瞳

 

 そして、彼女の金網を蹴る姿。


 いつになったら、僕は、解放されるのだろう。


 彼女が残した、傷跡から。

 










 サヨナラ、僕の金網キッカー


 

 



 

「金網キック」を、最後まで、読んでいただき、ありがとうございました。

補足、あとがきは、たくさんあります。ですが、正直、この話にあとがきは、必要ないと思いましたので、読みたいという方は、お手数ですが、メッセージかコメント欄にて、お知らせください。

最後まで、読んでいただき、本当にありがとうございました。

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