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十八話/僕の、嘘


 ただ、幼かった。

 それだけだ。

 切なさも、寂しさも、悲しさも、僕達はあえて、見ないフリをしている。

 何故、こんなにも、14歳とは悲しい生き物なのだろう。年月は、僕を変えてくれるだろうか。

 いつになったら、出れるだろうか。この箱と、この詰まった想いから。

 仕方ない。僕らは、大人と子供の狭間で、のた打ち回る、蟻なのだから。




 「もう、俺と帰んなくていい。」


 瞳が闇を吸うごとに、彼女だけが、光って見える。

 僕は、出来るだけ乱暴に聞こえる様に、言葉を口にする。


 「もう、いいよ。一緒に、帰んなくて。」


 そして、幼い僕は、幼い彼女に闇を吐き出す。


 「疲れたんだよ。アンタみたいな、暗い奴といるのは。」


 十分だ。十分だった。


 「じゃあ、全部嘘?」


 分かれ道。

 まだ、弁解できる。


 「君といた時間ってのは、全て嘘だったんだ。」


 僕の息が、荒くなる。

 僕が、完全に闇を吐き出す前に、僕の前から消えてくれ。


 「そうやって、そうやって、生きていくんだね。」


 彼女が悔しそうに、しゃくりあげた。


 「君だけは、違うと思ってた。いくら、明るくて多少自己中なグループにいるからって、君だけは、違うと思ってた!・・・――同じだったんだけね、君も。」


 彼女は、はき捨てる様に言った。

 そう、幼い僕らに残されたのは、これだけ。

 この道だけ。


 僕は、静かに頷いた。


 彼女が泣こうが、関係ない。

 けれど、彼女は、しゃくりあげているだけだった。

 涙も、出ないようだった。


 僕のこの想いに、気づかない、幼い彼女が悪いのか。

 彼女を守るために、この手段を使った幼い僕が、悪いのか。

 誰も、知らない。分からない。仕方ない。


 そして、公園に鈍い音が走る。

 彼女の足が、僕のお腹に、ヒットした。

 僕は、ゆっくり倒れこむ。

 頬に、小石がへばりつき、僕は、目を閉じる。


 「君もアタシも、サイテーだ。」


 そう言い放った、鈴村帝は、走り去っていった。

 走る彼女の足には、もう、金網に傷はなかった。

 僕は、小さく終わりを告げる。

 彼女の口ずさんだ、あの曲を唄いながら。





 バイバイ。


 

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