牧之郷駅
あまり利用が多いとは言えない(というかむしろかなり少ないと言った方がいいのだが)牧之郷でもう結構な歳をとっているのではないだろうか、一人の老人がホームへ降りた。
なんだか気分良さそうであったのだが、その男性はこちらに向かって歩いてくるや否や、自分に
『それ』を託した。
今日もずいぶん幸先いいな。
あの人の表情を見た限りでは、あの人もこの電車に乗って何かを得たのだろうな。
そう。自分は、今までも幾度となくそういう人の姿を見てきた。
この電車にはそういった不思議な力があるのだろうか。(こんな風に思ってしまうのは世に言う「厨二病」なのか?)
たいていの人はこのローカルな「伊豆っぱこ」に何の魅力も感じないだろう。なんせ正直なはなし自分もこの伊豆箱根鉄道に入社した当初、そんな大勢の内の一人だったのだから…。
…おっとこんな回想にふけっている場合じゃなかった。出発の時間だ。
楽しみはまだ後にもとっておきたいしな。
老人から預かった『それ』を備え付けの(自分が付けたのだが)缶々に入れて、出発の合図をした
「伊豆っぱこ」とは、地元の人の伊豆箱根鉄道の愛称です。