今日も遅いアイツ
この世界は、人間たちの住む現代社会に突如として災害と共に、夕闇の大地トランシルバニラと呼ばれる僕らの国が現れた。
学者たちの見解によると多重平面世界のバグのようなものらしい。
そのせいでこの国にはヴァガボンドと呼ばれる未知の生命体が蛆のように湧いてでる。
ソファに座りながら液晶テレビの電源をつけると最新のニュースが流れてくる。
どうやらブラッディイディオットの代表、アンブローズが政権に参戦してきたらしい。
だが正直勝ち目なんてないのだからほっといて大丈夫だろう
それに万が一の場合は三英傑ノスフェラート達がどうにかするだろう。
「お待たせいたしましたカルム様」
彼は人間の年老いた執事長ユリアンだ
温厚篤実の優秀な僕の屋敷を管理する執事だ。
「さて、行こうかユリアン」
彼の運転でサンテルダム大修道学院へとかっこいい黒塗りのオープンカーで送られる
ヴァガボンドを轢きながら進んでいると目の前で銀行が爆発する
「少々お待ち頂けますかカルム様」
「いいよ僕ドーナツ買ってくるから」
そう言うとガラガラの道の真ん中に車を止めユリアンは飛び降りる
ユリアンなら直ぐに片ずくだろう。
銀行の隣にあるドーナツ店に入ると店内の人間は外の爆発音に怯えながら蹲っている。
だがそんな人間達にお構いなしに注文をする
「お姉さん注文いい?」
「え?はい?」
一生懸命注文をするが外からの爆発音でかき消される。
もう!ユリアンの分も頼んでやろうと思ったのに!
店を飛び出しユリアンに物申す!
「ユリアン爆発音邪魔だよ!」
砂煙の中、後ろに後退してきたのはボロボロのユリアンだった。
ユリアンがやられるほどの相手なんて僕くらいの強さがないと……
砂煙が風で視界が晴れる。そこには銀髪に赤目をした男が立っていた
吸血鬼!?僕ら吸血鬼が馬鹿みたいに暴れることなんてないはずなのに
もしかしてアイツ稀に現れる馬鹿か!?顔が正気じゃないし!
まぁいい同胞の評判を下げる訳にはいかない始末しよう。
カルムの瞳孔が猫のように細くなる
すると殺気に反応したのか奴の背中から赤黒い影の触手が4本ほど生えてくる
「本気でやるのかい?馬鹿者」
最後の忠告をするが返事は帰ってこなかった。
「そうか」
こちらも対抗するためフードの隙間から2本触手を生やす
「あれ今何時だユリアン」
「9時、遅刻でございます」
気づいた頃には手遅れであった。
この恨みを目の前の相手にぶつける。
「ミシェーラとの待ち合わせに遅れたじゃんか!」
目の前の相手はお構いなしのようだ
『判決』
二本の指で首を横に断つように空を切る
宙を舞う頭から首筋が目に入る
首を切られた身体は倒れることなく触手4本が襲いかかってくる
「───愚か者」
2本の触手で4本の触手のスピードを上回り弾き飛ばす。上体を逸らされた奴はそのまま倒れ込む。
吸血鬼同士の戦いは回復し続け決して終わらない。
ならばどうやって決着を付けるのか。ただ一つである相手より濃い血を送り付ける。
強き者だけが生き残る仕組みだ
「お前に猶予をやる。一言でも喋ってみろ」
しかし呻くだけで喋りはしなかった。
「そうか、残念だ同胞よ」
触手から大量の血を送り込むと同胞は灰となり消え去る
「ブラボー」
そう言って手を叩き現れたのは黒髪黒目のこの国の人種じゃない人間だ。
金ピースのタバコを箱から出し吸いながらこちらに近ずいて来る。
「人間、死にたいのならば近ずいて来るといい」
「怖いね〜!おじさんこう見えてもザカン公認の祓魔師なんだぜ?ヴァガボンドばっか祓ってるけど、見たことない雑誌とかで!」
確かニュースでこの顔は見た事がある
「何の用だ、河崎圭吾」
「何、通報があったから来ただけだよ」
「そうか、無駄足だったな」
「あーそうだな今日は帰るよ、あーそうそう、通報者はアンブローズだよ。それに使われた薬の名はUnending Nightmare」
「──何のつもりだ河崎圭吾」
「おじさんは争いを好むってわけ、期待してるぜヴァンパイア……」
その鋭い眼光に殺気を返す
「ユリアン立てるか?」
「ええ立てます。すみませんカルム様」
「気にするな運転を頼めるか」
「もちろんでございます。お召し物を着替えに戻りましょう」
少々厄介な事になってきたが、ここで争えば奴らの思うつぼだ。
この件は内密にしよう。
そう易々と吸血鬼を捕まえることは出来ないだろうからその間に片をつける
車に揺られながら、流れる風に髪を揺らし屋敷へと向かう。
あ、ドーナツ忘れてた……




