1/1
第一章
血の池かと思った。
朝のジョギングに訪れた通行人の目に、 異様な光景が広がった。
ただ事ではない。 泥のはりつけられた宮殿の中央に 無理やり目をひん剥けられて、 青年が 大の字に 凍っている。
〝 俺はまだ耳に熱がある 〟 そう訴えながら 目が 氷っている。
激しいフラッシュと共に 外気と世の中の声が一斉に意志を持ち 騒ぎはじめた。
新聞配達員のÁは いつもの通り朝刊を配達する就業を終え 午後十二時には、 職場を後にした。
鍵を回し、部屋に入ると とうめいな椅子に腰かけ、 昨日となんらかわりなく 意中の相手のスクラップを眺めていた。
彼にとってそれは 眺めれば眺めるほど奥行きが生まれてくるような、 不思議な写真だった。
〝かっこういい〟 〝かっこういい〟
それは憧れと言うには少し 熱を持ち過ぎている。
胸の奥から 蜂蜜が とろり あふれ出す気配を感じていた。
---




