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5話 溺れる者に先はない。

今日はハンター登録をする為に、スラムの中でも安全な場所にあるハンター事務所に来ている。


暫くして『311番』が表示されたのでカウンターに向かう。


「見たこと無いな。ガキの癖に良い装備してやがる」


「止めとけよ。あの装備なら反撃されたら被害がでか過ぎる」


耳も良くなったお陰で不穏な会話も聞こえてくる。だがこれらは無視だ。反撃や舐められない態度も必要だが、何事もやりすぎは破滅への一歩だ。


それから登録の為に血を取られたり、簡単な質問に答えたり、書類にサインしたりして仮登録される事になった。


「上位ハンターからの推薦が無い場合は仮登録から始まります。先ずは半年間ハンターとしてやっていけるか成果を確認します。この半年間に活動実績が少なかったり、お金を稼ぐ能力が無い場合はハンターとしての能力が無いと判断されます。一度不適格となった場合は2年間は登録する事は出来なくなります」


そんなこんなで説明を聞いていたが、俺自信、何が分からないのか分からないって状態だったから、あまり質問しなかった。


それから初心者が行くような狩場を聞き、定期運航車両が出ている乗り場に向かった。


するとどうやら付けられているようだ。


「はぁー。またか。比較的治安が良いと言っても所詮はスラムか」


奪う事に容赦が無い奴等にとって、リスクよりもリターンが上回っていれば襲う価値がある。ましてやスラムでの命の価値は安い。10万を手に入れる為なら2、3人犠牲になっても大儲けだ。むしろ分け前が減って好都合って考える奴等が大半だろう。ああいう奴等にとっては自分の命以外は等しく無価値だ。


俺はわざとゆっくりと歩いた。すると尾行していた奴が近づいてきて背中に銃を突きつけてきた。


「死にたくなかったら抵抗するな。ゆっくり歩いてあそこの路地に入れ。妙な動きをすると殺す」


俺はゆっくりと道なりに真っ直ぐ歩いた。


「おい。テメー死にたいのか?」


「なら撃てよ。ここで撃てばお前らは終わりだ。逃げ延びても一生外に出る事は出来ない。それが望みなら撃てば良い」


すると後ろの男が殴りかかってきた。


流石に分かりきっていて、力任せのテレホンパンチ何て当たる筈がない。


俺は避けた序でに足を引っ掻けて転ばせて歩きだした。


すると転んだ奴が「泥棒だ。ガキに盗まれた」とかワメきちらしている。


それに呼応してあいつの仲間らしき奴等に取り囲まれた。


「おい糞ガキ。人の物を盗むとは良い度胸してるじゃないか。覚悟は出来てるんだろうな?」


下卑た笑いを浮かべながら話しかけてきた。


ここは大通りだから銃は撃たないと確信して出てきたのだろう。此処で銃を撃てば、この辺りの徒党の奴等に殺されるからだ。徒党からしても、裏路地ならまだしも、大通りで銃撃戦をされたら管理能力を疑われて他の徒党からここの管理を奪われる事になる。それに大通りで暴れた奴は瞬く間に噂が広まり店や住人からも信用を失い、食べ物さえ買えなくなる。


だからこそ、普通の奴なら大通りでは銃は使えない。つまり、装備が良くても力や体格で勝って入れば奪えると思っているのだ。


「それが何かお前らに関係あるのか?」


「そりゃあるさ。俺らのダチから奪ったんだ。利子も込めて有り金と装備全て置いてけ。それで許してやろう」


「お前らまるで山賊だな」


俺は我慢する事が急にバカらしくなった。やっぱりこいつら全員殺そう。


そう決意して体に魔力を流し始めて銃に手を掛けたその時だった。


「全員動くな。動いた奴は撃つ」


どうやらここの徒党の奴らに囲まれたみたいだ。こんな大通りで堂々と銃を使えるのは徒党のメンバー位だからだ。


「お、俺達は」


パン


「動くなと言っただろう。次に動いた奴は頭を撃ち抜く。分かったら動くなよ」


そう言って1人が歩いて近付いてきた。


「この状況の経緯は大体把握している。念のために確認するぞ。大勢が見ていたんだ。明らかな嘘をついた奴は処分する。お前らがこの子供にいちゃもんを着けて金と装備を奪おうとした。それで間違いないな?」


「お、俺らは盗まれた物を取り返そうとしただけだ。それにまだ何もしていない」


「で、お前の言い分はどうだ?」


「俺は突然後ろから襲われたから転ばせただけだ。子供に盗まれたと言うなら証拠を出せ。それが出来ないなら子供からすら自衛出来ない奴は盗まれないように二度と外を出歩くな」


「だそうだ。証拠はあるのか?」


「そ、そんなもん有るわけないだろ。わざわざ自分の物全てに名前でも書けって言うのか?」


「なる程。証拠は無いと。まあ言い分を聞くのはここまでだ。だが処分は始めから決まっている。お前らは全員1人罰金10万だ。払えない場合は強制労働だ」


「ば、馬鹿な。俺達は何もしちゃいねぇ。こんなのは不当だ。徒党がこんなふざけた管理で許されると思ってるのか?」


「馬鹿はお前らだ。喧嘩を売る相手を間違えたな。このガキは襲ってきた奴を何人も殺してる。しかも俺が声をかけなければお前ら全員殺されてたぞ?命が有るだけましだと思え」


「俺達がこんなガキに負けるはず無いだろ。例え人を殺した事があったとしても、こんなガキに負けるはずがねぇ」


「お前ほんと馬鹿だな。さっきこのガキはあの銃でお前を撃とうとしたんだぞ?だから俺達が仲裁に入ったんだ。しかもこいつは魔力持ちだ。一度暴れだすと被害も大きくなる。で、1人10万だ。直ぐに払えないなら直ぐに強制労働に連れていく」


「そ、そんな大金払える訳無いだろ」


「じゃあお前は強制労働だな。頑張れよ。連れていけ」


「くそ。ふざけんな。お前ら全員殺してやる」


「そうか。なら今此処で処分しよう」


パン


喚いていた奴は頭を撃ち抜かれて倒れた。


流石に容赦無いな。俺の頭も大分冷えた。俺も譲歩する必要があるだろう。


「で、お前はどうする?こっちとしてはお前が素直に払ってくれれば面子も立って穏便にすませられる。これはいわゆる迷惑料だ。流石に大通りで銃をぶっぱなそうとするのは見逃せん」


「俺は払っても良いが条件がある。流石に自衛する度に金を払っていたら切りがない。あんた達と一緒で一度払うと永遠に舐められて集られる。そうなる位なら全面戦争する方がましだ。お前らの要求は自衛するなと言ってる事と同じだからな」


「そうだな。お前の言い分も最もだ。ならまずはその条件を言ってみろ」


「まず前提として、お前ら徒党も魔力持ちと全面的に争うと被害が大きくなるから穏便に済ませたい。だが徒党の管理の為にも面子を潰されるのも困る。それで有ってるか?」


「そうだ。それで?」


「なら取引として、俺が相場で10万相当の依頼をただで引き受けよう。その代わりに俺の自衛としての殺しを黙認してもらう。勿論限度がある事も理解している。俺としてはマトモな取引が出来るならそれで良い」


「お前の言い分は分かった。少し待て」


暫く誰かに連絡しているようだったが、話が纏まったようで戻ってきた。


「取り敢えず今の所結論は保留だ。お前の実力もわからんしな。そこでお前との連絡手段が欲しい。携帯端末は持ってるか?」


「無い」


「なら今金があるなら俺からこの端末を買え。値段は安物だから一万で良い。登録は直ぐに終わる」


俺は一万を渡して、ハンター登録した時に作った口座を登録して回線が繋がった。


「分かった。これで良いか?」


「ああ。また連絡する。それから金があるなら出来るだけ早くちゃんとした端末を購入しろ。そいつは安物だから少しの衝撃でもすぐ壊れる。ハンター用の端末を買えば良い。ハンター事務所に行けば直ぐに買えるはずだ。それから大通りで銃を使うのは止めとけ。急に力を持った奴は大抵自制が聞かなくなる。最低限のルールすら守れない奴はその内社会から孤立して食べ物すら買えなくなり、人を殺して奪う道しかなくなる。こいつらのようにな。それでも生き残ったとしても、やり過ぎれば世界中のハンターから命を狙われる。まさしく破滅の道だ。それが嫌なら最低限のルールは守れ」


こいつらは俺について色々知っているようだ。だが、あえて何も聞かない事にした。聞いても無意味だし、質問する事で無知を晒し不利益を被る可能性があるからだ。この場合、俺が調べられた理由を知らない事、それを推察出来ない程短絡的な奴など、質問する事で相手に多くの情報を与えて、ますます此方が不利な状況に追い込まれる可能性があるからだ。だからこそ相手も情報不足で様子見する事にしたのだろう。


それから最後の忠告はかなり痛い所を突かれた。過酷な環境から解放されたことと、魔力を扱う力を身に付けた事と、魔力持ちを殺せた事により、自分でも気が付かない間に傲慢になっていたようだ。面倒だからと力で解決しようとしていた。こいつの言うとおり、その先には破滅への道しかない。


そうやってようやく解放されたが、目的の定期運航車両は午後からの出発分しか無い。取り敢えず赤字覚悟で少しだけでも狩場を体験して、今日の所は直ぐに帰ろう。


そうして何事もなく狩場に到着した。


モンスターが生息している領域は魔境と言われ、空間の歪みにより実際の広さよりも何倍も広くなっている。そして、そんな領域は殆どが旧文明の中でも重要な施設が残されている。


俺は地図を見ながら鉱物の採掘場所に向かった。


モンスターは銃も使わずに比較的楽に倒す事が出来た。流石に初心者が来るような場所で魔力持ちが苦労する筈がない。


採掘場で適当に採掘して、魔境独自の木や植物を集めて直ぐに乗り合い場に戻った。此処では安物の鉱石しか取れないらしいが、今の俺には実験に必要な大切な素材だ。


家に帰ると暫く実験の為に引きこもる事にした。







「今日から監視の網を増やしてたのが項をそうしたか。まさかこんな直ぐに問題を起こそうとするとはな。で、あのガキは今どこら辺にいる?」


「じ、実は少々問題のある場所に居まして」


「良いから早く見せろ」


端末を奪い発信器の場所を確認して固まった。


発信器が示した場所は、侵入すると誰も帰ってこられない事で有名な場所だったからだ。


「最悪だな。魔力持ちの上位ハンターですら帰ってこれなかった場所だ。よりによって何でこんな場所に住んでるんだ?このガキは一体何者なんだ?」


「そんな事俺に聞かれても。ただ話したかんじ、かなり異常な奴なのは間違いないです。大通りで平然と殺そうとした一方、話してみればかなり頭が良い事も分かるし、子供とは思えない程一見理性的にも見える。それに言葉を交わす度にどんな反応を示すのか観察されていた気がします。出来れば俺はもう関わりたくないですね」


「まあこの写真を見るだけでもその異常性が垣間見える」


そこに写された少年は、全て此方を見ている。いつ、何処で、どんな距離から写しても此方を見ているのだ。


「これだから魔力持ちは嫌いなんだよ」


「三橋さん、それに俺は含まれてないですよね?」


「勿論入ってるに決まってるだろ。この徒党に入った時の騒動、忘れたとは言わせんぞ?」


「そこを突かれると痛いですね。でも今は充分役にたってますよ?」


「それはお前も面倒事の処理をするようになってからだろ。人は苦労しないと学ばない奴が殆どだ」


「今ならその言葉、心の底から納得出来ます。立場が人を作るってやつでしたっけ?先人の知恵は凄いですね」


「そうだ。どんなに発展した文明社会でも、結局最後に方向性を決めるのは人間だ。そして基本的に人間は愚かな生き物だ。その証しに旧文明は滅んだ。それが全てだ」


「さすが苦労人の言葉の重みは違いますね」


「ならこれからはもっと真面目に働け」



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