第9話 アイドルとSNSで交流しちゃうぜ!
SNS審査が始まった1日目
「ん?『今日買ったチーズケーキが美味しかったです♪』この子すごく可愛いなぁ』
とある男がそのSNSに目をとめた。
そう。このトゥイートは先程合宿審査を終え自宅に着いたばかりの花が、早速SNSに投稿したのだ。
この男アイドルには全く興味がない水永亮という男だ。
生まれてこのかたアイドルなどというものにまるで関心がなかった。
趣味といえばもっぱらFPSゲーム
たまーに配信などをして遊んでいる。
軽く自己紹介すると
年齢は30代半ば。職業は無職。
趣味はライブ配信を観ること。
薄っぺらい人間のこの男のことを語るとすれば、まぁこんなところである。
ちなみに俺はトゥイッターや他のSNSでは
『RYOアズ』というニックネームで活動している。
「この子可愛いなぁ(*´˘`*)♡ゼッケンなんかつけちゃって♪」
なになに?この子は今アイドルオーディション中で、なにやらアイドルの卵みたいな感じなのか。なんか面白そうだ。
このアイドル候補生の花のたった一つのトゥイッターへの投稿により、ここから俺はたくさんのアイドル候補生達と関わっていくこととなる。
「花ちゃんか!なかなか可愛い子じゃん!」
他のアイドル候補生もみんな自撮りの写メをアップしていた。
思わず亮がトゥイートを覗き込んでしまったのはアイドル業界に興味が無いとはいえやはり男であるからであろう。
「ふーん、アイドルってこんなことやってんだな」
花のトゥイートや所属している運営会社のトゥイートを見ると、昨日までファイナルステージファーストと名付けられたオーディションの
合宿審査が終わって今日からアイドルの卵114人がSNS審査のトゥイッターへの投稿を始めたようである。
「しかもアイドル候補生114人が一斉にSNSのアカウントを使ってファンと交流するのか!面白そうじゃん‼️」
このアイドルの運営会社の公式ページには114人全員の画像付きプロフィールが掲載されているようだ。
俺が先程気になった花のプロフィールも掲載されていた
「さっきの子は~っと、、、おっ!この子だ!」
花21歳。
身長161.9cm、体重非公開
B83/W55/H82 趣味:ゲーム・カラオケ・アニメ鑑賞
好きなもの:オムライス・芋全般・チョコミント
性格:人見知りだが慣れた人には明るくて優しい。ツンデレなところもある。
「ふーん、こんな可愛い子をSNSで毎日見られるならフォローしてみるか」
そうして俺は花をフォローしてみた。
花はなにを投稿していいのか、どう応援してくれる方々とコミニュケーションしていいのかわからないようで不慣れなところもまた可愛い。
「今日買ったチーズケーキが美味しかったなぁ♪こんにちは花です(*^^*)
1位を獲ることは出来ませんでしたが
笑顔でパフォーマンスできて楽しかったです!Dチームらしくできたと思います!」
俺が初めて見た花の投稿はこんな感じだったと思う。
「1位を獲ることができなかったって、、、
なんの事だろう?」
この花のトゥイートを見つけてから10分くらいの間にもうすでに興味津々な俺は、運営会社のホームページやらトゥイートをもう一度読み直してみた。
すると、このSNS審査が行われる前に合宿審査というものが行われ、そこで1グループ14人程度の8グループでグループ単位の審査が行われたようだった。
ちなみにこのオーディションは、第1オーディションを経て、それに合格したものがファイナルステージに進み、ファイナルステージファーストの合宿審査とSNS審査に合格するとファイナルステージセカンドに進出。そしてそのセカンドに合格したものだけが新アイドルグループのメンバーになれるっていう4月から10月にかけて半年間も行われる大規模なオーディションなんだって。
そのファイナルステージファーストのSNS審査が今のこの114人のアイドル候補生によるトゥイートなのだということがわかった。
さらにこのオーディションのことをもっと深く知るために俺は公式YouTubeも観てみた。
するとそこには彼女達の合宿審査中の様子や必死に練習をする姿、グループごとの紹介動画などが映っていて、俺はものの数分でこのオーディションの概要を理解することができた。
気になることはとことん納得するまで調べてしまうのがB型なのである。
「Dチームって可愛い子ばっかりだな」
俺もアイドルにリプ返なんてしたことがなかったものだからなんとコメントしていいのか分からなかったが、
「チーズケーキがケーキの中で2番目に好きです!僕はDチーム並びに花ちゃんを応援します!」
とコメントしてみた。すると
「コメントありがとうございます!わかります!美味しいですよね!
嬉しいです!これからも応援よろしくおねがいします!」
と花からすぐに返事が帰ってきた。
俺はアイドルとの交流なんて初めてなものだから戸惑いながらも嬉しい気持ちで変な感覚だった。
でも芸能人??とSNSで会話などしたことがなかった俺は
「ほんとに返事返してくれるんだな」
と、なにより驚きの方が嬉しさよりも上回っていた。
花は花でネットでファンがついたことに驚きながらも嬉しかった。
「私なんかコメントなんてこないと思ってたけど見てくれてる人がちゃんといてくれてるんだ!」
それから花は毎日トゥイッターに自分の普段のファッションや昼食風景だったり自己レッスンなどを投稿した。
「今日もお疲れ様です」
『お仕事頑張ってくださいね』
「応援してます!」
絶対リプを返してくれるこの子、マメだな
俺はそんな花に好感を持った。
そして花とトゥイッターのやり取りをしていくうちに、花がどんな子なのかわかってきた。
花は人見知りで緊張しやすいが、慣れてくると人懐っこい性格だ。
また、オムライスが好きでカラオケも好きだという。まぁ公式のプロフィール通りである。
『今日オムライス食べたから花ちゃんにもおすそ分けします』
『花ちゃんが好きって言ってたアニメ見ました♪』
そんなメッセージを送ると花は喜んでリプをくれる。
『観てくれたんですか!どうでした!?』
「ふーん、この子、本当に可愛いなぁ」
そんな花のSNSでの投稿にファンの方達がコメントをしていくので亮はそれを眺めるのが日課になっていた。
ちなみにこのSNS審査は10月の頭まで2ヶ月続くようだった。
ということは、オーディションに受からなければ2ヶ月でこの子のSNSも消えてリプで絡むことができなくなるということか、、、
これは一生懸命応援して花ちゃんにいっぱい票を投票して必ず最後まで残ってもらわなければ!