第2話 1次審査オーディション
そして今日この会場に来ているわけだけど、
1次審査は100人くらいがひとつのホールに集まって、このオーディションの説明を受ける説明会のようなものだった。
説明会に参加=オーディションに参加みたいな感じで、家に資料を持ち帰り、私は穴があくほどその資料を読み漁った。
第1オーディションの流れ的にはこうだ。
1次審査に合格すると、そのまた半月後くらいにリモートで2次審査を受けた。2次審査は意気込みや志望動機、家族構成などを審査員の方に聞かれた。いわゆる面接みたいな感じかなぁ。
ちなみに1次審査会場ではスカウトも行われていたらしく、スカウトされた女の子は1次審査並びに2次審査を飛ばして3次審査からの参加になるようだった。
私は2次審査も難なく受かり、3次審査に進むことができた。
3次審査にまでなると女の子の見た目やパフォーマンスのレベルがかなり高くなる。
なんせ1次審査で人数が減らされ、さらに2次審査でまたかなりの人数が削られ、3次審査になる頃には周りを見渡すとビジュアルが良いのが当たり前の世界になっていた。どこもかしこも可愛い子しかいない状況になり、目の保養が嬉しい半面私は正直焦った(•ᴗ•; )
でも審査員含めたスタッフさん達がとても温かく、準備してきた自己PRを存分に出すことができた。
花もまわりから見た目は可愛いとは言われるものの、歌もダンスも初心者。
インフルエンサーのようにSNSでたくさんの人になにかを発信してるわけでもなく、可愛い以外にこれといって目立った突出した才能があるわけでもなかった。
「ピアノは小さい頃からやっててできるけど、ピアノはやってる人多いだろうしなぁ」
3次審査のパフォーマンス審査では再び1次審査の時のホールに集まり特技や趣味を披露した。
私はまず得意な折り紙で鶴を折ってみる。
すると審査員からは拍手が起きた。
あとは、秋山智さんがプロデュースする大好きな茂木坂さんへの愛なども語ったりした。
審査員の方の中に同じ茂木坂ファンの方がいて、すごく和やかな雰囲気で審査を終えることができたのがすごく嬉しかった- ̗̀ ( ˶'ᵕ'˶) ̖́-
よかったぁ!私でも特技があるんだなぁ。
こうしてなんとか3次審査が終わりホッと胸を撫で下ろした。
そしてこれに受かるといよいよ4次審査に進むことになる。
私は後日来たメールの合否発表で3次審査も受かることができたので、次の4次審査に進出することが決まった。
「花すごいじゃない!次の4次審査に受かれば
1万人中の114人に残るわけでしょ!?」
お母さんが驚いた様子で興奮気味に私に言った。
でも私はあの3次審査の現場で見た状況を知っているからすごく落ち着いていてそんなに喜べる感じではなかった。
「もし114人に残れたとしてもアイドルグループのメンバーになれるのは7人~11人なんだよ?
お母さんは3次審査の会場を見てないからそんなこと言えるんだよ( ˘•ω•˘ )」
「みんな可愛いのは当たり前。なにか特技があるのも当たり前、歌やダンスだってレベルが高い人ばかり。ここまで来れただけでも奇跡だよぉ~」
「なーに言ってんの!あんたには専門学校で培った服飾の才能があるじゃない?洋服のデザインから作成まで出来るアイドルなんてそうそういるもんじゃないと思うけどね~」
そうだ!私には専門学校で学んだデザインがある!
これは私がアイドルになりたい志望動機でもあるのだが、中学生の時にアイドルさん達のキラキラした可愛さに目を奪われてからずーっとアイドルが大好きで、いつしか自分もなりたいと思うようになった。
でも自分がアイドルになんてなれるわけがないって思って、アイドルになりたいっていう自分の気持ちに蓋をしちゃったんだよね。
それから私はもう1つ大好きな趣味であるファッションの道に進もうと思ったの。
それで服飾系の専門学校に行くことを決めて通ってたんだけど、ある日実習でアイドルの衣装をスタイリングする現場に行くことになった。
その現場で見たアイドル達はすごくキラキラして輝いていて、あの中学生の時の自分の
『アイドルになりたい!!』
って気持ちが蘇ってきて爆発して溢れちゃったんだよね!
それで今回雑誌の記事にオーディションの記事を見つけた時はすぐに応募しよう!って思ったの。
今はもしこのオーディションに受かってアイドルになれたら、アイドルになった自分の着る衣装を自分で作ってみたいという夢もあるんだ!
「お母さんありがとう!!」
私は4次審査の自己PRに自分が今まで作った衣装を何着か持っていくことを決めた!
そして4次審査当日。
4次審査は歌を披露する。
私は緊張はしていたが期待で胸を踊らせていた。
私の順番が近づき、審査員の前に並ぶと司会者の方に名前を呼ばれステージの上へ上がるように言われた。
「ではエントリーナンバー5番、佐藤花さんどうぞ。」
私は緊張の中なんとか普段通り歌いきる。
そのあと準備してきた自作の洋服や大好きなアイドルの衣装をオマージュしたものなど、自分の用意してきた自己PRを精一杯披露することができた。
これでとりあえず第1オーディションは終わりだ。
結果は後日連絡が来るらしい。
これに受かればファイナルステージに進むこととなり、受かった子達ととある施設での合宿に入る。合宿に入れるのは1万人の応募者の中から第1オーディションの1次審査~4次審査までを勝ち抜いた114人。
合宿では毎日厳しいレッスンが行われるらしい。
正直自信はないけど、もし受かっていたなら自分にできることを精一杯やろうと思った。
それからまたまた時間が流れ
1週間程たったある日。
親友とオムライスを食べに行く約束をしていた。
やっぱ親友だし言わなきゃだよね、、、
注文したオムライスを待っている間ドキドキしながら口を開く。
「ねぇ、私アイドルのオーディション受けるの」
それを聞いた親友は一瞬固まったものの
「え!そうなの!?応援する!!」
親友は笑顔で答えてくれた。
「でもこの間オーディションに行ったんだけどさ、、、すごい人の数だった、、、可愛い子も沢山いてさ、、私正直自信ないよ( ・᷄-・᷅ )」
「そんなの花だって可愛いし!私は花ならアイドルになれるチャンスだと思うけどな!このオーディション!!」
「ダンスも歌も初心者の私がぁ?」
「それもさ!この私がついてるんだよ?
わ・た・し・が!!」
そうだった(¯∇¯;)何を隠そうこの親友は小さい頃からダンススクールに通い、文化祭やコンクールなどで優勝してしまうくらいダンスが上手いのだ。
「じゃあ、由美香がダンスの特訓に付き合ってくれたりするの?」
「なにいってんの!?あったりまえでしょーー!!親友がアイドルになれるかなれないかの大切な時に私に何もせずに指くわえて見てろってーの?」
「ホント!?由美香が特訓してくれたらダンス絶対上手くなる自信ある!ありがとう!!」
「アイドルになるという事はプロになるってことだから、厳しくいくからね( ≖ᴗ≖)ニヤッ」
「ひぇ(•ᴗ•; )お、お願いします笑」
それまで私は少し不安だったけど親友にそう言って貰えて自信がついた。
それから1週間後、4次審査の結果発表の日がやってきた。
ドキドキしながらパソコンを開くとそこには合格の文字があった。
やったー!!受かったんだ!!嬉しい!!
ただわかっていたとはいえ、いざ『合宿審査』の文字を目の当たりにすると一気に緊張感が足先から頭の先まで走り抜けて行くのがわかった。
第1オーディション審査に受かるとそこからはファイナルステージとなり合宿審査が5日間行われるらしい。だが喜んだのもつかの間。実はここからが本番だったのだ。