表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

エビルマウンテンらぁめん魔竜級

 人生は長い。とりわけ、人の身のまま二百年以上も生きていると、その長さは退屈となって精神にのしかかってくる。

 耳長たちのような長命種はどのような精神構造でこれに耐えてるのか不思議にすら思えてくるが、そういった思索を巡らすのもとうに飽きた。



 老いに悩まされることのない肉体も考えものだ。

 まともな人間は二百年も生きれば相応に老人の精神を獲得し達観の域へ辿り着くだろうが、不老の身では精神は老成せずすり減るばかりで、その減った分を埋めなければと焦燥するように娯楽への欲求が高まっていく。

 魔女はこうして、少しずつ壊れていくのだろう。


 心が壊れているから魔女になるのではなく、魔女になったから心が壊れるのではなく、人の心がそもそも脆いのだ……とは、先輩の言葉だったか。その証拠に定命の者だってたまに壊れるだろう、と言われれば納得するしかなかった。

 魔女は退屈で人をやめていく。

 北方の国を一つそのまま氷に閉じ込めた魔女も、南西の己が縄張りを地獄に変えた魔女も、元は私のように大したことのない、普通の人格であったのかもしれない。


「ヘイらっしゃい!」


 長き時間に耐えてなお精神を正常に保ちたいのなら、心のケアは大切だ。潤いがなければ干乾び、簡単にひび割れてしまう。

 だから退屈に抗うため、魔女は娯楽を求める。私もその一人だった。

 まあ……そうした魔女は己の娯楽を充実させるために魔法を究めるようになり、やがてはその娯楽の名で呼ばれるのだけど、魔女としてはまだ若年のわたしにそんな名はまだ不相応だし、そんなものはいらないと思っている。


 操人形師、舞台演者、大図書館、剣戟、赤薔薇、星詠み。名だたる魔女は数あれど、そこに私が並ぶ日は来ないだろう。

 そう。


「エビルマウンテンらぁめん魔竜級。野菜マシマシにんにく魚粉カラメで!」


 食べ歩きの魔女だなんて呼び名、絶対に私は認めないのだから。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ