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金髪長髪の男は嫌なの!!

「おやすみなさいませ、アウラお嬢様」

「ん。おやすみ」

 なんだかんだと忙しい1日を終えて、ようやっと就寝時間を迎える。

 ていうか貴族のお嬢様って、暇なようでやたら忙しいのね。


 ちなみに私は今、ん10年ぶりに学校へ通っていた。


 ヴィアトリカ王立魔法学園


 それは貴族子弟が通う王立の学園であり、様々な学問を学べるのはもちろんのこと、社交界デビュー前の貴族子息・令嬢にとってのミニ社交場のようなものでもある。


 前世の記憶を思い出した直後は、やり直し人生なんて面倒臭い、とうんざりしてはいたものの、再びこうして学問を学べるのは実のところちょっと嬉しかったりもした。

 何故なら、前世での私は、高校卒業してすぐに就職してしまったからだ。


 本当は大学か専門学校へ行きたかった。

 漫画を描くのは好きだけれど、だからと言って職業に出来るほどの実力はなかったから。それならせめて、漫画雑誌の編集者になりたかったのだ。


 けれど父母にこれ以上の負担をかけることも、奨学金と言う名の借金を背負うのも嫌だった。

 

 かといって働きながら学校へ行けるほど器用じゃなかった私は、ささやかな夢を諦めて仕事に就き、時折、同人誌などを作るなどして、そこそこ長い62年の人生を平凡に生きることになったのである。


 そんな前世の生き方を後悔してはいないが……


 それでもやはり私には、色々な知識が足りなかったと、高校を卒業してつくづく思ったのだ。

 生きている間に、もっと踏み込んだ勉強をしてみたかった。例えばそう、趣味にも生かせるような。


 そんな心残りがあったからこそ、こうして転生した今、再び何かを学べる機会を得られたことが格別に嬉しかったのだ。


 いやあ、学校って楽しいね。


 今みたいな心持ちで学校へ通えていたなら、私の平凡な前世もなにかが変わっていたかも知れない。


 もちろん、そんなことくらいで劇的に変わるなんてことは無かったとは思うけども。


 という訳で私は今、毎日がとても楽しい。


 前世ではひたすら放課後が待ち遠しかったのに、今では授業が終わると図書室に入り浸って本を読んでいたりする。なんていうか、新しい知識を覚える楽しみに、日々が物凄く輝いて見えるのだ。


 学校が無い日や放課後は、お茶会やら、王妃教育やら、面倒臭いことが待ち構えてるけど。


「王妃教育さえなかったら、もっと時間が有意義に使えるのにな…」

 やはり婚約破棄して貰わねば。

転生後の楽しみを覚えた私は、改めてそう感じた。


 という訳で1日を大変忙しく過ごして疲れ切ってはいたが、寝る前に少しこの間の続きをやろうと私は机の上に紙を広げる。


 前回は国と世界、そして神女についてまとめたが、今日は人物についてまとめてみよう。


 まずは私、アウローラ・リズ・オイレンブルク公爵令嬢について。


 愛称はアウラ。金髪・碧眼で、自分で言うのもなんだけど、そこそこに美少女。

 前世の記憶を思い出した途端、悪役令嬢の性格が変わる──というのは転生物ではよくある設定だけど、あいにく私にはこれといった性格の変化はないみたいだ。

 何故なら、これまでの記憶を思い返してみてもアウラと言う少女は、地味目で大人しく控えめで、あまり社交的ではない前世の私の性質を、まんま引き継いでしまっているようだったから。


 おかげさまで学園での評判は特に悪くない。

 公爵令嬢なのに驕りが無く、傲慢でも我儘でもなく、高飛車な性格でもないからだろう。


 まあ、誰かといるより1人でいる方が好きなせいで、友達めちゃくちゃ少ないけど。


 それにしてもふと思ったが、こんな地味な性格で悪役令嬢になれるんだろうか??

 我ながらちょっと不安になってきた。


 次なる人物はリュオディス・アルト・スティクレール

 この国の第一王子にして王太子、そして私の婚約者でもある。


 美しい金の髪と王家の血を現す紫の目、かなりの美形でその上文武に秀でてる完璧な王子さま。もちろん女にモテモテ。彼がひとたび王子様スマイルで微笑めば、歓喜のあまり失神者だって出ちゃう。前世で言うところのスーパーアイドルかな。


 私の趣味じゃないけど。


 そう、こんなこと本人には言えないが、実は私、長髪の男ってちょっと苦手なのだ。

せめて結んで欲しいけれど、彼は腰まである長髪をそのまま流している。


 それでなくても金髪の男は好みじゃないのに。

 

 いや、見た目だけで判断するのは良くないと思ってる。

思ってるけどやっぱりどうしても、気持ち悪いなって思ってしまうのだ。


 こればかりは性癖なので赦して欲しいが、元来、私は黒髪で短髪の男を好きになりやすい。


 ただしそれらはすべて、二次元の男の話である。


 ぶっちゃけて言うと前世では、リアルの恋愛経験がほとんどなかった。

 アニメや漫画のキャラクターに惚れることは多々あっても、現実の男に惚れたことがなかったのだ。

 ほんのり気になる男性が居なかった訳でもないが、アプローチなど考えることもしないまま終わったし、気の置ける男友達すら1人も出来なかった次第だ。


 それなのに転生してみたら、婚約者がいるという衝撃。


 自分で決めた訳でもないから、相手に対する恋愛感情もない。


 確かに王子は顔が良いし、頭も良いし、誰にでも優しいと評判だ。

 でも、婚約者である私に対しては、あんまりそんなそぶりを見せてない。


 しかも6歳の頃から婚約者として決まっていたのに、私と彼はほとんど交際してないというか、共通の思い出が無いというか。そもそもあんまり一緒に居たことがなかったのだ。

 おかげで私には王子のことが良く解らない。


 きっと王子も無理矢理決められた婚約者の私が嫌なんだ。

 だから私が悪役令嬢になって、彼が真の愛を見付けてくれれば、きっと喜んで婚約を破棄してくれるに違いない。


 人に意地悪するとか、面と向かって嫌味を言うとか、私の性格上かなりハードル高めだけども。


 しかし、諦めてしまっては、私の望む楽隠居生活は掴めない。


 頑張って意地悪しよう。嫌味も言えるようにあらかじめ考えておかないと。

などと、決意を新たにしていると、コンコンとドアが軽くノックされる音が聞こえてきた。

「アウラお嬢様、まだ起きていらっしゃるのですか?」

「あ、に、日記書いてただけだから、もう寝るわ」

 明かりがついてることに気付いたメイドが、ドアの外から話しかけてきたので慌てて明かりを消す。


 速やかな婚約破棄と、楽隠居のための計画。


 それはまだどうしたら良いか、具体的には解らないままだけど、こうして紙に書いてる内に少しずつ、問題点や今後の課題が見えてきた。

「頑張らなきゃね……」

 大きすぎる天蓋付きベッドへ潜り込みながら私は、この調子で明日も頑張ろうと気合を入れつつ眠りについたのだった。

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