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ペットとしての魔物

「何を真剣に考えてるんだい?」

「え??」

 図書室で魔物に関する本を読んでいたら、急に背後から声を掛けられた。聞き覚えのある声。っていうか、何故ここにいる婚約者!?

「いや…あの…ちょっと魔物を手懐けたいかな?と思いまして」

 馬鹿正直に考えを口にしてしまって秒で後悔した。が、すでに手遅れだ。物凄い解り易い顔で婚約者…王太子リュオディスがその場で凍り付く。うーん。なんか、ごめん。美形なのにそんな間抜けな顔させちゃって。

「魔物を……なんだって?」

「猫を…えと、この魔物がですね…可愛いのでお家で飼いたいなぁって」

 改めて問い質されたので、開いていたページを殿下に見せた。そこには直立歩行する猫…こと、ケット・シーの絵図が解説と共に載っていた。

「魔物が…なんだって…?家で…飼いたい……?」

「え…と…でも、コレ可愛い…ですよね?」

「これが……?」

「……か、可愛くない………かしら??」

 割と可愛いと思うんだけどなぁ。直立猫。そりゃ、猫にしてはデカいけどさ。

「……………うーん」

 私の発言を耳にして、ますます殿下の顔が美形の名に相応しくなくなる。けど、なんかこういう顔も出来る方が、愛嬌があっていいなと私は思った。だって完璧すぎると引いちゃうけど、少し間が抜けたとこあった方がなんか可愛いものじゃない??

「ううーん………」

 魔物を飼うなんて無理に決まってる。

 そう、頭から否定されるかと身を縮めていたら、何故か殿下は真面目に考え始めてしまっていた。

「………殿下?」

 何を考えてるのかと思ったら、魔物を使役する方法が…とか、従属させるには…とか、小声でぶつぶつ呟いていたから、どうやら私の望みを叶える方法を思案してくれてたらしい。


 え、なに??ちょっと、良い人だな!?殿下!?


 ゲームではほんの序盤から婚約者の私に冷たかったから、てっきり元から嫌われているものと思っていたんだけど。数日前のヒロインとの邂逅シーンにおける公正な対応といい、ひょっとして殿下って常識人で優しくて良い人なんではなかろうか??

「あの…殿下、そんな真剣に考えなくても…」

 あまりにも真剣に考えこんでる様子が申し訳なくなってきたので、私は『これは冗談なんです。ちょっとした思い付きで言ってみただけですから』とそう殿下に言い、多少強引ではあるがこの話題をここで終わらせようとした。

「………冗談…」

 だが、そんな私の言葉に、リュオディス殿下はキョトンとした顔で、

「でも、アウラは、この魔物を可愛いと思ってて、そして、出来ることなら飼いたいんだろ?」

「…………ッッ」

 ふわり、と、優しく微笑んでくれたのだ。


 うひゃああああーーー!!??


 さすがメイン攻略キャラ!!


 この女たらしめ!!!!


 圧倒的な恋愛経験不足で、男子に免疫もない喪女な私の心臓に悪いわ。この男。いやマジで。


「……殿下は、なにか方法をご存じで?」

 ぶわっと込み上げてくるこっ恥ずかしさを、私はこっそり尻を捻ってその傷みで紛らわした。でもなければ真っ赤になって、ろくに口もきけない状況になっていただろう。

 さすがにそんな初心な女の子みたいな状態を見せるのは嫌だ。この年になって──って、いや、そりゃ確かに、今は16歳なんだけどさ!?

「いや…解らない。でも、王室の図書室になら、なにか手がかりがあるかも知れないね」

 調べてみるよ。そう言って殿下は再びニコリと笑った。

 途端に周囲へ振り撒かれる、キラキラ王子様パワー。


 うーん…つくづく美形。さすが乙女ゲーのヒーロー。薔薇が似合う。

 残念だなぁ。長髪でなければ、彼の顔は、まあまあ好みと言っても良かったのに。

 ──そ、長髪でなければ、ね。

 本当に勿体ない。

 バッサリ短く切ってくれればいいのに。

 それか、せめて髪は結んで欲しい。

 そしたら正面から見れば短髪に見えるのに。


 などと、呑気かつ無関係なことを必死に脳内で考えながら、殿下のキラキラ微笑みパワーに最後まで耐え切った私だった。


 つ、疲れた………。

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