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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
ボーンネルの開国譚2
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ゼグトスの仮説

「なんか外がいきなり静かじゃねえか?」


「ええ、どうやらパールさんの魔法で敵の敵戦力の大半が削られたのかと」


そう会話をする二人の前でガメルは先ほどからどんな攻撃手段も一切通じず何やら平然と会話をしながらいる二人に苛立ちが込み上げていた。


(クソっ、バケモノどもが······)


「おい! 二階と三階にいる魔物達を連れて来い!! 全員でこの忌まわしい奴らを潰せッ!」


しかしそのタイミングで外に出ていたグラトンが百鬼閣の中へと入ってきた。


「ガメル、もういい。これ以上の争いは無駄だ」


「ぐ、グラトン様。どういう意味ですか」


グラトンは後悔を含んだような顔で大きく息を吸うとゆっくりとトキワ達のいる方へと歩いてきた。

そして目の前まできて立ち止まるとイッカクやエルム、メルト達に向かって深々と頭を下げた。


「今まですまなかった。俺たちが間違っていた」


「なっ」


その姿を見て兵士たちも、ガメルもそれにエルム達も驚いた。


「ん? どういうことだ?」


グラトンは深々と下げていた頭を上げ、真っ直ぐと前を向いた。そしてその顔は何かを決意したようでそこに一切の翳りなどが感じられなかったのだ。


「先程、クレース殿という方から全て聞いたのだ。俺たちが何の罪もない鬼族のもの達を罪人として扱い、無理矢理に元いた土地から追い払ったという事実を。知らなかったという言い訳は通じないと分かっている。だからもう俺に戦う意思は無い」


「やっぱりお前もそういうことだったか」


「な、なぜ敵のいうことなどを聞くのですか。嘘をついて、こちらを混乱させようとしているやもしれませんぞ」


しかしグラトンは大きく横に首を振った。


「相手は殺そうと思えば我らのことなど一瞬のうちに殺せた。しかし殺すどころか、我らのことを守ってくれたのだ。それに今、負傷した兵士たちのことを治療してくれている。そんな方々が嘘をついているなど誰が言えよう」


その言葉にガメルも押し黙った。

骸の王と骸骨兵達を一掃した後、クレース達はこれ以上の争いは無駄だと言い、負傷した兵士たちの治療を行なったのだ。

魔力が尽きてしまい、ぐったりとするクシャルドにはパールが魔力を与え、地面に埋められていた兵士たちは全員ボルが地上まで引き上げたのだ。


「我らが敵対すべきはヘリアルだったということだ」


「······」


しかしそこにヘリアルと分かれて百鬼閣の外から飛んできたアイルベルが入ってきた。


「何をやっているのですか。早急に侵入者を抹殺しなさい」


しかしながらアイルベルの命令に兵士たちの誰も動こうとはしなかった。ただ、アイルベルのことを見つめて兵士たちは押し黙った。


「アイルベル、今の話が聞こえていただろ。お前もヘリアルに騙されているのだ」


しかしその言葉にアイルベルは不敵な笑みを見せる。


「いいえ、私は騙されてなどおりません。騙されていたのはあなた達の方ですよ」


「なに? どういうことだ······まさか、お前は知っていたのか?」


「ええ、もちろん。途中からここに来たあなたは知るはずもありませんが、10年前ここにはかなりの数の鬼族がいましたからね。邪魔だったのでほとんどを殺してしまいました。ですが、これはヘリアル様が力を手に入れるのに必要な犠牲でしたから、仕方ありません」


「貴様ッ!!」


グラトンは怒りの感情を抑えきれず、アイルベルに切りかかった。


「残念です」


しかしグラトンの一太刀は空を斬り、翼を生やしたアイルベルは空中に飛んだ。


「お前達、ここにいる敵を全員殺し尽くせ」


アイルベルがその言葉を放った瞬間、その場にいた兵士たちの瞳から光が消えた。


「おい、お前達どうしたんだ」


そしてその瞬間、まるで自我を失ったように兵士たちは暴れ出す。


「おいおい、マジかよ。正気じゃねえなこいつ······どうしたゼグトス?」


そんな中、ゼグトスは一人難しい顔でこの鬼幻郷に来てからずっと疑問に抱いていたことを考えていた。


「どうやら、あの者は何者かに魔法で幻を見せられた痕跡があるようですね」


ゼグトスはアイルベルだけではなく、鬼幻郷に来た時から集落の皆達からも幻をかけられている痕跡を発見していたのだ。そして、その頭は高速で回転し、ある仮説を立てた。


「なるほど······これは大変興味深いですね」


「まあお前の考えてることはわかんねえが取り敢えずエルム達を守れよ」


「はい、ご心配なく」


「兄ちゃんッ!!!」


そんな中、一階層に誰かの声が聞こえてきた。


その声を聞き、メルトは振り返った。10年もの月日が経っても1日たりとも忘れたことがなかった存在をメルトは感じ取ったのだ。


「キルトッ!!!······」


メルトはすっかり大きくなっていた弟を見て、周りの状況など考えることもなく走り出した。

二人は近づくにつれて両者の目からは涙が溢れ出し、気づけば抱き合っていた。


「キルトッ······大きく、なったな」


「兄ちゃん······ずっと、会いたかった」


「お、おめえはキルトか!? どうしてここに!」


「イッカクさん! お久しぶりです。······その、僕たちは捉えられて牢獄に入れられてたんですが、途中から見張りの人の様子がおかしくなって、牢屋の鍵が開いているだとか、僕たちは目の前にいるのに一人もいなくなったなんてことを言うんです。そしたら突然、目の前にシキさんが現れて牢屋の鍵を開けてくれたんです。それで見張りの人はまるで僕たちのことなんか見えてないみたいだったからそのまま出て行って····」


(なるほど、ですがその場合······)


ゼグトスはその言葉を聞いて迫ってくる兵士たちを気絶させながら再び考え込んだ。


「お兄ちゃんが!?」


「エルムちゃんか! 大きくなったね。そうだよ、シキさんが助けてくれたんだ」


「どういうことだ? シキは裏切ったんじゃねえのか」


「えっ? シキさんはそんなこと絶対にしないよ。だって現に僕たちのことを助けてくれたんだから」


「待ちやがれ!」


そんな時、アイルベルはその場から外へ飛んでいった。

操られず自我を保っていたグラトンは追いかけようとするが、兵士たちが波のように溢れ返り身動きが取れないでいた。そしてゼグトスは確定的ではないが、起こり得る最悪の可能性を予想し、最善策を考えついた。


「トキワさん。魔力波でクレースさん達に至急連絡を」


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