加速する戦場
「何か見えてきた」
百鬼閣に続く地下道をしばらく歩いていたジン達の前にはようやく出口へと続く光が見えてきた。
「何人かいやがるな」
光の元へと近づくにつれて何やら慌ただしい足音が響く。
ドンドンという騒がしい足音に加え、部隊に指示を飛ばす声が地下にまで響く中、一つの気になる声が聞こえてきた。
「おい! 人質はどこにいきやがったッ!」
「おっ、敵の奴らは人質見失ってやがんのかよ」
「ちょっと覗いてみるね」
ジンは小さな隙間から地上の様子を静かに覗いてみた。
(数は······かなり多い。エルムたちを連れて行くのは難しいかな)
「ここから出るとかなりの数に囲まれる。他の道から行こ······」
ーその時、上から響いてくる騒がしさを打ち消すような轟音が地下に響き渡った。
まるで地震が起こったと錯覚するような轟音に思わずエルムは腰を抜かす。
「な、なんだッ!?」
その衝撃に地下の天井は揺れ動きボロボロと土が落ちてきた。
「なんだ······この妖力····」
メルトは感じ取った妖力に驚き、鬼族の三人は頭を抱えた。
「クソッ、強力すぎて俺らの妖力に干渉しやがる!」
「待ってて、リムーブ」
ジンの手からは明るい色の波動が流れ三人のことを癒した。
「すまねえ」
「ありがとう! ジンお姉ちゃん」
「大丈夫だよ、安心して。これは····閻魁かな」
「そうですね、おそらくもとの力を取り戻されたのかと」
「でも、なんか変だな いつものあいつとは違う感じがしねえか?」
「はい。閻魁さんはもっと優しい妖力でした」
「······ここから上がろう。今は敵も混乱してるから、エルム達を守りながら慎重に。それと向こうから攻撃してこない限りむやみに攻撃しちゃダメだよ。きっとガルミューラさんたちみたいにいい人もいるから」
「かしこまりました」
「さすがジン、分かってるな」
「よし、行こう」
そして一階へ静かに出ると、辺りはまさに混乱の極みという状態であった。
至る所から爆発音が聞こえ、敵の混乱に満ちた声が空間を満たす。
「おい! 敵は何人いるんだよ!?」
「なんなんだよあの女ッ!」
百鬼閣の一階ではガメルという獣人族の男が指揮を取っていた。
「怯むな! 溜めていた魔力を全て消費しても構わん! 魔法部隊と連携して数で潰せ!」
「報告! 魔力部隊が壊滅! これ以上の魔力供給は不可能です!」
「なにッ!?」
(敵は二人だぞ、それに先程の爆音はなんだ)
「報告! ギルバルド様の機械兵が準備完了致しました。すぐにでも発進可能とのことです!」
「おお、それは心強い!」
「全然、気づいてないね」
「ジン様がせっかくお姿を現されたというのに。無礼な者達ですね」
「あいつらの言ってる機械兵ってなんだ?」
「ギルバルドっていう機械野郎のものだ。大量の機械兵っていう兵器を作って昔俺たちの仲間を何人も殺しやがったクソ野郎だ。もし何十体って数がいるならここは一瞬で火の海になるぞ」
「誰だお前達は!?」
「やっとかよ」
ガメルはようやく近くにいたジン達に気づきその声で辺りの視線が集まる。
そして同時に近くからぞろぞろと援軍が現れてきた。
「きたぞ! これで終わりだ。コイツらもやっちまえ!」
一見、人に見えたその軍隊は人の形を模した機械兵達だった。
現れた機械兵達の外装は滑らかでその動きはまるで本物の人間のようであり、顔を見ない限り判断できないほど精巧に作られていた。
「「削除対象発見。安全装置解除、破壊システム起動」」
機械兵はジン達を発見すると目を赤く光らせてその右手からはレーザーの剣、左手は変形して銃口が現れた。
「初めて見るな、あの機械兵は」
「行け機械兵! 標的を抹殺しろ!!」
ガメルの声に続いて機械兵達は一斉に左手の銃にエネルギーを溜める。
「危険 危険 ターゲット一体の抹殺を最優先」
機械兵達は警告音を鳴らしながらジンの方を向いた。
「エネルギー装填完了。標的への攻撃を開始」
その声とともに数十体もの機械兵から一斉にエネルギー弾が放たれた。
放たれたその弾は一点に集まると融合し、ジンの元へと一直線に飛んでいく。
「ロード・オブ・ヴォイド【虚無の王】」
しかしエネルギー弾は爆発もせず、辺りに一切の被害を与えることなくその虚無空間へと消えていく。
「はぁ!!?」
「ジンお姉ちゃんすごい!!」
「攻撃の無効化を確認。近接戦闘に移行」
「小賢しいですよ。鉄屑ども」
ゼグトスが指をパチンと鳴らすと機械兵達の目の光は消えて、突然にして動きを止めた。
「少し配線を切っただけなのですが。期待はずれですね」
「私は閻魁のところに行ってくる。多分ここの方が安全だからエルム達を任せていいかな」
「はい。お任せください。おそらく閻魁さんは最上階のあたりかと」
「わかった、気を付けてろよジン。俺たちは人質を探しとから、閻魁は頼んだぜ」
「ガル」
「バウッ!」
ガルは巨大な狼の姿となりジンを背中に乗せる。
「おいおい、なんでもありだな」
「エルム、二人から離れちゃダメだよ。その二人と一緒にいれば安全だから」
「ジンお姉ちゃんも······怪我しないでね」
「うん。また後で」
そしてジンはガルに乗って上階へと向かっていった。




