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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
ボーンネルの開国譚2
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黎明


ヒュード族の魔法により谷を超えた後、ギーグで見られたような竹林の中しばらく歩くとようやく開けた道が見えてきた。


「あれだ、見えてきたぞ。······何年ぶりに見る光景だ」


そう言ってイッカクが指した方角にはかなり遠く離れた場所からもハッキリと見える巨大な百鬼閣があった。百鬼閣は昔から鬼幻郷を象徴する建物であり、以前から住んでいた鬼族の者にとっては思い入れのある建物なのだ。しかしながらそこからは以前とは違う物々しい雰囲気がありエルムは思わず足がすくんでしまった。


「でもよ、イッカク。昔は周りにあんなの無かったくねえか?」


目の前には百鬼閣の下の部分が隠れるように巨大な城壁が張り巡らされ、そこには多くの見張りの者がついていた。


「10年掛けてあんなでけぇもん建ててやがったのか、クソッ」


「それに、こうも視界が開けてると近づきにくいな」


ジン達が立っている場所からその城壁まではかなりの距離があり、その間は草原が広がるのみで何も身を隠すような場所がなかった。つまり百鬼閣に攻め込むにはどうしても敵の視界に入ってしまうのだ。


「じゃあ二つ目の作戦で。クレース、パール、ボル頼むね、気をつけて」


「任せろジン、怪我はするなよ」


「すぐに会いに行くねジン」


作戦というのは至って単純だ。クレース、パール、ボルの三人が陽動部隊として正面突破する。そしてその間にジンたち残りのメンバーが百鬼閣へと近づいていくのだ。


「パール、お前大丈夫か? 無理しなくても俺が変わっていいんだぜ」


元々陽動部隊の方に入っていた閻魁と離れてしまったため陽動する方の負担が大きくなってしまっていたのだ。


「トキワ、パールは本気を出せばお前より余裕で強いぞ安心しろ」


「うん、ボクもいるカラ。トキワはジンとエルムたちをしっかりマモッテ」


そしてジンは作戦を決行する前に皆の目の前に立ちそこに視線が集まった。


「私から一つだけ。誰も死なないで、ただそれだけ。元気な姿でまたみんな会おうね」


その号令を聞き、皆は胸に高まる興奮を抑えつつ作戦を実行する。



「ーロスト」


トキワたちは音を遮断して回り込むように百鬼閣へと向かい、一方クレースたち三人は堂々と最短距離の道を通って正面から百鬼閣の方へと向かっていった。


そしてクレースたちは目の前の敵の視線など気にすることなく、わざと敵の視線に入り込むようにゆっくりと歩く。


「パール、あそこの城壁に人質はいるか」


「いないよ。全員敵」


「なら、問題はないな······」


クレースはそれを聞いて少し口角を上げた。悪魔のようで底知れない雰囲気が感じ取れるその出立ちは、確実な強者のみ纏うことを許されたものであったのだ。そしてクレースたちが800mほどの距離まで近づいた時、見張りをしていた兵士からうっすらと三人が近づいて来ているのが見えた。


「なあ、あそこになんかいねえか?」


「ん? なんだあれ」


見張りをしていた男は不思議に思いつつも持っていた単眼鏡を覗いた。すると突然、男は単眼教をコトンと落とし、ドサっと尻餅をついた。


「お、おいどうしたんだよ」


突然尻餅をついたその男の顔はいつの間にか恐怖の色に染まっていた。


「て、敵だぁああッ!」


恐怖が混ざったその男の叫び声は辺りに響き渡り一瞬にして視線が集まる。そして敵の情報を聞いていた兵士たち全員に鬼気迫るような緊張が走った。


「全員、魔力砲弾を装填しろ!」


その号令を聞いて見張りの兵士たちは城壁の上で魔力砲弾に魔力を込め始める。魔力砲弾は込められた魔力を数倍の威力に変換し、一点に集める。そしてそこからは強力かつ超高速の魔力弾が発射されるという仕組みなのだ。


「バレたよクレース」


「ああ、少し道を開いてくる」


クレースは威雷を鞘から抜いた。それに伴い周りには黒色の雷が重たい音を立て生まれる。

冷たい目で眼前の壁を見つめ、一歩目の足を前に出した。

その足は一歩、また一歩と轟音を響かせ前に出ていく。

雷を纏った踏み込みに空気が振動する。

落雷のような踏み込みは一歩ごとにさらに重たく変化する。


「ー雷震流、」


「魔力砲弾、装填準備完了!」


しかしその声は轟音に打ち消される。

威雷の刀身は光沢のある黒色を纏い、その踏み込みに呼応する。


「発射!!」


その声とともに10歩目の踏み込みで地面を抉った。

黒い雷が邪魔な風圧を跳ね除け、重力を無視するように空を飛ぶ。

世界の上下が反転されたようにその”雷”は下から上に移動する。


そして魔力弾はただ地面にぶつかり、地形を抉る。


最高点に到達したところでその雷は人の姿に変化する。

威雷を纏った黒い雷は巨大な刀身を形作っていた。威雷を両手に持ち替え、クレースは何時しか下に見える城壁を見下ろす。


黎明(レイメイ)


巨大な雷の刀は高速で振りかざされ静かに城壁に触れた。


「な、なんだ? 何も起こらないゾッ······」


兵士の一人がそう言いかけた瞬間、約1kmに連なる硬い城壁は傾く。


「おいどうなってる!?」


そこへ少し遅れるように城壁の真ん中から雷とともに亀裂が生まれる。

その亀裂は中央から広がりすぐさま両端にまで広がった。

そして城壁の上半分が傾き、滑り落ちていく。

綺麗に切断された断面を見せ、城壁の上にいた兵士たちごと崩れ落ちたのだ。


「はぁ?」


思わず、立ち止まってイッカクたちはその光景に目を奪われた。


「いい陽動ダネ」


「わたしもジンについて行けばよかったあ」


少し拗ねるパールをよそに城壁は凄まじい轟音とともに地面に崩れ落ちて、爆風を巻き起こした。

そしてスタッと着地してクレースは目の前をさらに進んでいくのであった。


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