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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
ジンとロードの過去編
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意思の意志

その夜、まだゼフの家に住んでいたジンはそこでフィリアと一緒に眠ることにした。だがその間もフィリアは焦る気持ちを抑えられないようだった。


「フィリア、焦るのもわかるけど今日はゆっくり休まないとダメだよ」


「ありがとう、ジン。でも心配しないで、あなたはまだ若いのに落ち着きがあって一緒にいると安心しますから」


フィリアは笑ってそう言うもののやはり何かが胸に引っかかっているように見えた。

そしてしばらく押し黙り、ゆっくりと口を開く。


「私は、仲間の意思が、心が失われることが怖いんです」


フィリアは今の素直な気持ちを包み隠さず口に出した。


「私のお母さんが昔に言ってた。人が心を通わせる限り、心はなくならないって。それにお母さんはもういないけど、私はお母さんのことを思い出せばあたたかい気持ちになるの」


「ではもしッ、今ある心が完全に別の心に変わってしまえば······ジンはどうしますか」


ジンの言葉を聞いたフィリアはそう前のめりになって聞いてきた。


「もし、クレースやゼフじいそれにフィリアの心が完全に変わってしまっても私にとってはずっと大好きな友達のままだよ」


フィリアはジンの心地のいい声に安心したように、それでいて嬉しそうに微笑んだ。


「ジン、あなたはもう私を大好きな友達言ってくれるのですね」


「当たり前だよ。だからもう一人で抱え込まないで。友達の、私のそばに居ればいい」


その言葉を聞き、フィリアは目頭が熱くなるのを感じる。幼いジンから放たれその言葉は、ゆったりとした波のように自然にフィリアの心の奥深くまで届き、全身をあたたかい気持ちで満たしていったのであった。そして二人はゆっくりと眠りにつく。


次の日の朝。


(······ん? なんだか重たい)


体に不自然な重さを感じる。ジンがゆっくり目を開けると何故か自分の家で眠っていたはずのクレースがいつの間にかジンに抱きついて幸せそうに眠っていたのだ。


「く、クレース朝だよ、起きて」


無理矢理起き上がると、クレースも徐々に目を覚ました。


「おはようジン」


「どうしてここにいるの?」


「フィリアと一緒に寝てたんだろ、一人加わっても問題ないだろう」


するとドアが開いてフィリアが入ってきた。


「ジン、クレースさん、おはようございます」


挨拶したフィリアは何かつっかえていたものが消え去り、清々しいように綺麗な笑顔をしていた。


「おはようフィリア」


「おう、おはよう」


しばらくして準備をすると一度ゼフの鍛冶場に集まることにした。ゼフの鍛冶場にはすでにボルとトキワそれにコッツがいた。


「おはようございます、皆さんフィリアさんは初めましてですね」


コッツが挨拶すると、フィリアは驚いた顔を見せた。


「ガイコツが······しゃべった」


「そういえばコッツはまだ紹介してなかったね」


「ガハハッ、確かにコッツを始めて見ればそりゃあ驚くな」


そうして挨拶を終えた後作戦を考えることにした。


「私がニュートラルドに通じる亀裂を作り出すのはかなりの魔力が必要となります。ですので向こうに着いた後、しばらくはこちらの世界に戻ってくることはできません」


「ああ、問題ない。向こうがどのような状況かはわからないがお前を守りながらでも敵は殺る」


そう言ってクレースは拳を強く握った。未知の強敵相手に本当にやりかねないクレースの言葉に若干恐怖を感じながらトキワとコッツは安心するように笑った。


「そして具体的な敵の情報ですが、敵の数は6人でリーダーと思われる男はヘルメスという名前でした。敵の目的はおそらく意思の略奪。それにより『意思のある武器』をつくろうとしているのでしょう」


「だが、契約する必要があるのだから無理矢理には不可能だろう」


「ええ、確かにそのはずですが、ヘルメスたちは強い意思を探し出して無理矢理に武器に流し込んでいました。そして抵抗するものたちには暴力を与え恐怖と脅迫によって契約条件を呑ませていたのです」


「まあ最低でもその六人の分、つまり6つの意思が奪われるということだな」


意思と契約するには、まず第一に所有者と意思が互いに契約することを認める必要があり契約は一人で複数行うことができないのだ。


「ええ、ですが強い意思というのは無理矢理に契約しようとしても簡単にできるものではありません。とは言うものの敵は『意思のある武器』を持たずともかなりの魔力を持っておりました······ですがジンやクレースさんを見てみると安心しました」


しかしボルは一人考え込んだような素振りをし、フィリアの方をじっと見つめて口を開いた。


「正直、僕は今すぐにジンを行かせるのはハンタイ。敵の情報がまだ未知数だから迂闊に突っ込むのは危険スギル」


「まあ確かにボルの言うことも一理ある。少なくとも正面突破は避けるべきだろうな。かといって別空間でインフォルに調査させるのは危険すぎるな」


「チッチッチッ」


するとトキワはいきなりドヤ顔をしながら周りの注目を集めた。


「ここは俺が最近覚えた魔法の出番だな。その魔法は名付けて『ロスト』だ。この魔法は俺の周りで最大半径1kmの音を完全に遮断できる俺とっておきの魔法だぜ」


これは温泉の時に男湯からの音を完全にかき消した魔法であり、しっかりと使えば隠密行動において非常に役に立つ魔法なのだ。


「さすがトキワ! これでバッチリだね」


「では作戦決行は一時間後だ。焦っても仕方ないからな、それまでしっかりと準備しよう。ボル、武器を忘れるなよ」


「ワカッタ」


作戦決行までの間ジンはゼフと話していた。


「正直言って心配じゃな。可愛い子には旅をさせよと言うがそれでも心配じゃ」


過保護なゼフは心配そうにしていた。


「大丈夫だよゼフじい、きっと無事に帰ってくるから。信じて待ってて」


「おう。ガル、ジンのことは頼んだぞ」


隣でお座りをしていたガルはその声に応えるようにバウッと吠えた。


そして一時間後、作戦決行の時を迎える。


「ボル、武器は持ったな?」


「うん、コレ」


ボルの右手には赤い何かが付着したハンマーが握られていた。


「気を付けるんじゃぞ、信じて待っておる」


ゼフの見送りにジンは大きく手を振った。


「では行きます! あまり長くは開けられませんのですぐに入ってください!」


フィリアが空中に手をかざすと前に見たような亀裂が何もなかった場所から生まれる。そして魔力を注ぎ込むとその亀裂は次第に大きくなっていった。


「入ってください!」


その合図とともにジンたちはその亀裂に飛び込む。亀裂は少し歪み、破片は下に落ちてその後すぐに消える。最後にフィリアが入り込むと、亀裂は消えてすぐに元の空に戻る。そうしてついにニュートラルドに転移したのだ。


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