表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
ジンとロードの過去編
28/240

意思の宿る地 ウィルモンド

ジンがロードと出会うのは数年前に遡る。

当時のジンはまだ『意思のある武器』を持っておらず、ゼフが少し前に作ってくれた小さな剣を一本だけ持っていたのだ。


その日、クレースの家の庭にいたジンはクレースに剣を教えてもらっていた。

そして庭で素振りをしているジンの姿をクレースは幸せそうな顔で見つめていた。


「ジン、そろそろ休憩しよう。おいで」


「うん!」


二人横並びで縁側に座り、その横でガルが寝転んでいた。そしてジンは搾りたてのアップルジュースを飲んでいた。


「おいしい! ありがとうクレース」


クレースがジンのためにリンゴを搾って、一から作ったアップルジュースなのだ。その言葉を聞いて尻尾をふりふりさせて照れるクレースはまんざらでもないように顔を赤らめた。


「そ、そうか、美味しいか。もっと飲んでくれ10タル分は作ったのでな」


「10タル!?」


そうして楽しく会話をしてしばらくした後、再び稽古に戻って今度はジンがクレースに向かって打ち込んでいた。


「いいぞ、ジン。威力もだいぶ上がってきたな」


「えへへ、すごいでしょ」


そう可愛らしいく笑うジンにクレースは何かを我慢するようにそっぽを向く。

そしてしばらく稽古を続ける二人の元にゼフがやってきた。


「おうやっとるな。ジン言っていたものが完成したぞ、おいで」


少し背が伸びたジンのためにゼフが新たに武器を作ると約束していたのだ。


「本当!? 見せてゼフじい!」


「はいよ、気をつけてな」


ゼフの持ってきた剣は現在使っている剣よりもリーチが長く、素材にはクレースが魔力を流し込んだガルド鉱石が使われていた。


「うわあすごいね。手にピッタリあう。ありがとうゼフじい!」


嬉しそうにするジンの近くでゼフと一緒に入ってきたトキワがクレースに話しかけていた。


「ちっと見てたが、お前はやっぱりジンが相手だと全然迫力ねえな」


「まあ実力は十分すぎるほどにあるんだ。大丈夫だろ」


この頃のジンはまだ実践経験は少ないものの、すでにAランクの魔物には苦戦しないほどの強さを持っていたのだ。


「どうすればクレースみたいな『意思のある武器』になるの?」


「そうじゃのう、武器も道具も『意思』はそう簡単につくものじゃない。ワシもそればかりは付けれんからの。だがどんな武器にだって『意思』はつく。いつかジンの元にも立派な『意思』が宿るじゃろう」


「そうなんだ楽しみだなあ」


「ん? なんだあれ?」


先ほどまでクレースと話していたトキワが少し上空を指さした。トキワの指差す先には明らかに不自然な亀裂が青い空に入っており、その部分だけまるで夜空のような色をしていた。


「あれは······」


ゼフは何か言おうとしたが亀裂はパリンっと音をたてて徐々に大きくなっていった。


「まずい! 離れるぞ」


すると急に大きくなったその亀裂から突然人が放り出された。

そしてその人間が亀裂から出た瞬間、亀裂はすぐに小さくなり何事もなかったように元の青空に戻る。

少し上空から落ちてきたその人物は意識を失ったように何も動かずそのまま頭から落ちて行く。その瞬間クレースはその人物を空中で受け止めた。


「······!」


確認するとその人物は体中の至る所に傷が見られ、血を流していたのだ。


「ジン! 治癒魔法を頼む!酷い怪我だ!」


「うん、クレースの家まで運んで!」


ぐったりとする女性にジンは治癒魔法をしばらくかけると、先ほどまで荒かった呼吸は次第に落ち着いていき、女性の体中にあった傷は綺麗に消え去った。


「ハッ!」


しばらく横になっていたその女性は飛び起きるように寝かしていたベッドから起き上がり、警戒するように周りの様子を伺う。


「ここは······どこ? それにあなたは?」


ジンのことを見て警戒が解けたのか、少し落ち着いた様子でそう話しかけてきた。


「ここはボーンネルだよ。私はジンって言うの。お姉さんはもう大丈夫?」


「ええ、あなたが治療してくれたのね。ありがと······」


ありがとうと言いかけた瞬間、ドアが開くと突然焦った様子で女性は後ろに下がった。


「おう、起きたのか大事はないか?」


クレースがアップルジュースを持って入ってきたのだ。


「大丈夫だよ、私の友達だから。クレースっていうの」


威圧感があるクレースに少し驚いたのだ


「そ、そうだったのですね、失礼しました。改めて、助けてくれて本当にありがとうございます」


「そういえばお姉さんの名前は?」


「まだ名乗っていませんでしたね。私はフィリアと言います」


フィリアと名乗るその女性はクレースに対する警戒心も解けて、落ち着いた口調でそう言った。


「それにしても、何故あれほどの傷を負っていたのだ。それにあの亀裂はお前がつくったものか?」


クレースは気になっていたことを一気に質問した。その言葉にフィリアは何かを思い出すように深刻な顔をする。


「実は······私はウィルモンドから来ました」


「ウィルモンドだと!?」


「クレース、知ってるの?」


「ああ、この世界にはない場所だ。『威雷』のように武器や道具に『意思』が宿る前の『意思』だけが存在する、こことは別空間の場所だ」


「ええ、そしてさらにウィルモンドは三つの空間が結界により区切られております。そして私はそのうちの一つ、ニュートラルドから来ました」


ウィルモンドにはニュートラルドに加えて武器の世界であるアルムガルド、道具の世界であるユーズファルドが存在し、フィリアの言うニュートラルドはジンたちの世界で役目を終えた『意思』が転生する場所であり、いわば武器の世界と道具の世界の中間的な世界であるのだ。


「私が負った傷はニュートラルドに攻めてきた者たちにつけられた傷です。そして私はなんとかここの世界へ移動しました」


「ニュートラルドが攻められたというのか、だがあの空間はそう簡単に侵入できる場所ではないだろ」


クレースが言う通り、ウィルモンドにある三つの世界は外の世界から簡単に入ることはできず、三つの場所同士でも行き来することは困難なのだ。


「ええ、ですがおそらく敵は外の世界から来た者で相当な強さでした」


それを聞きジンはしばらく何かを考える。


「申し訳ありませんが、私はニュートラルドに再び戻らせていただきます。取り残された仲間もまだいますので」


「じゃあ、私も連れて行って」


「な!?」


ジンのその言葉にクレースは驚いて声が出た。


「それは······できません。助けてくださったあなたを危険な場所に連れて行くことは」


そう言ってフィリアは何かを我慢するように唇を噛み締めた


「せっかく元気になったんだからまた怪我しちゃダメだよ。だからわたしも行く」


クレースはため息をついてフィリアの方をゆっくり見た。


「仕方ない。ジンが一生懸命治したんだ。また怪我されても困るしな。では私とガルにトキワ、それにボルも連れて行こう」


「本当に······助かります。ですが、危険ならばすぐにあなたたちを帰します。敵は本当に強大でしたので」


フィリアは申し訳なさそうにしながらも、ジンたちはニュートラルドに向けての準備をすることにしたのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ