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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
ボーンネルの開国譚
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虚無の王

 

「エルダン!」


 地面に叩き潰されたエルダンは無理矢理立ち上がろうとするが、腕どころか全身に力が入らなかった。

 さらに攻撃の反動で剛轟が解けたことで急な脱力感に襲われる。たった一撃でエルダンは戦闘不能になったのだ。


 そして目の前に現れた存在に周りの注意が集中される。見上げるほどの巨体と身体の至る所に見られる古傷。数多の死線を超えてきたその威厳は見たものを萎縮させるような恐ろしい鬼の顔に現れていた。


 ダロットはエルダンが叩きつぶされたのを見て満足そうに笑う。


「ジン、落ち着け。あやつはこの程度では死なん」


 閻魁は周りの様子を見ると大きく肩を回す。バキバキと骨が鳴り、少し身体に力を込めると禍々しいオーラがあたりに撒き散らされた。


「もう待てんわ」


 その場に閻魁の重たい声が響いた。巨大な牙をギリギリと鳴らし右手に持っていた古く錆びれた鉈を肩にかけた。

 鉈は『意思のある武器』ではなかったが閻魁の妖力をまとっていることで通常より何倍もの強度があったのだ。


 勝ちを確信し気分がよくなったダロットは一人で後ろに下がると転移魔法でさらに魔物を呼び寄せ、閻魁を先頭にした陣形をつくった。


 しかし閻魁の圧を気にすることなく、クレースは一人でその陣形の前にたつと威雷を構える。


「こんなものか」


(血迷ったかぁ? あの獣人)


 目の前に立つ威風堂々とした様子のクレースを見てダロットはどこか不安を抱いた。


「——雷震流(らいしんりゅう)万雷の聚(バンライノシュウ)


 クレースは空に向かい威雷を軽く振りかざした。

 空にある雲は応えるようにしてその剣先が指す場所へと集約し無数の黒い稲光が空を満たす。

 次の瞬間、雷光が空を切り閻魁に降りかかった。


 しかし閻魁は自身の鉈を稲光に向け大きく振りかざし避雷針のように威力を逃す——はずだった。


「グワぁああアアア!!!」


 黒雷は閻魁の身体中を駆け巡り痛烈な悲鳴が響き渡った。


「お、おい! なんで攻撃が通ってんだよ!!」


 閻魁はすぐさま空中に受けた雷を放電させて威力を殺したが、その手には強烈な刺激が加わり感覚が麻痺した。



 その間、エルダンは何とか立ち上がろうとしていた。


(クソッ! 肋骨と左腕の骨が粉々になってやがる······)


 その時カラカラとした音を立てながら誰かが走ってきた。

 医療箱を手に持っていたコッツがエルダンの元に来たのだ。


「エルダンさん! 大丈夫ですか!?」


「あ、コッツ危ないよ。エルダンを連れて集落で治療してあげて」


「ええジンさんご心配なく、エルダンさんは私にお任せを!」


 コッツはエルダンに骨の肩を貸して集落に向かう。


「おいおい、逃げられると思ってんのかぁ?」


 その時ダロットの召喚していた一体の竜の魔物が二人の背後からブレスを吐き出した。

 しかし二人の背中を遮るようにジンが間に立った。


虚無(ロード・) (オブ)(・ヴォイド)


 ロードを振りかざすと目の前に巨大な空間が生まれた。その空間の中には星空のような光景が広がり放たれたブレスは一瞬でその中へと吸い込まれていった。威力も速度も無視した多次元空間。ブレスを呑み込んだ後、その空間は巨大な竜までも呑み込んでしまった。


「わぁあ〜きれい。ジンすごい」


「えへへぇ」


「ジンさ〜ん! ありがとうございま〜す! お気を付けて〜!!」


「うん、エルダンを頼むよ〜!」


(なんだあの小娘。あやつの魔力量はゲルオードを······)


「面白い、強い魔力量を感じたのはこの小娘からか」


 閻魁の言葉を聞き、クレースは眉をひそめた。


「何が小娘だ。そんな不細工な顔面でほざくな鬼が!」


 畳みかけるような言葉とクレースの圧に閻魁は明らかに焦りと動揺を隠せないでいる。

 ジンのことになれば災厄が相手であろうとクレースの態度は変わらなかった。


「い、言い過ぎだよクレース」


「······わ、我が悪かったわ。そんなに言わずともよいだろう······」


「拗ねた」


 パールがそういうと閻魁は悲しそうに俯き動きを止めた。


「いや、我だって····その······我は····」


「動かなくなったよ」


「精神的には五歳児だな。後でトキワに煽らせてみるか」


「ジン様、お伝えしたいことがございます」


 するとその時ゼグトスがジンの隣に現れた。


「あ、ゼグトス。そっちは大丈夫だった?」


「ええ、魔物は全て蹂躙しておきました。守護結界も張っておりますのでご安心を。報告ですが、こちらに鬼帝が向かっております」


 ゼグトスはさらっと言ってきた。


「き、鬼帝?」


「ジン、あっち」


 そう言ってパールが指を刺した方向からは急速に巨大な魔力が接近してきた。


「やはり来たか」


 遠くに感じた魔力はいつの間にか目の前まで近づいていた。

 その人物は魔力量も然ることながら、妖力は閻魁をも超える。

 しかしながら、どちらともを完璧に制御しており、オーラが溢れ出ていた閻魁とは違い見た目には静けさがあった。


「うわぁ初めて見る」


 黒く、頑丈そうなツノを二本生やし、威厳のあるローブを身にまとうその人物。

 閻魁を超える圧倒的な強者のオーラはその者が帝王たる所以である。

 世界のパワーバランスを担う八大帝王の一角、鬼帝『ゲルオード』であった。


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