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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
英雄奪還編 前編
120/240

海面のモンド


トキワが帰ってきてから数日が経った。帰ってきてからお父さんの話を聞いたが本人はいつになく清々しい、そして幸せそうな顔だった。また今回の旅でガルミューラとの絆も深まったようで前よりも二人で一緒にいるという光景をよく見るようになった。もう後悔は無いとのことらしい。そして何故か感謝された。


その後しばらくして三日に一度くらいのペースで魔力波を飛ばしてくるゲルオードから会談の日時が決まったという知らせを聞いた。そして現在、総合室に集まり円卓を囲みながら全員で話し合いをしているという状況だ。いつもは外にいる閻魁も、他に便乗して来たという感じで椅子に座っている。


「ジン、ぼくやっぱり行くのはやめておいた方がいいと思うんだよね」


「ジン様、恐れながら私もゼステナと同意見です。危険が伴うかもしれません」


そう言っていつになく真剣な顔で口を開いたゼステナにクリュスも続いた。


「ゼステナ、クリュス。あなた達にしては随分とらしくない考えですね。本来なら喜んで付いてきそうですが」


「べ、別に何も無いけどさ。ゼグトスこそ······心配じゃないの?」


「ええもちろん心配ですとも、ですがジン様の強さはあなた達の想像を遥かに超えます。帝王如きでは及びませんよ。それにもしものために私達がいるのでしょう。それともあなたもようやくジン様に心酔しましたか?」


「····あっ、ああそうだよ!! 何か悪いか!!」


顔を赤らめながら叫んだゼステナを見て周りからは笑い声が起こった。


「ともあれだ、帝王連中と良好な関係を築いておくのは必要だ。ジン、じいちゃんも心配だが頑張って来い」


「うん、それと言い忘れてたけど会談は三日後だって」


「それでだ、誰が護衛に向かうかをこの場で決める。私とガルは確定だ。ゼフは防衛のためここに残ってもらう。ここの安全を確保する必要もあるが、護衛に手を抜くつもりはない。それで聞くが、今現在で護衛として付いてくるつもりの奴は手を挙げろ」 


クレースの言葉を聞いて周りにいたもの達はかなりの人数が手を挙げた。


「えっ」


素で声が出た。


「流石に多すぎだ。何人かは妥協しろ」


「そうですね、おそらく帝王は後ろに三人ほどの護衛をつけているでしょう。ですが私の特殊空間を用いればそれに加えて他の方もすぐに出られるようには出来ます」


「パール、危ないからお留守番できるかな」


「で、でもジンといっしょにいきたい」


「すぐに帰ってくるから」


「······うん」


優しく抱っこすると落ち着いた。まだまだ甘えたい時期なのかもしれない。私もお母さんがいれば今になっても離れないくらいに甘えている自信がある。


「ではゼグトスもだな。あともう一人は······」


すると閻魁が再び手を挙げ、キリッとした顔をする。


「そうだな、我とかどう?」


「却下だ、静かに座っていられないだろう」


「まあそう言うではない、我ならば多少の顔見知りもいる。それに我は強いからな、もしものことが起きても全員我を前にして恐れ慄くだろう。どうだジン」


「そうだッ—」


「待って、ぼくとクリュス姉が行く」


ゼステナは言葉を遮って机をバタンと叩いて立ち上がった。


「三人も四人も一緒だよ、ガルも行くんだからさ、いいでしょ?」


「我は」


「ジン様、ぜひお供させて下さい」


「じゃあ閻魁はまた今度ね。留守番よろしく。ボル、申し訳ないんだけど一日だけ二人の仕事を引き継げないかな?」


「モチロン。安心して行ってキテ」


ということで行く護衛のメンバーはガル、クレース、ゼグトス、ゼステナ、クリュスということになった。ゼグトスのいう特殊空間を使えば転移魔法を少しだけ応用したものらしく必要に応じて魔力波で呼び出した相手をすぐに転移させられるらしい。


「そうだジン。この際だからさ、昨日決め終わったやつだけでもみんなに発表しようよ」


「そうだね」


元々は位や称号を考えるつもりだったが、そこから派生して部隊の編成まで決めてしまった。ちなみに位はほとんど決まらず称号に至っては一旦は保留し、また今度ということになった。



「それじゃあぼくから説明させてもらうよ。この国はまだ多くの国から小国と言われて舐められているみたいだね。部隊編成や位は他国への戦力の誇示だけでなく全員の士気にも関わってくる。とは言っても今決まった位は幹部だけだね。ということでまずは部隊について。

これは戦闘面のバランスや相性の良さを考慮して考えたよ。戦闘能力に大きく左右されるね」


ゼステナが円卓の中心に手を向けると魔力によって空中に文字が現れた。


「一番上が部隊名だよ」


黒金の槌(トールブラック)


・幹部  ボル

・構成員 傭兵軍団 エルダン他剛人族


骸の軍団(スカルドアーミー)

・幹部  クシャルド 

・構成員 ハバリ ギルス 他骸族


「まず第一、第二部隊。ボルが率いる部隊とクシャルドの率いる部隊だ。第一部隊は力と機動力を備えた構成になっていて第二部隊は持久力重視になっている。どちらも地上戦に良い部隊だと思うよ」 


「えっ、ボク幹部ナノ」


「ボルお願い」


「ワカッタ」


「わ、私が幹部でもよろしいのでしょうか」


クシャルドはとても申し訳なさそうに気まずい表情をした。


「クシャルドは骸族のみんなの統率も取れるし経験も豊富だからさ。きっと大丈夫」


「はい······それでは慎んで勉めさせて頂きます」


そう、骸族を完全に統率できるのはクシャルドしかいないのだ。


「次行くね」


ゼステナが瞬きをすると文字が変化し次の内容が表示された。



炎の槍(カサルランス)

・幹部  トキワ

・構成員 ゼステナ リンギル ガルミューラ他ヒュード族


—ガルドのカラクリ—

・幹部  ギルバルド 

・構成員 機械兵


「次に第三、第四部隊だね。第三部隊はトキワが幹部だ。ぼくもこの前戦って強さは分かってる。三人が意思持ちの武器を所有している部隊だね。それと機械兵のことはぼくもよく分からないんだけど、ゼグトスが制作に協力したみたいだからね。機械兵には防衛や遠距離攻撃の役割をしてもらうよ」


「分かったぜ、任せな」


ギルバルドはその場にいなかったが後で伝えよう。大丈夫、きっと了承してくれるはず。


「次が最後だよ」


龍星群(リュウセイグン)

・幹部  エルバトロス

・構成員 クリュス ラルカ 他龍人族


癒す者(ヒーリングズ)

・幹部  リエル ルース

・構成員 エルフ族


「第五部隊にはクリュス姉他、エルバトロスやラルカ達龍人族だ。クリュス姉もいるから戦力的にはかなり大きな部隊にはなるけど正直奥の手みたいなところもあるね。クリュス姉は外交関係の仕事を兼任しているから幹部はエルバトロスに頼むよ。最後の第六部隊は回復部隊だ。幹部には二人についてもらう。戦闘に直接参加はほとんどしないけど治癒魔法をこれからさらに習得してていってもらうよ」


「うむ、任せてくれ」


「ええ、分かりましたわ」


「とまあ、こんな感じだけど何か質問はある?」


「わ、我は?」


閻魁は立ち上がり、まるで子どもがおもちゃを買ってくれなかった時のように悲しそうな瞳でゼステナを見つめた。


「ああ、言い忘れてた。今表示されなかった人で戦闘系の人は基本的には全員ジンの護衛だ。必要に応じて出陣するといった感じだけど今は戦争中でもないから具体的にはいざという時に適宜対応してほしい。それと各部隊の番号に優劣はないからね」


「ほう、ならばよい」


「まあ分からないことがあれば適宜聞いてくれ」


そして中央に表示されていた文字はスッと消え去った。


「みんな一ついいかな」


その声とともに全員の注目がジンへと移る。


「ボルとゼグトス、それにインフォルが考えてくれて作成までしてくれたんだけどゼグトスのつくった海上の特殊空間を増築する形で全員が安全に利用できる訓練施設を作ってくれたんだ。それ以外でも使おうと思うんだけど」


「もう完成したのか」


「ウン。魔法を使用したのと構造が少し特殊だカラネ。」


ゼフの膝の上に静かに座っていたインフォルが机の上に立って中央に向かって手をかざした。すると今度は文字ではなく設計図が出てきたのだ。


「「おおぉ」」


設計図を見て皆が目を輝かせて思わず声が漏れた。


「これが今回完成した建物の設計図や。水圧にも暴風にも、それと外部からの攻撃にも耐えられる設計になっとる。設計図がここにあるから今ここで説明させてもらうで。まずここからは少しだけ距離を置いた海面に設置予定で向こうへは転移魔法陣で移動する。外観としては海面に中心が置かれた球形や。半球が海の中に沈んどるが周りに不可視の結界を張っとるから動かず球形がどこかに行くことはない。もちろん、海洋に影響が出んようにしっかり対策もした。中には扉が複数あって開けると広い部屋に繋がっとる。耐久性はゼグトスはんお墨付きや、安心しい。内装は出来とるが設置後安全性の為少しの間点検させてもらう。一度海の底から引っ張り上げて結界を張らなあかんからな、今のタイミングで言おう思ったんや」


「今から見れるのか !?」


閻魁は話を聞いてからもう落ち着きがない。


「もうジンちゃんからの許可は出とるからある程度の準備は終わったで。球形の設置をまず初めにする。お前さんらには点検が終了次第中に物を運ぶんを手伝うてもらう。今中には一切何も無い、中は安全やさかいうちっ側に入っても全く問題ない。そいでや、今から全員集めて球形のお披露目会と行こうやないか。建物の名前は名付けて『モンド』や。きっとこの国の名所の一つになんで」


「「おおおおぉ」」


再び歓声が部屋に溢れた。


そして外に出て皆が海の近くに集まった。皆が見守る中、ゼグトスが空中に浮遊して海上に留まる。


「ジン様、よくご覧になられてくださいね」


「うっ、うーん! 気をつけて!!」


かなり見て欲しそうでゼグトスのすごく興奮している様子が伝わってきた。設計図は見ているものの未だに完成した外観は見ていない。


「では、いきます」


ゼグトスが指をパチンっと鳴らすと海から地響きのような音が聞こえてきて近くの地面が揺れ始めた。海面から陽の光に照らされて光る物体に大量の海水が持ち上げられながらその姿を現した。現れたのは海の色に溶け込む半球で出現と同時に結界が張られその場に留まった。


建物自体は中の様子が見えないが透明で周りの環境に合わせて色を変化させられるらしい。それにしてもすごい。みんなは口をポカンと開けたまま、目の前のモンドに釘付けになっていた。


「じゃあそういうことや、転移魔法の設置はもうしばらく待っといてくれ」


インフォルはそう言い残すと一度土の中へと帰っていった。そしてしばらく見てみんなは笑顔で元いた場所へと戻っていった。こうしてモンドのお披露目会は無事皆の期待と共に大成功したのだった。


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