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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
中央教会編
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生まれ変わってもまた貴方と


ギルメスド王国とエスピーテ国の国境は長く連なる防壁を隔てその他には何もないただの草原が広がり、CからBランクの魔物が転々としながら存在している。そして現在、戦争直前の状況によりこの防壁の内側にそれぞれが防御壁備えつつ、着々と迫り来る戦争の準備をしていた。


「今更だけどよ、ラグナルク。お前はどうして騎士になったんだ? 元々は冒険者だったんだろ?」


ベオウルフは準備をしているとき、何気なくそう聞いた。するとラグナルクは「フッ」と軽く笑ってベオウルフが持っていた盾の方を指差した。


「おそらく、お前がそれを持っているのと同じ理由だろうな」


それを聞いたが意味がよく分からず首を傾げてそのまま作業を進めた。その時は言葉の意味をよく考えなかったのだ。


当時のベオウルフはまだ『ギル』と契約をしていなかった。そのためこの時のベオウルフは左手に盾、右手に剣というオーソドックスな騎士の装備を着用していた。そしてラグナルクは右手に長剣を持ち、左腕にかけては自身の魔力を注いだガルド鉱石を使用した装甲が取り付けられていた。それに対してフィオーレは片手に細身のレイピアのみを装備し防御を捨て去った完全なる速さ重視の装備をしていた。

そのため三人で任務を行うときはベオウルフが前衛を取りながら隙を見てフィオーレが攻撃を仕掛け、ラグナルクはフィオーレのサポートをしつつ攻撃を仕掛けていた。この陣形では相手にとっては隙を見せれば距離を詰められ、逆に攻めようとしても前衛のベオウルフが邪魔で攻撃が仕掛けられないという形になっているため非常に厄介なのだ。


そんな二人の様子を少し離れた場所からフィオーレは見つめていた。そして後ろから視線を感じたため振り返ってみると、エルサが優しく微笑むようにこちらを見てレイファは面白そうな顔をしてニヤついていた。


「エルサ、レイファどうしたの? さっきから私の顔を見て」


「いいえ、何もないわよ」


「誰を見てたの?」


小悪魔のような笑みで笑いかけてきたレイファにフィオーレの顔は一瞬で赤くなった。


「わ、私は別にそんなつもりはッ」


「あらあら、可愛いわね。でも安心して、あなたなら誰だって落とせるわよ。もし困ったことがあればエルサお姉さんに相談するのよ」


「え、エルサこそ······や、やっぱりやめようよ。なんだか恥ずかしくなってきちゃう」


「そうね、見ている私でさえ恥ずかしくなってきたわ」


その後もガレリアの騎士団所属の者達を中心にして防御壁を築いている中、ガレリアはただ一人誰にも気付かれないようにして真ん中に隔てられる防壁の上に立ちエスピーテ国の様子を伺っていた。


(特に目立った様子は······ん? 何をしている)


ガレリアが見つめる先にはエスピーテ国の魔法使いと思われるもの数人が詠唱をしていた。おそらく防御壁を作るためだとは思ったが詠唱の長さと、えも言えない不気味な雰囲気を感じたためしばらく観察していると何やら魔法使い達の近くにいた魔物達の様子がおかしくなったのをはっきりと確認した。

 

「何をする気だ? エスピーテ······」




この頃、ギルメスド王国には剣帝と呼ばれる者は存在しなかった。そのためギルメスド王国とエスピーテ国はともに国王を有し国王が国の実権を握っている。今回の戦いの発端はエスピーテ国がギルメスド王国の戦力増加を懸念したことによる。そのため、今のうちに軍事侵攻を開始してギルメスド王国全体を侵略するというのが目的であった。


当時エスピーテ国を治めていたのは「ハーロンド・メドル」という名の国王でありこの人物が今回の戦争を始めた張本人である。ハーロンドは王という立場になってから加速するように傲慢な態度になっていき、今では暴君とまで呼ばれる王なのだ。そしてハーロルドがここまでの強行に及んだのはこの傲慢さに加え宮廷の魔法使いである「メルバール・ダルバルク」を中心とした戦力を有しているためである。このメルバールという魔法使いの一族は今となってはエピネール国の魔法使いの家系として他国からは軽く見られているものの、この当時は各国に名前が轟くほどの有名な魔法使いの一族として大成していたのだ。


対してギルメスド王国の国王は「アルバード・デリオル」という名の男であり、この国王はハーロンドとは違い、傲慢さという部分がかけらもない立派な王であるため、騎士たちからの忠誠心も厚かった。そんな優しい国王だからこそ、今回の戦争、いや、戦争というもの自体をひどく嫌っていた。ハーロンドの暴虐ぶりに耐えかねて戦争するしかなかったのだ。そして現在、デリオルは防御壁を張っている騎士達の様子を見にきていた。


「始まってしまうのか······本当に申し訳ない」


「国王様、危険です。せめてもう少し離れた場所へ避難しましょう。ここでは遠距離の攻撃だけでなく魔物達の攻撃に対しても御身に危険が及ぶ可能性がッ······」


そんな部下の言葉を遮るようにデリオルは手を向けて制止した。


「いいや、これは私に責任がある。こんな非力な身体一つのために私の大切な子ども達が死んでいくなんてこと、まったく耐えられるものではない」


生気を失ったような空っぽな瞳で放つその言葉はデリオルの本心であった。だからこそ、城の中でゆっくりとはしていられなかったのだ。


(ハーロンド・メドル。どこまでも傲慢で愚かな王よ。其方はいずれ後悔するであろう······ならば、私も)


そんなことを考えているとすぐ近くで準備をしていたベオウルフ、ラグナルク、フィオーレの三人の姿を見つけた。デリオルが優しい瞳で三人の様子を見つめ続けていると、ベオウルフがそれに気づき笑顔で手を振った。


「おいベオウルフ、流石に失礼だぞ。もっと敬意を払わなければ」


「ったく、お前はかてえんだよ」


「ベオ、ラーグこんな時に喧嘩しないの。私怒るよ?」


「「············」」


二人が喧嘩しそうになる時はフィオーレがこのように間に入るとすぐに二人は黙り込む。お決まりの流れなのだ。


(······守らねば、死なせてはならない)


三人の様子を見ながらデリオルは再び誓ったのだった。



防御壁の作成は魔物の介入やエスピーテからの攻撃がなかったため問題なく終わった。後は戦争に備えて抜かりなく準備をする。ベオウルフはこのような状況にありながらも自身の活躍を夢見て内心は興奮していたのだ。


その日から数日間、両国には緊張が走っていた。いつ始まるか、どちらから仕掛けるのかも決まっておらず、ただこれから戦争が引き起こるというその事実に怯えながら、民は避難し生活を続けていた。そんな中、ベオウルフは暴れ足りない自身の身体を発散させるように日々の特訓をしていたのだ。


「ベオ、また特訓かな? 君はいつにも増して気合いが入っているね」


ボロボロになったカカシに向かって木刀を振っているとフィオーレが話しかけてきた。


「ラグナルクの倍は特訓しねえとな。俺は必ず、今回の戦争であいつの倍活躍してえからよう」


「へえ····そうなんだあ」


その後フィオーレは素振りを続けるベオウルフの姿を見つめつつ、少し気になっていたことを聞くことにした。


「前から思ってたんだけどさ、どうしてベオは盾を持ったスタイルなの? 私の見立てでは、君は剣を一本を構えてその筋力を活かす戦闘スタイルだと思ってたんだけど」


「何言ってんだよ、それじゃあお前を守れねえだろ?」


サラッと言ったその言葉にフィオーレの顔はポッと赤くなった。


「へ、へえそうなんだ。まあ確かに、君が盾を手放せばラーグとの三人の陣形も崩れちゃうもんね」


「まあそういうこった。······ラグナルク君? 何見てるのかな?」


建物の物陰に隠れていたラグナルクは「どうして気づく」と愚痴を言いながら少し渋った顔をして出てきた。


「二人ってさ、本当に仲良いよね」


「「どこが?」」


「そういうところ。息ぴったりだし、ほとんど一緒にいるしまるで兄弟みたいだね。これからもずっと仲良しでいるんだよ?」


その言葉を聞いて二人はお互いの顔を見てなんとも言えない顔をするとラグナルクはその場から離れていった。


一方、騎士の詰め所ではアントとレイファの二人がニヤニヤしながらある光景を見ていた。


「どう思いますか、レイファさん」


「まあエルサの方は確実に落ちてるわね。多分あと後ろから息を吹きかけるくらいでいいと思うわ。······問題はメルバドの方よ。あの男、何を考えているのかが全く分からない」


「そうだなーあいつとはかなり一緒にいるけど未だに何考えてるか分かんねえ」


二人の視線の先には優しい顔で黙々と防具の手入れをするメルバドの姿と、どこかよそよそしい様子のエルサの姿があった。ちなみに二人の周りには誰もいない。アントとレイファがごく自然にこのシチュエーションを作り出したのだ。


『レイファさん、動きましたよ』


『分かってるッ!』


小声で興奮する二人の視線の先にはメルバドに近づいていくエルサの姿があった。エルサはいつものように落ち着いた雰囲気を出しながらメルバドに話しかける。


「メルバド、何してるの」


『レイファさん、あの人馬鹿ですよ。誰がどう見たって防具の手入れでしょ』


『黙ってなさい、あれでもエルサは精一杯なのよ』


「少し防具の手入れをしておりました。宜しければエルサさんの防具も手入れいたしましょうか?」


そう言われるとエルサは防具を手渡しメルバドは丁寧に持つと再び優しい笑顔を見せてエルサに笑いかけた。


「いつも頑張っていらっしゃるのに随分と大切に扱っていらっしゃるのですね。傷がついていても美しい。まるで戦場を駆ける貴方のようです」


「なっ」


メルバドの言葉を聞き冷静を装っていたエルサの顔は一瞬にして赤くなった。


『ちょ、ちょっとアントさんッ! どういうことですか!?』


『すげぇよなーあいつは思ったことを普通に言ってるだけだもんなー』


「どうかされましたか? お顔が赤いようですが」


「い、いいえ大丈夫よ。貴方のことだから心配していないけれど、今回も頑張りましょうね」


「ええ、貴方のことは私がお守りいたしますよ。安心して戦場を駆けてください」


その言葉にエルサは次に話そうとしていた言葉が喉につっかかった。あまりの驚きと恥ずかしさに冷静な考えが消え去ったのだ。そして昨日の夜に一人で必死に考えていたメルバドとする会話も全て記憶の遙か彼方に吹き飛んでいった。


「····そういえば、用事があるのを忘れていたわ。申し訳ないけど後でまた取りに来るわね」


「はい、かしこまりました」


エルサはバッと反対方向を振り返ると早足でその場を後にする。そしてその顔を見たアントとレイファは思わず笑みが溢れた。いつもはお姉さん気質でクールなキャラであるエルサの顔には隠しきれない恥ずかしさをと嬉しさが現れるように真っ赤な顔をしていたのだ。


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