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ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜  作者: ふーみ
中央教会編
102/240

妹という存在


ボーンネルの傭兵達が毎日死ぬような思いの訓練をする中、レイもクレースとの毎日欠かさない特訓でかなり実力がついてきていた。しかしながら実力自体はかなり上がったものの、毎日の特訓相手がクレースであるため、レイ本人は未だ満足のいく強さというものを得られていなかったのだ。


レイが日々行う特訓内容としては毎日行うこととして朝早くに起床し、いきなり木刀を持ち素振りを五百回した後にクレースと撃ち合いをする。レイは普段、ハルバードを使用するが、どの武器でも強くなれなければ意味がないということで木刀を使用しているのだ。クレース自体は手加減無しで寸止めもすることなく容赦無く打ち込んでくる。そのため終わる頃には傷だらけというのも日常茶飯事なのだ。


そしてその後ジンに癒されにいった後、クレースの転移魔法で魔物が多く生息する地域の決められた場所の中からランダムで木刀のみを持ったレイを転移させる。そして大抵の場合飛ばされる場所は魔物の群れの真ん中か、何度来ても方向感覚を失ってしまいそうな場所なのである。


そしてそんな環境から方角のみを伝えられてクレースの家まで一時間のうちに帰ってこなければならない。その後、疲労が限界状態の中ようやく『レグルス』を手に取り素振りを千回して最後に再びクレースと戦う。しかしその頃には倒れてしまいそうなほどのしんどさでボコボコにやられる。

ジンに気づかれればすぐにやめるように言われてしまうので、その後は平然としてジンに接し、究極に疲れている場合は恥ずかしげもなく甘えて膝枕をしてもらい頭を撫でてもらうのだ。それだけでレイの疲労は吹っ飛んだ。

しかしレイはこんな過酷な特訓にも一切の弱音を吐かない。ただただ全力でこなすのだ。


そんな日々が続くある日、レイは朝の特訓からレグルスの使用が認められた。

そして朝からのクレースとの打ち合いにも木刀のクレースに対してレグルスを使用した。今度こそ勝てると思ったものの木刀を使用していた時と同様、コテンパンに叩きのめされたのだ。


「クッ、どうして木刀に弾かれる····」


「だから言っただろ、お前はまだ武器を使いこなせてすらいない」


(レイ、流石に無理しすぎだぜ? ちょっとは休め。お前がうまく使いこなせないのは俺にも非がある)


(いいや、関係ない。私の実力不足だ·····それに、相手がおかしい)


事実、飛ばされた場所で出くわした魔物にはたとえA級の群れであろうとも苦戦することはなかったのだ。

しかし、帰ってきてクレースと戦うと自分の攻撃がまるで意味を成さない。角度を工夫した攻撃も、技同士を組み合わせたものもまるで知っていたかのように避けられカウンターをくらってしまう。


昔ジンに剣を教えていたと聞きジンにもこんなことをしていたのかと聞くと「そんなわけないだろ」と言われ、自分が弱すぎるのかもしれないとネガティブな気持ちになることもあったのだ。しかし諦めようと思ったことはただの一度もなかった。

それどころか、ジンを守れる存在に少しずつ近づけていたことが嬉しかったのだ。


そして特訓を始めてからは、家に帰るとずっとエルムが心配したような様子で料理を作ったりマッサージをしたりと疲れをなんとか取ろうと努力してくれる。それもありがたいのだ。


「レイ姉さん、たまには休んだほうがいいですよ。私心配です。ジンお姉ちゃんもすごく心配してました」


「大丈夫だ。エルムも疲れてるだろ、私に気にせず休んでくれ」


それを聞いてエルムは少ししょんぼりとした顔を見せた。


「······今日は一緒にお風呂に入るか?」


心配させないようにそう聞くと「はいッ!」とエルムは元気な女の子らしい嬉しそうな返事をした。

そして二人は家にあるお風呂に入った。家のお風呂はもちろん集会所の温泉などと比べると小さいもののしっかりとした作りで二人で使用する分には十分すぎるほどなのだ。


レイはエルムの小さな背中を優しく洗いながらも自分が幸せな気持ちになっているのを感じた。そしてエルムも心地よさそうにレイに身を委ねていた。


(小さくてかわいらしい背中だ。気持ちいいんだろうか、ジンにも今度やってみよう)


そしてレイはこの機会に実は気になっていたことを聞いてみることにした。


「······エルム、私はもしかしたら、シキのことを助けられたかも知れない。お前に、悲しい思いをさせずに済んだのかも知れない」


そんなレイの言葉を聞いてエルムは大きく首を横に振った。


「そんなこと思わないでください。私は今、何も寂しくなんてありませんから。レイお姉さんと一緒に住めて、ジンお姉ちゃんは毎日のように私に話しかけにきてくれる。十分すぎて申し訳ないくらいです」


「······そうか。実は、私にも兄がいてな。もう何年も会ってはいないし仲も良くはなかった。小さい頃から兄妹らしい会話も特にはしていないし、距離もあった。だからお前達の会話を聞いていると····その、なんだか羨ましかった」


そしてエルムは少し照れた顔のレイを見て笑顔になる。


「でも、妹のことが嫌いなお兄ちゃんなんて絶対にいないと思います。たとえ直接表さなくても、心の奥で思ってくれてるんです。家族だから、兄妹だからじゃなくて、きっと心の大切な場所にその存在があるんです。だからレイ姉さん、私達妹は素直な気持ちを伝えればいいんです。たとえ楽しい思い出がなくても、兄妹なら些細な思い出でも宝物になるんですから」


「些細な思い出か······」


「ご、ごめんなさいなんだか変なこと言っちゃって。私は少しのぼせてきたのでもう上がります」


「いいや、助かった。私も上がる」


そしてお風呂から上がるとその日もレイは泥のように眠った。


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