相棒
俺は無属性の時空魔法の妖精と契約することにした。
(お前の名前はクロックだ!これからヨロシクな、クロック!)
「・・・。」
(・・・えっ?クロックってお名前、お気に召しませんか?)
「・・・。」
(えっ?えっ?ごめん!そんな体育座りでいじけないで!もう少しちゃんと考えるから、だんまり決め込むのはやめて。)
ピカピカピカ、ピカーン!
クロック(仮)が突然発光しだしたと思ったら、次の瞬間、眩しくて目が開けられないくらいの光を放った。
光が消えると、クロック(仮)が俺と同じぐらいの大きさになっていて、目を凝らさなくてもハッキリ・くっきり見えた。
さっきまではモジモジとした印象だったが、今は自信に満ち溢れた少年のようになっていた。
そして、ハッキリ見えるようになったクロック(仮)の顔を見た。
髪と眉毛は顔の左右で黒と銀色に分かれていた。
肌は白く目は黒い、顔はキレイに整った中性的な美少年?(美少女?)だ。
全体像はまるで、どこぞのヴィジュアル系のアイドルみたい感じで、黒を基調とした服を着ていた。
そして、クロック(仮)は真っ直ぐこっちを見てこう言った。
「クライスのおかげで上級精霊に進化出来たよ!本当にありがとう!」
(ん?)
今なんて言った?
「さぁ、契約しよう!」
いや、待て待て待て。
(今、とっても大切なことを言わなかったか?)
「契約しよう?」
(ちがーう!その前!)
「上級に進化出来た?」
(まぁ、それも大切なことではあるんだが、その前に言っただろ?)
「うーん?」
いやいやいや、人差し指をアゴに当てて、首傾げて上を見てる姿は、すごく似合っているけども!
てか、いきなりキャラも激変し過ぎて、ツッコミが大渋滞してるんだよ!
(クロックって呼んでいいか?)
「うん!いいよ!名前すごく気に入った!」
(そうか、それは良かった。で、クロックは俺のことなんて呼んだ?)
「クライス」
(俺の名前、クライスっていうの?)
「違うの?食事をしている人間がそう呼んでたから。」
(そうか・・・。俺の名前の発表、そんなサラッとしちゃうんだ・・・。)
「知らなかったの?」
(あぁ。俺まだ赤ん坊だからさ、言葉がわからないんだよ。なぜか妖精達とは話せるみたいだけど。)
「そうだったんだ、ごめんね。僕達とは普通に会話してたから、てっきり人間とも会話出来るもんだと思ってたよ。」
(認識の違いってやつか。まぁ、いいや! いつ、どこで、誰から聞いても名前は変わらないし。とりあえず、契約しようか。)
「わかった。」
そういうと、クロックは俺の胸の中に消えた。
その瞬間、体中の細胞が覚醒し、神経が研ぎ澄まされた感覚が全身を駆け巡った。
それと同時に目や耳から、膨大な情報が流れ込んできて、俺は気を失ってしまった。
◆◆◆◆◆◆◆◆
目が覚めた。
意識がハッキリしてきたと同時に、また先程の細胞が活性化したよう感覚が戻り、意識が朦朧としてきた。
「あっ、目覚めた?」
(クロック・・、頭が破裂しそう・・・。)
目を開くと天井の板の細かなキズや、天井板の僅かな隙間の奥までハッキリ見えた。
目を閉じると物音は全然しなかったが、耳鳴りがすごい。
まるで神経細胞の限界を超えて、無理矢理感度を上げているような感じだ。
その影響か脳みそが破裂するかと思うぐらい頭が痛い。
「大変だ! 契約したから、感覚が共有してしまっているんだ! ちょっと待ってて! 今感覚共有をやめるから。」
そういうと、スッと頭の痛みは引いた。
代わりに全身がもの凄い疲労感に襲われた。
赤ちゃんの筋肉痛なんて聞いたことないが、まさにそんな状態だ。
しかも、眼精疲労もあったようで、目を閉じたら涙がジワーっと出てきた。
「クライス!ごめんなさい!泣くほど辛かったんだね!本当にごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ・・。」
(いや、大丈夫。泣いてる訳では無くて、目が疲れて目を閉じたら涙が出てきただけだから。)
本当は泣きたいくらい頭は痛かったし、目玉は飛び出るかと思ったし、耳は今もキーンと耳鳴りしているが、泣いて謝ってるクロックを見るとこれ以上痛がる訳にはいかなかった。
しばらく休んでいると、頭痛も倦怠感も無くなった。
「クライス、大丈夫?」
(あぁ、だいぶ落ち着いた。もう大丈夫だよ。)
「良かったぁ〜。本当に良がっだよ〜!」
(わかった、わかった!わかったから、もう泣くな。それより俺はどれぐらい気を失っ・・寝てた?)
「結構な時間寝てたけど、ちゃんと時は止めてるから大丈夫だよ!」
そんなドヤ顔されても困るんだが。
そうか、まだパピー達は食事中か。
もう現実の時間がどれくらい経過したかわからんが、いつパピー達がこの部屋に来るかわからん。
念の為、気をつけておこう。
(クロックの姿は俺以外にも見えるのか?)
「さっきも言ったけど、普通の人間には妖精は見えないよ。」
ということは、妖精と契約したなんてことがバレことはないということか。
「あっ、人間達が動き出したよ!こっちに向かって来てる!」
そんなことを言っていると、ドアが開いた・・・。
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