魔法
魔法。
それは永遠の謎。
誰もが夢見る最高の力。
な~んてカッコつけてみたが、何をどうしたらいいのかなんて全くわからん。
まぁ、存在は確定しているのだ。
ならば、使えることを信じて試行錯誤するのみ!
そんな俺の決意など知らずに、パピーとマミーは教会があった街から出て、半日ほど歩いて我が家に帰って来たのだった。
そして、今はパピーとマミーは晩ご飯を食べていて、俺は粗末なベビーベッドに入れられて、寝室で独りきり。
せめて目の届く範囲に置いとけよ!っと思わなくもないが、魔法の練習をするには丁度いいので、文句は言わない。
では・・・。
はい!ということで、魔法が使えるようにするにはどうしたらいいか、考えていきたいと思います!
何度か魔法を使っているところを見て、簡単に3つの工程で発動しているように感じたので、真似していきたいと思います!
まず①呪文を唱えてー、②精神集中してー、③魔法発動!って感じだった。
しかし、残念ながら俺は呪文どころか言葉がわからない。
そこで①の工程は喋れるようになってからということで、②の工程からやっていきたいと思います!
やっていこうと思うけど、今の俺は1人で立つことも座ることも出来ない。
だって、赤ちゃんだもの。
まぁ、出来ないものは仕方がないので、寝転びながら精神集中をする。
大丈夫、帰り道で結構寝たからこのまま寝るなんてベタなことはしません!
寝溜めもしてあるので準備は完璧!
まずはじめは、心を無にして身体の中にあるはずの魔力を感じ取る練習から。
・・・。
・・・。
うん、全然わからん。
魔力は身体の中には無いのかな?
自然の力をコントロールする系なのかな?
とりあえず、ちょっとやり方を変えてみるか。
司祭の爺さんがやっていた周囲にある力・・・、んー、それらしくマナと呼ぶことにしよう!
では改めて、マナを感じることにしよう!
魔法はイメージが大事!って、前世のラノベで得た知識でやってみる。
目を閉じる。
全身の力を抜いて、リラ〜ックス、リラ〜ックス。
「クスクスッ」「ウフフフ」
?
外で子供達が遊んでるのかな?
気を取り直して、リラ〜ックス、リラ〜ックス。
「アハハハッ」「フフフフ」
・・・だぁーー、気になって集中出来ん!
まったく!うるさいのはどこのどいつだ!
っと、ガラスも網戸もない開け放たれた窓の方を見ると、外は真っ暗だった。
そうだ!家に着いた時点で、もう辺りは暗かったことを思い出した。
前世と違い日が沈む前に仕事を終えて家に帰るような異世界で、更にこっちの世界でもド田舎の分類に入るであろうこの地に、日没後に外を出歩く子供なんているはずが無かった。
・・・まさか、幽霊?
顔から血の気が引く。
前世ではホラー映画やお化け屋敷などといった類は全然怖く無かったが、この世界では話が違う。
普通に魔法がある世界だ、ゴースト的なヤツとかゾンビ的なヤツがいてもおかしくはないはずだ。
パピーとマミーを呼ぶことも考えてたが、パピー達が来る前に別のナニカがやって来てもマズいので、ここは存在を消してやり過ごすことにする。
(ここには誰もいませんよー。私は赤ちゃんの人形ですよー。)
(いや、人形だと霊的なヤツが取り憑くかもしれない!)
(えーっと、んーっと、私はかけ布団。私はかけ布団。敷布団でも可)
「アハハハ」「ウフフフ」
何かさっきよりも声がハッキリ聞こえてきたんですけど・・・。
コレはアレだ。
物理的に直接攻撃するタイプのヤツじゃなくて、精神操作するタイプのイタズラ妖精さん的なヤツやな!
異世界来てすぐに身体を乗っ取られる訳にはいかん!
(コラー!あっち行けー!)
「クスクス、あっち行けー!だって。」
「フフフ、あっち行けー!だって。」
「ウフフ、あっち行けー!だって。」
「アハハ、あっち行けー!」
「おかしいね!」
「おかしいねー!」
「おかしいよねー!」
「おかしー!」
「ずっと一緒にいたのにね!」
「ずっと見てたのに!」
「ずっと聞いてたのにね!」
「ずっといたぞー!」
(!?)
口に出していない思いが伝わったことにも驚いたが、ずっと近くにいたの!?
恥ずー!
意識を集中して目を凝らすと、頭の上の方に4人(匹)の妖精がいた。
(・・・いつからいたの?)
「人間がいっぱいいたとこー!」
「人間いっぱいいたー!」
「人間いっぱいいたねー!」
「いっぱいいたぞー!」
パピーが教会へ運ばれてたあたりからって、俺の意識が覚醒して結構すぐだな。
・・・。
今はそんなことはどうでもいい!
(僕は魔法使えるかなぁ?)
「んー、わかんなーい!」
「わかんなーい!」
「わからないねー!」
「アハハハ、わかんなーい!」
イライラする。凄いイライラする!
ふーーーーーっ! 我慢!!
わからないってことは、使える可能性がある。
ポジティブシンキング!
(じゃあ、使えるようになるには、なにをしたらいいと思う?)
「ケイヤクしたらいいー!」
「ケイヤクしたらいいよー!」
「ケイヤクだねー!」
「ケイヤクー!」
ケイヤクって契約ってこと!?
(契約するにはどうしたらいいの?)
「うーんとねー、アタシを体のどこかに住ませてくれたらできるー!」
「ボクあたまー!」
「ワタシもあたまー!」
「オレがあたまー!」
「ズルいー!アタシもあたまー!」
「ボクがあたまだよー!」
「ワタシがあたまー!」
「オレだー!」
(いやいやいや、まだ契約するって言ってないし。そもそもなんでそんなに頭がいいの?)
「だってー、そとがみえるー!」
「いっぱいみえるねー!」
「とおくまでみえるよねー!」
「みえるー!」
なるほど、肩車的なことね。
なんか軽い感じて言ってるけど、契約というぐらいだから、制約や代償があったり、破棄することができないなんてこともあるから、色々聞かなくてはかなり危険だな。
(じゃあ、契約についていくつか教えてくれる?)
「いいよー!」
「わかったー!」
「おしえるー!」
「なにきくー?」
(ありがとう。それじゃあ・・・)




