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3人目

次は頑張ってもう少し早く更新したいと思います。

「何だこれは? 今まで感じたこともない力が湧いてくるぞ?」


目を見開き興奮した様子でグリアスは近寄ってきた。


それにしても不思議な感じだ。 精神体の状態でも契約は出来るんだな…。 しかも、肉体の方にも契約したことを証明する刻印が刻まれている。


「ああ、それは契約したからじゃないか? 見た感じ、もう少しで上級に進化しそうだな。」



クロック達と同様にグリアスの魔力量が上がっていたが、あの2人ほど一気に魔力量が増えたような感じがなかったこともあり、進化まではしていないと判断した。


しかし魔力は確実に上がっていて、放たれるオーラは強力なものになっていた。


「おおお〜っ! これが契約か! 今ならあの駄目犬をこの結界に閉じ込めることも出来そうだ!」


やっぱりシルバーウルフに逃げられたんだな…。


「…そうだな。 じゃあグリアス、少し魔力をもらうぞ?」


そんなことよりも今は自分の体を治すことが優先だ。


「わははは! 構わんぞ! 貴様が使う程度の魔法なんぞ、今の俺様にはなんの影響もないだろうからな!」


まぁ、そう言うことなら遠慮なく。 言質は取ったしな。


「助かるよ。 ふぅ〜。 じゃ、パーフェクトヒール。」


「うぉ〜〜っ、ちょっ、ちょっと待て待て! 貴様は何をしておる!」


「ん? 自分の体の怪我を治してるだけだが?」


振り向けば、少し透明になったグリアスの姿があった。


「そんなことわかっている! 俺様が言いたいのは貴様が使った魔法の話だ! 魔力をごっそり持っていきおって! せっかく契約して魔力が増えたのに、危うく消えて無くなるところだったではないか! そもそも貴様は何者だ!? 人間如き下等生物がパーフェクトヒールなんて魔法を使える訳がないだろう! その魔法はなぁ! 遙か昔、エルフの神“精霊王”だけが使えたとされる究極魔法、今はロストマジック(失われた魔法)と言われている代物だぞ! そんなもの、精霊王以外で使える者なんて今も昔も聞いたことないぞ! ハァハァハァ…。」


究極魔法とかロストマジックという少し気になる単語が耳に入ったが、それよりもカチンとくる発言があったので俺はそちらを先に処理することにした。


「はぁー。 またその質問か…。 お前には俺が何に見えるんだ?」


「質問を質問で返すな! 大体何に見えるって、人間にしか見えぬわ!」


「じゃあ、それでいいだろ? そもそもそういう差別的な発言やめてくれないか? 人間如きとか、下等生物だとか、人間のどこが下等生物なんだよ?」


「人間は下等ではないか! 魔力は弱々しく、身体能力も低い。 空が飛べる訳ではないし、水の中では呼吸も出来ない。 これが劣等種ではなくて何が劣等種だ!」


「人間はそれらを補う頭があるんだよ。 実際、この大陸で1番多い生命体は人間だろ? そしてお前は人間の俺と契約したんだろ?」


「貴様は別だ! だいたい貴様はパクを殺したし…、その…なんだ…パクの代わりとしてだなぁ…。」


「俺達は友達になったんじゃなかったのか?」


さすがに勢いで出た発言とはいえ、許せるものではなかった。


俺はやっと少し回復した魔力を、殺意と共にグリアスに向けて放ってしまった。


「ひぃ! わかった! 俺が悪かった! 謝る! だから落ち着け!」


子供と変わらない精神年齢のコイツのことだ、本心ではないが引くに引けないことになっていたのは理解していた。 しかし、だからといって許せる内容ではなかった。


「グリアス。 お前、今度またそんなこと言ったら本気で怒るからな…。」


「わ、わかった! もう言わない! 約束する! 俺様達は友達だ! これでいいだろ? な?」


「次は無いからな? あと、俺は貴様じゃない。 クライスラーって名前があって、クライスという愛称がある。 グリアスも友達ならクライスって呼んでくれ。」


「わかった。 わかったからそう怒るな。」


「それと…。」


「まだあるのか…?」


「妖精は知らないけど、人間には良い奴もいれば悪い奴もいる。 種族でひと括りにして見下したり、偏見を持って相手を見ないでくれ。 わかったか?」


「わかった。 わかったからもう勘弁してくれ…。 本当に友を持つというのは大変なのだな…。」


少しキツイ言い方にはなったが、これからずっと一緒にいるのだ。 


こういうことは最初にハッキリさせておかないと、後々トラブルの原因になって関係がこじれてしまうものだと俺は思っている。


それに俺と契約したということは、クロックとキララのような妖精や、ユニやジョアンのような人間もいる。


それなのに先程のような発言をされていては、俺自身が我慢出来る自信がなかった。


「そうかもな。 あと…、魔力を取り過ぎて悪かったな。 助かったよ。 まだ歩いたりするには程遠いが、とりあえず命の心配はなくなったよ。」


少し可哀想になるくらいグリアスが落ち込んでいたので、俺は無言という気まずい空気を打破する為にも明るく話しかけた。


「そうか…。 ということは、旅に出るにはまだまだ時間がかかるのか…。」


しかし、それはさらにグリアスをヘコます結果となり、もっと気まずい空気になった。


「いや、まぁ…ほら、魔力もさっきより回復するし…。」



ピシッ……。



テンパっている俺の頭上の空間に、突如ヒビが入った。


「ん?」


「クライス、マズいぞ!」


グリアスは廃人のように生気のなくなった表情が一変して、さっきまでの自分を見ているかのように慌てふためきだした。


「どうしたんだ?」


「結界が消滅してしまう! このままではクライスの肉体と精神体が分裂したまま元に戻れなくなってしまう!」


「ど、どうしたらいいんだ!?」


「とりあえず精神体を肉体に戻す! いくぞ!」



ピシピシ…、パキパキパキ、パリン!



なんとか結界が消滅する前に肉体に戻ることは出来たが、完全に治っていない手足の怪我が激痛となって一気に押し寄せてきた。


「クライスーーーッ!」


痛みに耐えていたところに、割れた空間からクロックとキララが飛び込んできた。


「クロック! キララ!」


俺は痛みを忘れて横になったまま両手をいっぱいに広げて、胸に飛び込んで来たクロックとキララを受け止めた。


よく見ると2人は完全に透けていて、今にも消えて無くなりそうになっていた。


そして、外の空間と繋がったことにより、目の前にはシルバーウルフと死闘を繰り広げた元の景色が広がっていた。


「お、お前達はいったい何者だ! どうやって俺の結界を破った!?」


「グライズ〜、生ぎでで良がっだよ〜!」


「もー、ホントに死んじゃったかと思ったんだから!」


クロックもキララも泣き叫び、力一杯しがみついてきた。 そんな様子をグリアスは少し引いたように見ていた。


しばらく見ていたグリアスが、ふと我に返りクロック達に怒鳴った。


「おい! お前達はどうやって俺の結界を破ったのかって聞いているんだ!」


「グライズー!」


「クライス、怪我してるじゃない! 早く魔力分けてあげるから、治しなさいよ。」


しかし、クロックはずっと俺の名前を叫びながらしがみついてるし、キララは全く聞こえてないかのように話を続け、少ない魔力を俺に分けてくれた。


分けてもらった魔力は微量でパーフェクトヒールを使えるだけの魔力には全然足りなかった。


だが俺は、自身の魔力が底を突いきそうな状態なのに俺に魔力を分けてくれたキララの気持ちが嬉しくて、もらった魔力と自分の魔力と合わせて、キララと契約している左手になんとかハイヒールをかけた。


「おい!」


「ありがとう。 助かるよ。」


「おい、と言ってるのが聞こえんのか!!」


「うるさーい! 聞こえてるよ! 今クライスの怪我を治すのに忙しいんだから、ちょっと黙っててよ!!」


ずっと無視されていたグリアスがとうとうキレたのだが、その怒りを遥かに上回るクロックの憤怒はグリアスを黙らせるには十分であった。


しかし、グリアスもへこたれることなく次のターゲットを見つけ、矛先をキララに向けた。


「ぬぐっ! …おい! 俺は闇属性の妖精だぞ! 伝説級の妖精様に何だその態度は!」


しかし、キララも冷静になっていたとはいえ、俺がかなり重症だったうえに現在進行系で自分が契約した左手が無残な状態になっているのだ。


怒ってない訳がない。


「はーっ…。 あんたこそ自分の立場を弁えなさいよ! 私は光属性で、あっちは時空魔法を使う無属性。 私もあんたと同じ伝説級の妖精で、あっちに至っては神話級の妖精。 っていうか、そもそもあんた中級でしょ。 中級の分際で私達上級に向かって偉そうにすんじゃないわよ! ついでにさっきの質問に答えてあげると、同じ時空魔法の上位種が展開した結界魔法でない限り、クロックは全ての結界を解除出来るのよ。」


(へー。 初めて知った…。 あと、中級・上級の上下関係はなんとなくわかるけど、伝説級とか神話級とか妖精の中でもランクみたいなものがあったんだな。  レアとか激レアみたいなものかな? それより、さっき言った見下すなって話はいったい何だったんだよ…。)


「なっ…。 だ、黙れ! 俺はその人間と契約している契約者だぞ!」


「あんた本当に頭悪いわねぇ。 この状況見たら私達も同じ契約者だってことぐらいわかるでしょ。」


「なにっ!? 複数の妖精と契約なんて聞いたことないぞ!?」


「そんなこと言ったってしょうがないじゃないか。 ぼくも聞いたことないけど、実際キミで3人目なんだから。」


「くそっ! ……!? な、なん、だ…。」


興奮していたグリアスが突然気を失うように脱力し、グリアスの影から闇が広がり、その影にグリアスは包み込まれて真っ黒な繭のようになった。


「なに!? コイツいきなりどうしたの!?」


「うわ〜、すごい! 真っ黒な玉になったよ! 進化するんだね!」


「他の妖精が進化するとこ初めて見たわ。 そういえば、私達も魔力が増えた感じがするわね。 コイツも私達と同じ上級になるのかしら?」


「2人のおかけで俺の怪我もほとんど治ったし、その影響だろうね。 あっ、そうだ。 ちゃんと紹介してなかったから改めて紹介するよ。 新たに契約したグリアスだ。 彼には右手を提供したからこれからも仲良く頼むよ。」


まだ魔力が足りず、パーフェクトヒールは使えないので左手の指が無いままだが、最初のパーフェクトヒールで胴体の怪我は完全に治っていたので、魔力回復量が増加していた。


契約した3人にも魔力が行き渡り、魔力が一定量を超えたグリアスは上級へと進化し、さっきまで透けていたクロックとキララは完全に元に戻っていた。 


「それはアイツ次第ね。」


「ダメだよ、キララ。 ちゃんと仲良くしないと。」


「わ、わかったわよ…。」


キララもさすがに先程のやり取りの後すぐに仲良くは出来ないようで難色を示したが、クロックが注意したことで渋々キララも了解した。



サラサラサラ…。



クロック達と話していると、突然グリアスを包み込んでいた真っ黒な繭が砂のように崩れて、中からグリアスが出て来た。


「よぉ! 俺は闇の上級妖精、グリアスだ! よろしくな!」


中からはヤンキーみたいな話し方をするヴィジュアル系のロックバンドみたいな格好をしたグリアス。


「うん! よろしく!」


そしてなんの抵抗もなく受け入れるクロック…。


「ちょっとクライス…、本当に同一人物なの? さっきまでと雰囲気が全然違うじゃない…。」


「ははは…。 そうだね。 だけど、さっきより付き合いやすそうじゃないか?」


戸惑うキララと、なんとかなだめる俺。


「ま、まぁそうだけど…。」


「ぼくは今の方がいいな!」


「どうした? 俺の話か? …おっ! お前、名前なんて言うんだ? 何属性?」


「ぼくはクロック。 無属性の時空魔法の妖精…。」


グリアスはクロックがいないかのように完全に無視してキララに近付いた。


「体の周りが光ってるから光属性か?」


「さっき言ったでしょ、光属性だって。 進化したら忘れちゃう訳!? 名前はキララよ! ひぃっ!」


すごい…。 グリアスは自然な流れでキララの肩に手を回し、俺達から離れるようにキララを連れて飛び去ろうとした。


「いい名前だな。」


「ちょっと気安く触らないで!」


「まぁまぁまぁ、グリアスも一旦落ち着こうか。 さて、みんな心配してるだろうから、そろそろ家に帰ろうか。」


「そうね。 クライス、早く行きましょうよ!」


「そうだな! 行こうか、キララ。」


「あんたには言ってないわよ! 私はクライスに言ったのよ!」


俺はグリアスと契約して新しい魔法を習得していることに気付いた。


「あっ、ちょっと待って。 森からの方が早く行けそうだから、あっちから行くよ。」


「何言ってるの? 家がある方は向こうでしょ?」


「行くぞ、キララ。 置いて行かれるぞ。」


「えっ? ちょっと待ってよー!」

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