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家族会議

「父さん、母さん、話があるんだけど…。」


ガタッ!


2人共そんなに身構えなくても…。


「クライス…、どうしたの?」


「ずっと…話すべきか、話さないべきか考えてたんだけど…。」


「あの爆発はお前がやったのか?」


「ちょっとジョアン!」


「いいよ、母さん。 もう父さんはわかってるみたいだし。」


「どういうこと?」


「あの爆発は僕がやったんだよ。」


「「!?」」


「僕の魔力量は他の人よりも多いみたいで、魔力を一気に開放したらどうなるかと思ってやってみたら、あんなことになっちゃって…。」


「だけど母さんは、あなたから魔力を感じないわよ!?」


「違うんだよ。 普通の人は体から湯気のように魔力が自然と漏れ出ているんだよ。 だけど僕は特訓して、体から魔力が漏れないようにしてるんだよ。」


「じゃあ、お前は普通の人間のように出すことも出来るのか?」


「出来るけど…。」


「けど、なんだ?」


「母さんが耐えられないと思う…。」


「どういうことだ?」


「精神力の強い人じゃないと、僕が魔力を開放しただけで気を失っちゃうみたいだから。」


「まるで試したことがあるような言い方だな。 それとも誰かに聞いたか?」


「うん…。」


どうしたものか、なにをどこまで話していいものやら。


「どうした? 言えないことでもあるのか?」


とりあえずクロック達妖精のことを話して、様子を伺うか。


異世界転生者であることは絶対理解出来ないし、頭がおかしくなったと思われるのも困るので、今は転生のことと時空魔法のことを話すのは止めておこう。


「父さん、母さん、僕はこれから“本当のことだけ”を話すから、信じてくれる?」


「もちろん信じるわ。 ね、ジョアン?」


「えっ? ああ、うん…。」


母さんは子供の夢を壊さないように対応している感じで、父さんはとりあえず合わせてるって感じだな。


まぁ、3歳児の言うことだから、信じられなくて当然なんだけどね。


「僕は特異体質みたいで、妖精と話が出来るんだ。」


「お、おぉ。 それはすごいな…。」


おそろしく感情の籠もってない返事…。 まさに空返事だな。


「その妖精に魔力操作のこととか、魔力量の増やし方とかを教えてもらったんだ。」


「…妖精に聞いたのはわかったから、実際にその魔力操作とか魔力量を見せてくれないか?」


おいおい、我が子が一生懸命説明してるんだから、親としてもう少し温かい目で見てやれんのか、まったく!


…ああ、なるほど。


父さんは、そもそも俺が本物のクライスなのかを疑っているような態度だったからな…。


「わかった。 僕が妖精と出会ったのは、父さんが大きな銀色の狼と戦った後、教会に運ばれて治療を受けた後に出会ったんだ。」


(この時出会ったのはクロックだけどね。)


「お前…、どうしてそれを…。」


よしよし、いい反応だ。 少しは話を聞く気になってきたかな?


「教会のお爺さんがヒールの魔法を使った時、父さんの全身が光ったと思ったら、部屋の中が優しい光に包まれて感動したけど、父さんの左腕は治らなかった。」


そう言って俺は父さんに近付く。


母さんはあの時のことを思い出したのか、既に泣いていた。


父さんは目を見開き、顔は引きつっていた。


まさか覚えてるとは、思いもしなかったんだろな。


俺が逆の立場でも同じ反応してただろうし。


「僕達の為に戦ってくれてありがとう。」


出来るかわからないけど、このまま父さんの腕が治せるか試してみるか…。


俺は父さんの腕を触り、自分の魔力を流し込む。


それと同時に魔力を目に集め、意識を集中させる。


既に動かなくなって久しい父さんの腕は、動く右腕とは違い痩せ細っていた。


俺の流し込んだ魔力は、父さんの左腕の神経細胞などの組織に沿って腕全体に行き渡った。


なぜか部分的に結界で魔力干渉を拒むかのように、俺の魔力が弾かれるような感覚があったが、魔力開放の時のように力ずくで魔力を通す。


そして俺は、成功率を上げる為にキララに力を借りることにした。


「キララ、力を貸して。」


「仕方ないわね!」


キララが力を開放した瞬間からあの時教会で見た光の、数も大きさも倍以上の玉が浮かび上がり、俺の手の平へと集まっていく。


3年くらい放置され途切れままになっている筋肉や神経組織などに、キララの力を借りた俺の最大出力のヒールを、限界まで圧縮して包み込む。


そこからは早かった。


通常ヒールでは治らない腱や神経組織などがどんどん伸びていき、繋がっていたであろう細胞同士がお互いを求めて引き寄せ合うように接合し修復していった。


当然、父さんや母さんには腕が治っていくところはわからないが、ヒールの光が消えたことで父さんが手や指を動かした。


父さんも母さんも何も言わず、動くようになった手を見て固まっていた。


「父さん、母さん、今まで育ててくれてありがとう。 本当に…感謝しかないです。」


この力を見せた以上、ここにはいられなくなる可能性があったので、感謝の気持ちだけは伝えておこうと思って出た言葉だった。


しかし、言葉の途中で勝手に涙が溢れてきて、それ以上話すことが出来なくなってしまった。


これには自分自身が一番驚いた。


もちろん感謝しているのは嘘ではないし、出て行きたくないというのが本音だ。


話せば出ていかなくてはならない訳ではないが、この世界の人間と比べても明らかに人知を超えた力を持っている俺を、神の化身のように特別扱いされるぐらいなら出て行こうと思っていた。


前世の記憶がある俺にとって、精神年齢では俺の半分ほどしかないこの男女をどうしても両親とは思えなかったので、出て行くことになってもこの両親と離れて生活する寂しさよりも、衣食住の保証が無くなる不安が勝り、なかなか話を切り出すことが出来なかったのだった。


そういう思いだからこそ、感謝の言葉も社交辞令のような軽い感じで伝えるつもりだった。


しかし今、俺は心の底から純粋に両親として、この2人から離れることを悲しんでいた。



「すまなかった…。」



なぜか父さんが謝っていた…。


誰に何を謝っているのか理解出来なかった。


俺は謝ることはあっても、謝られることをされた覚えがない。


すると父さんは突然俺を抱き締めた。


「お前はこんな俺を父として接してくれていたのに、俺はお前がシルバーウルフを呼び寄せた原因だと勝手に決め付け、怪我をしたのも心のどこかでお前のせいだと思い込んでいた。 そんな俺にお前は感謝してくれたうえに、怪我まで治してくれた。 ごめんな、本当にごめんなぁ…。」


いや、それは少しぶっちゃけ過ぎやろがい!


「もういいよ。 僕にとって父さんは、厳しいけど家族想いの優しい父親だってことは変わらないから。」


「ありがとう…。」


今日俺は、転生してから初めてこの二人のことを、本物の両親と思えたのだった。

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