吾輩は大魔王 伝説の勇者が、森の力をコントロールする女忍者と、牛乳偽物聖女と、入道雲みたいな農民娘とで乗り込んで来て、側近のドラゴンがエグい必殺技でやられた タスケテー
なろうラジオ大賞2第二十八弾。テーマは『大魔王』『伝説』『森の』『コントロール』『忍者』『牛乳』『偽物』『聖女』『入道雲』『農民』『ドラゴン』『必殺技』。七の次が八とは限らない。そう言う事だ。
最後だと思って載せられるだけ載せてみました。そしてタグはホラー。衣谷強の新境地をお楽しみください。
吾輩は大魔王である。側近はもう亡い。
どこで間違えたのかとんと見当がつかぬ。何でも薄暗い玉座の間で「よく来たな勇者よ」と高笑いしていた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて勇者一行というものを見た。
疲れた顔の伝説の勇者。
怪しげな植物を操る女忍者。
酷薄な笑みで牛の如き乳を揺らす聖女。
入道雲のような体格の農民娘。
「本当に貴様ら伝説の勇者か!? 何とも貧相!」
側近のドラゴンの言葉に、吾輩も概ね同意した。
「大魔王様のお手を煩わせるまでもない! 私が始末してくれる!」
あ、その台詞まずいんじゃ、と思った時には、ドラゴンは突撃していた。まぁ負けはないと思っていたら、忍者の操る植物に身体の自由を奪われ、聖女に魔力を吸い取られ、農民の気を込めた鍬の一撃で、ドラゴンは床の染みとなった。
「フフフ、後は大魔王ただ一人……」
「大魔王の魔力はぁ、どぉんな味かしらぁ」
「オラもっと強ぇ奴と戦いてぇぞ」
何こいつら! 滅茶苦茶強い! って言うか連携で繰り出す必殺技がエグい! 動きを止めて、攻防の要である魔力を奪って、一撃必殺を叩き込む、こんなの勝てる訳がない!
「……大魔王……」
勇者がゆっくりと近づいてくる! こ、殺される!
「……逃げてくれ」
「何?」
「小声で」
慌てて声を落とす。
「このままだと私は破滅する」
破滅するのは吾輩の方だぞ?
「お前を討伐したら、あの三人と結婚する事にさせられている」
「それは、えっと、おめでとう?」
「は?」
勇者の目が怖い!
「植物から怪しげな薬を作り、『これで一晩中……、フフフ』って笑う忍者と、牛乳で煽っておいて魔力を奪い、強制的に賢者にさせられた挙句『だらしないのねぇ』っていびる偽聖女と、『メシ!』『修行!』『強ぇ奴と戦いてぇ!』位しか日常会話の無い農民。そんなハーレム欲しいか?」
「吾輩女だけど、それが嫌なのは分かる」
「いくら勇者の血を絶やさない為でも……」
……泣いている。
「だがお前が逃げれば旅は終わらない。だから頼む」
「わ、分かった」
転移魔法を唱える。
「逃げる気か」
「お楽しみはじっくりと言うことねぇ」
「オラワクワクすっぞ!」
凄まじい殺気を身に浴びながら、私は転移で跳んだ。
あれから半年。逃避行は順調。追手の気配すらない。状況確認のテレパシーを重ねる内に勇者とも仲を深めた。吾輩が勇者の子を成すと言うのも……。
ひゅう。
風? 扉も窓も閉めてるのに……?
『 み ぃ つ け た 』
吾輩は大魔王である。余命はもう無い。
読了ありがとうございました。
アハハハハハッ! 間に合ったあ! できた! 毎日投稿できたあ! 褒めてよ下野さん! やったあ…… これで終わったあ! アッハッハッハ!
某有名ホラーゲーム風に達成の喜びを表現してみました。大丈夫です。喉掻きむしったりしてません。
下野さんがホラー好きらしいと聞いたので、ホラー風にしてみました。私の中のホラーは、『あー、やっぱり人間の怖さが一番だ』なので、こんな感じになりました。下手な幽霊よりも、実害のある生身の方が絶対怖い。
このイベントのお陰で、毎日様々なテーマと方向性で遊び倒して来ました。取り止めのない拙作にお付き合い頂き、ありがとうございました。
短編も意外と書けそうだと分かりましたので、また折を見て投稿させて頂きます。
今後ともよろしくお願いいたします。